■万事休す 第2章 「パリの爆破テロ」
ベルギーとドイツの国境駅。雪の中、ぼくらが乗ったドイツ行きの列車がゆっくりと停まった。数人のドイツ人国境警備隊が乗り込んできた。「やばい!」と思った。大柄なドイツ人隊員がぼくの前に立ち、「パスポートを見せろ」と言った。
ぼくは、ゆっくりとコートの内ポケットからパスポートを取り出し、男に差し出した。心の動揺を隠すため、相手の目をじっと見つめ、首を少し傾げた。男のやや緑がかったダークブルー瞳はぼくに威圧感を与えた。男はぼくのパスポートを受け取ると、素早い動作で中を広げてパラパラ