マガジンのカバー画像

エッセイのようなもの

157
子どもたちのこと、思い出ばなし、自分のことなどなど。
運営しているクリエイター

2021年12月の記事一覧

ワクワクの50代

ワクワクの50代

 子どもの頃から老け顔である。

 小学6年のとき、生まれて初めていった美容室で大学生と間違えられた。必死に小学生だと訴えながら泣きそうだった。迎えに来た母のおかげでなんとか信じてもらえたけれど。

 結婚したあと夫を誰かに紹介するとたいてい、
「若いだんなさまだねー!」
 といわれた。実際はわたしより2歳年上の夫。訂正するのもめんどうで、てきとうにうなづいておく。

 娘が生まれてつきあう友人も

もっとみる
こころして

こころして

 毎朝、車のハンドルをにぎって誓う。
 今日もこころして、運転します!

 20歳の誕生日をむかえるころ。
 自動車運転免許をとるため、教習所に通い始めた。

 教習所の車を初めて運転したのは、とっぷりと日は暮れ、小雨まで降っている夜だった。

 教官とふたり、車に乗り込む。
 沈黙が重い。

 まず、ワイパーの動かし方がわからない。わたしは焦って頭が混乱してきた。なぜだか、幼いころに乗ったゴーカ

もっとみる
ハオコゼとわたし

ハオコゼとわたし

 2年間程、海水魚のハオコゼを飼っていたことがある。市の「海の教室」という講座で、息子がもらってきたのだった。

 ハオコゼの大きさは10センチほど、茶色ベースに白の斑点、腹はオレンジという綺麗ないでだちである。背びれに毒を持つために、危険で海水浴や釣りでは嫌われる魚らしい。

 海水魚を初めて飼育するわたし達、最初は何を食べるのかすらわからず、水替もおっかなびっくりだった。本で調べたり、インター

もっとみる
ゆったりと笑顔で

ゆったりと笑顔で

 新聞で吃音(きつおん※)に関する記事をみつけた。

 幼子の吃音を地域で連携して診断し、治りょうにつなげようという臨床ガイドラインが、日本国内で初めてつくられたというもの。

 わたしも吃音持ちの1人。幼いころ、言葉がつっかえてすんなり出てこないときがあった。

 けれど、それを指摘されたり、なおされたり、という記憶はない。周りの大人が、ゆったりと笑顔で話を聞いてくれたから、わたしはおしゃべりが

もっとみる
いちご王子

いちご王子

 ある春のこと。

 うちの畑でいちごがなった。1才半の息子の手を引き、いちごを紹介する。息子は目をまんまるにしていう。

「あーん。パクって。(たべていい?)」

「いいよ。いちごをとって洗ってこようね。」

 赤いいちごを3つぶほどとって、近くの洗い場で洗う。ふと、息子を見るといちごの前で座り込み、なにやらしている様子。

 慌てて戻ると、息子はせっせと手を動かしていちごをつみ、つんだそばから

もっとみる
しおりはお守り

しおりはお守り

 本に挟んである、フェルトでできている黒ねこのしおり。オレンジの糸で目、口、ひげが刺しゅうされていて、頭に赤いリボンを乗せている。

 ふれるともふりとやわらかく、見ているだけで癒しとなるわたしのお気に入りだ。

 娘が10才のとき、本を読むのが好きなわたしのために作ってくれた。それからは、本の世界へ旅するわたしの相棒。

 娘が9歳になるころまで、わたしは娘を叱ってばかりいた。ちっともわたしのい

もっとみる
クリスマスの朝

クリスマスの朝

 子どものころ、クリスマスが好きではなかった。

 わたしはサンタさんにプレゼントをもらったことがない。クリスマスプレゼントを親からもらったこともない。

 絵本やテレビでは、「子どもはプレゼントをもらえる」ようなのに。よい子じゃないから、もらえないのかな?

 母にきいたら、

「うちには煙突がないから、サンタさん入れないものねぇ。」

 それならばと物心ついたころ、サンタさんにきてもらえるよう

もっとみる
雪と遊ぶ

雪と遊ぶ

 雪がどっさり降ったのある日。
 うかれて外に飛び出すわたし、娘、息子。

 雪は30センチ以上積もっている。こんなことは珍しい。それに日曜日。天気もよくて雪遊び日和。

 三人三様で雪とたわむれる。わたしが歩くたび、長靴がキュッとキュッと音を立てる。振り返り、自分の足跡をみると、くっきり靴裏の跡が。ハンコみたいだ。

 子どもらは、ふかふかな雪に仰向けで寝そべっている。ふたりの人型が完成。

 

もっとみる