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[エッセイお仕事小説]銀座東洋物語。

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ホテルは幸せな仕事。二十代半ばで転職し続けたどり着いたホテルは働く人も泊まる人も幸せなホテルだった。著者が経験した仕事をエッセンスに、小説風にまとめました。昭和の仕事の仕方はこん…
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#ホスピタリティ

銀座東洋物語。5(地下の影の仕事人)

銀座東洋物語。5(地下の影の仕事人)

 入社してすぐ配属されたのはテレフォンオペレーターだった。縦長のビルの地下二階だっただろうか、日本料理の老舗と、ホテルのイタリアンレストラン、それからホテルの軽食喫茶の厨房がそれぞれならんだフロアで、オペレーター室は防火扉かと思うほど何気ないドアの奥にあった。電話交換というから、スイッチボードがずらりと並んでいて、そこに女性のオペレーターが何人も座っている絵を想像したが、それは簡単に裏切られた。

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銀座東洋物語。4(忘れられない面接)

銀座東洋物語。4(忘れられない面接)

 そんなこんながあって、私の就職活動の方向性は当初のものから180℃変換した。というより、帰国して二年近くがたち、そろそろ本気で正社員のポジションにつかなければと焦ったところに、例のごとく、Japan Timesの求人欄に銀座東洋の求人欄が舞い降りたのだった。
 あの頃の求人広告といえば、ラフなのはフォントも変えることなく、新聞記事と同様にすらりと書かれているものがほとんどで、数字の幅寄せもなくア

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