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変化することは、「死そのもの」

幸せになる勇気 No13 「過去」など存在しない

「ええい、腹立たしい!~右から左に穴だらけの虚言を並べ立てて、それで煙に巻いたつもりか!!望むところだ、穴という穴を、ほじくり返してやる!!」と青年に言わしめたのは、哲人の、

「我々の世界には、ほんとうの意味での”過去”など存在しません」

という言葉でした。

目的論

嫌われる勇気で最も初期に登場した”目的論”。哲人は、その復習から入りました。問われた青年は、理路整然と説明します。

過去の出来事でなにかが決定されるわけではない…。人間は、過去の原因に突き動かされる存在ではない…。現在の目的に沿って生きる。”なりたくない”という目的のために、過去を原因として持ち出すのは人生の嘘である。自分の人生を決定するのは、「いま、ここ」を生きる自分なのだ。

あまりにも正確な解説に、哲人は、「ありがとう。間違いありません」と答えます。わたしまで嬉しくなります!!

アドラー思想について、哲人は、「人間は、いつでも自己を決定できる存在であるという、人間の尊厳と、人間が持つ可能性への強い信頼に基づいています」と付け加えます。だから、目的論なのですね。以前の記事です。もし宜しければご覧ください。

変化とはなにか?

いつでも自己を決定できる存在であるわれわれが、変えたいと思いながらも、なかなか自分を変えられない。それはなぜか?と問われ、

青年は、「ほんとうは変わりたくないから?」と答えます。

「そういうことです」と哲人。そして、「あえて過激な表現を用いるなら…」とわざわざ前置きをして、言います。

変化することとは、「死そのもの」なのです。

キョトンとする青年に、哲人は、「自分を変えるとは、”それまでの自分”に見切りをつけ”それまでの自分”を否定し”それまでの自分”が二度と顔を出さないよう、いわば墓石の下に葬り去ることを意味します」と言います。

「いくら現状に不満があるとはいえ、”死”を選ぶことができるのか。底の見えない闇に身を投げることができるのか。…これは、そう簡単な話ではありません」

簡単な話ではない、と思います。よく自己啓発のくだりで、「人生を変えたければ、住む場所仕事付き合う人を変えなさい」と言われます。まぁ、確かにそのすべてを変えれば、それは、ある意味”死”に値するかもしれません。

私は、この春、かなり思い切って、住む場所を変えました。大変な思いもしましたが、結果、広くなった自宅の部屋をセッティングして、オンラインのカウンセリングの仕事ができるようになりました。もちろん、仕事や付き合う人を含めたすべてを満たす事が絶対条件ではないでしょう。しかし、仕事や付き合う人はあまり変わっていませんから、変化に伴う”死”を真っ向から受け入れたとは言えないと思います。んん、難しい…。

過去は存在しない、純粋に

変化を受け入れることは一度死することと等しい、それは辛く、結局われわれは、変えたいはずのいまの自分を積極的に肯定しようとする。つまり、その理由付けとして、不幸だった過去をも肯定する。

哲人は、そう説明します。加えて、「理想には程遠い”いまの自分”を正当化するために、自身の過去を灰色にぬりつぶしておられる。”あの学校のせいで”とか”あんな教師がいたから”と考えようとしている。そして”もしも理想的な学校で、理想的な教師に出会っていたら~”と、可能性の中に行きようとしている

痛い所を突かれ、「し、失礼が過ぎますよ!」と動揺する青年に、哲人は更なる一撃を加えます。

「われわれの世界には、ほんとうの意味での”過去”など存在しません。十人十色の”いま”によって色を塗られた、それぞれの解釈があるだけです」「純粋に”存在していない”のです」

結果、冒頭の青年の言葉に繋がります。

過去は変えられない、でも、未来は変えられる。本当にそう思います。それは、未来に向けた目的をどうこしらえるか、にかかっています。

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