第1ステップ「観察(Observe)」で具体的なモノを見る

OODAループの第1ステップは「観察(Observe)」です。様々な状況や相手(ステークホルダー等)をよく観察し、観察対象がステークホルダーであれば、どこに相手の重心や致命的脆弱性があるかを見抜くステップです。ここではとにかく「見る」ということが重要であり、現場・現物・現実・現象を観察します。プロジェクトで観察を行うポイントは次の2つです。

・組織内観察:プロジェクト状況、組織内の状況など
・外部環境観察:ステークホルダーの状況、競合の状況、ビジネスの状況など

では具体的に何を観察するのでしょうか? 
プロジェクトマネジメントをOODAループにて実行する場合、組織内観察ではQCDSについての状況と、プロジェクトに影響を与えるリスクの状況を観察します。他に、組織内でこのプロジェクトはどのように扱われているのか、売上や戦略などに携わる組織がどのような状況なのかを観察します。

外部環境観察で最も重要な観察対象は「ステークホルダーの状況」です。OODAが想定するのは、臨機応変さが求められる機動戦であり、機動戦では「人間」中心のマネジメントが重要だと先に述べました。

人間中心のマネジメントでは、相手がどう動くかによって対応を変える必要があります。そのため、ステークホルダーを十分に観察するのです。ただし、すべてのステークホルダーを観察しようとすると、時間がいくらあっても足りません。重要なステークホルダー、現時点以降の意思決定に関係するステークホルダーについて、特に詳しく観察しましょう。

詳しくといっても、機動戦では悠長に何時間もかけて観察を続けることはできません。そんなことをしていたら、たちまち相手のパイロットに撃ち落とされてしまいます。以降のステップの「方向づけ(Orient)、決定(Decide)、行動(Act)」のために観察を行っているのです。

したがって観察するポイントを絞ることが重要です。そのポイントはプロジェクトの特徴によっても異なりますし、OODAループでは「行動」の後にまた「観察」に戻ってきますので、行動の結果によっても観察するポイントが変わってきます。

元日本航空機長・小林宏之氏の著書『OODA 危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント』で、小林氏は、OODAの観察において重要なのは「虫の眼、鳥の眼、魚の眼、コウモリの眼、心の眼の5つの視点で見ること」だと述べています。

虫のように細かいことまで正確に読み取り、鳥のように全体を俯瞰し、魚のように水の流れを読み取り、コウモリのように逆さまに見る、という4つの視点に加え、心の眼=心眼で観察することが重要だというわけです。「なかでも心の目が最も重要であり、何が本質なのかを考えて、本質に絡む部分を重要視して観察すべき」とも述べられています。

この本の中で重要だと感じたのは、「スキルには、テクニカルスキル(専門技術)とノンテクニカルスキル(非専門技術)があり、危機時にはノンテクニカルスキルが重要」と述べられている点です。ノンテクニカルスキルとは、ヒューマンスキル(コミュニケーションなど)と、コンセプチュアルスキル(概念的に考え、具体的に行動するスキル)です。このノンテクニカルスキルは、OODAループ第2ステップ以降に、特に必要なスキルです。

「プロジェクトを成功に導く OODAループ入門」

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