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■鮎川誠とシーナのこと

シーナ&ロケッツの鮎川誠が亡くなったという。
昔、下北沢で、通りを歩いているのを見かけたことがある。たしか鮎川さん一人だったと思うが、圧倒的な存在感が印象に残っている。

下北で見かけたあとだったか、前だったかは忘れたが、ある別の場所で鮎川誠とシーナの2人と出会いそうになったことがある。
その場所とは、アメリカ南部(いわゆるディープ・サウス)、ミシシッピ州のクラークス・デールという街だ。

クラークス・デールはミシシッピ・デルタにあるさびれた田舎町だが、「ブルースの聖地」と呼ばれている。
この街のはずれに、ロバート・ジョンソンが、ギターのテクニックと引き換えに、悪魔に魂を売ったといわれる伝説の「クロスロード(十字路)」があるのだ。
そして、「ブルースの女王」と呼ばれるベッシー・スミスが、近くの国道61号線で自動車事故に遭い、運び込まれて亡くなった、当時は病院だった「リバーサイド・ホテル」がある。

あれは確か1992年、僕が20代後半のときだっだ。
ニューオーリンズに住んでいたK子と僕は、車でミシシッピ・デルタと周辺地域を回る旅に出た。
メンフィス、ナッシュビル、ジャクソンなどを巡り、クラークス・デールに行き、リバーサイド・ホテルに泊まった。
ホテルといっても、平屋の少し大きな家のような建物で、部屋数もたしか5,6室しかなかった気がする。

クラークス・デールの「リバーサイド・ホテル」
ベッシー・スミスが息を引き取った部屋

ホテルに着くと、フロントに座る、人のよさそうな黒人のおばちゃん(ホテルオーナー?)が出迎えてくれた。
僕らが「ニューオーリンズに住んでいる日本人だ」と言うと、そのおばちゃんはこう言った。

「そうか、あんたたちは日本人なのか。そういえば先日、やっぱり男女2人の日本人が泊まっていったよ。昨日出て行ったけど。ほら、その宿帳に名前が書いてあるよ」と言う。
おばちゃんが指さす宿帳を見ると、そこには数日前の日付で、

「Makoto Ayukawa, SHEENA」

と書いてあった。
思わずおばちゃんに、「この人たち日本の有名なミュージシャンだよ!」と伝えると、彼女は、「へえー、そうなの。とにかくとってもフレンドリーで、すっごくいい人たちだったよ」と笑った。

あのとき鮎川とシーナは、やっぱりクロスロードへ行ったんだろうか・・・? 

合掌

リバーサイド・ホテルのおばちゃん
(なぜか札束を握りしめているのがご愛敬)



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