真夏の手鞠唄

柱時計を埋めにゆく
子の手を放し母親の
手紙届く　燕の便箋
血で書いた　我が子の記憶

我が子捨てりし母親を　捜し続けた手鞠唄
真夏地獄に見た夢は　蟲が湧きたつ犬の骸
一つ列車の鐘鳴れば　母の位牌に噛りつき
寂し眼に映しだす　花のぬくもり地下劇場

一つ　虚言(うそ)に愛されて
二つ　闇は黙したまま
三つ　風は生温く
四つ　響く手鞠唄

夏の終わりに見た夢は　白髪混じりの黒い空
母の手鏡握りしめ　己の姿映し見る
二つ列車の鐘鳴れば　耳に残るは夏の声
地獄写した絵葉書は　我が子思いし針の山

一つ　虚言に愛されて
二つ　闇は黙したまま
三つ　風は生温く
四つ　響く手鞠唄

繰り返す涙を器に移して　
真夏の海蛍　月夜に消えた

夢見た愛の唄を　孤独な犬のように
無邪気に空に描いた　真夏の手鞠唄
指に絡み付く夏の終わり

夢を見た子供は記憶を壊して　
向日葵胸に抱き　涙を流す

夢見た愛の唄を　孤独な犬のように
無邪気に空に描いた　真夏の手鞠唄
指に絡み付く夏の終わり

2005年　真夏の手鞠唄/ストロベリーソングオーケストラ
作詩・作曲/宮悪 戦車
イラスト／金村 沙也香