118○ 2/26 書き下ろし「ポーション」
「ポーション」
外から見えるこの窓はさぞ美しく見えるだろう。硝子も枠も新雪の下からひょっこりと覗いた小動物のように、季節に馴染んでいる。
雪が本格的に降って、幼心に感じた幻想的なファンタジーの世界へ誘ってくれる期待感。想像ではもう住人になったつもりなのに、夢から醒めたらそこは物が限りなく少ない私の部屋。外からの光の乱反射の演出で灯り知らずの特殊構造。珍しいことさえもまた当たり前になっていく中で、永遠にここに居て儚く散っていくだけの時空にいるのかと頭がおかしくなる。窓の外に出れない私の体は、通りすぎる誰かや羽根休みをする鳥、踞る猫、遠くで飛んでいるであろう飛行機やさらに彼方の気球に乗る数名に、私の分け前をあげたい。気持ちで胸がいっぱいになって垂れ流してしまう前に。
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黄赤青(きせきせい)
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