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製菓学校で学んだこと 〜複雑なものもシンプルの積み重ね〜

お菓子の周りにあるもの = 「笑顔」

手作り菓子の好き嫌いは人によってあると思いますが、私はお菓子を作ること自体が割と好きだったこと、それを友達や家族にあげると喜んでもらえることが嬉しくて、ラッピングもこだわったりしながら昔からいそいそと台所で作っておりました。

ケーキを前にして、難しい顔になる人っているでしょうか。
見た目にもきれいで甘〜い味を連想させてくれるケーキを見て、
「なんだこれは!」
と眉間にシワを寄せる人はあまりいないと思います。

「お菓子は心の栄養」

そんなふうに言われたりもしますが、甘いお菓子の周りには大抵幸せな空気感と、それに包まれた人が和やかに集っているものです。

もちろん何でも食べ過ぎはよくありませんが、ケーキのない誕生日やクリスマスは味気なく感じてしまうように、私は「心を満たしてくれる食べられる芸術品」だと思っています。

一口に「お菓子」と言っても素朴な焼き菓子から和菓子、チョコレートやゼリーなど様々ですが、断面まで精巧で美しいフランス菓子は食べるのが勿体無いと思ってしまうほど。

ショーケースに入った美しいケーキを見て、どれにしようか迷う時間は楽しいものですよね。

自宅で作るお菓子はクッキーやスコーンなどシンプルな焼き菓子が多く、そういったものはレシピ本を見ながらアレンジが可能ですが、何層も重なった見た目にも複雑なお菓子作りは実際に学んでみたいと思い、ル・コルドンブルーというフランス発祥の製菓学校にしばらく通いました。

授業の流れ

私は週に2回のペースで通っていました。

朝学校に到着して着替えを済ませ、10時からは着席して講師のデモンストレーションを見ながらノートを取ります。

講師はフランス人だったので、横にいる通訳者の説明を聞きながら作業の流れやコツを書き留めていきました。

お菓子作りと直接関係ないですが、

・キッチンペーパーやラップは無駄使いしない
・作業台は常に美しく

そう言う講師の動きは本当にきれいで無駄がなく、作業工程を見ているだけでも勉強になる部分がたくさんありました。

昼休憩を挟んで、午後はデモンストレーションの内容を実際に作っていきます。

簡単そうに見えていたのに苦戦するのは毎度のこと。

軽く焼いた生地の上に別の生地を乗せてまた焼き、その上にムースやクリームを乗せて表面をコーティングし、乗せたフルーツに刷毛でシロップを塗る、など何層もの手間を重ねて目にも楽しい美しいケーキが出来上がります。

2〜3回の授業を通してようやく一つのケーキが出来上がることもあります。

出来上がった時の感動

その時その時は目の前の作業に手一杯で、永遠に出来上がらなさそうに思えるのですが。

一つ、また一つと重ねていくと、出来上がるんです。
(当たり前のことですが。笑)

「すごい、、!」

生地を混ぜたり型に流し入れたり、おぼつかない不安そうな手つきで一つずつ確認しながら経た工程の先に、ショーケースで見たようなフランス菓子が出来上がっていたことに心底感動しました。

作ったお菓子やケーキは持ち帰れるので、家に友達が集まった際に振る舞うのですが、
「手作りって嘘でしょ?!」
と言われる仕上がり。

千里の道も一歩から

繊細で色鮮やかで様々な食感がひとつにまとまっているケーキは確かに作るのに時間がかかるしある程度の知識や技術も必要です。

でも、工程を細かく分解して小さなタスクを一つずつこなしていけば、誰でもちゃんと作れる。

当たり前と言えば当たり前の話なんですが、そのことを体感を持って学ぶことが出来ました。

「すごーい!」
「私には無理!」

と人が言う大抵のことは、最後だけ見たら確かにハードルが高そうでも、志を持って一つずつ順を追えば、ほとんどのことは誰でも出来るのだと思います。

微分積分が得意な人も、最初は1桁の足し算から学んでいったはずです。
世界的に有名なダンサーだって、最初はひとつのステップを覚えるところから始まったはず。

「全ては小さな積み重ね」
「ベイビーステップ」
「塵も積もれば山となる」

言葉って、実感が伴っていないとただの言葉で通り過ぎてしまうもの。
私の場合は製菓を通じてその実感を得ることが出来ました

仕事でも、ゴールまでにやることがたくさんで頭の中がぐちゃぐちゃな時は、ケーキの層を分解するように現在からゴールまでに必要な工程を分解し、さらに分解したそれぞれの層の材料を確認するように細分化していきます。

同じゴール設定でも、工程数が50の場合も100の場合もあるでしょうが、単純に工程数が多くなればなるほど、一つ一つのハードルは下がるイメージです。

例えば100mの階段の1段の高さが「50cm」だったら。
20段も登れば息が上がって
「もう無理〜!!」となるのではないでしょうか。
その時点でまだ10分の1だとしたら、罰ゲームがあっても私は迷わず引き返してしまうタイプです^^;

では1段が仮に「20cm」だったら?
(20cmは一般的な住宅の階段の高さです。)
途中疲れることはあっても、休みながら何とか歩みを進められるんじゃないでしょうか。

一つの作業工程がキツいなと感じたら、きっとそれは50cm以上の設定になっているはず。

5cmや10cmなら飛ばしてしまいたくなると思うので、小さければ小さいほどいいというわけでもないでしょうが。


「自分には無理」
と思う前に、
「どんな工程がつまっているのかな?」
と分解してみると、
「案外出来そうかも、、」
なんて思考が生まれます。


全てはシンプルの積み重ね。

シンプルを積み重ねていつか振り返ってみると、他人の目には複雑にうつるものを築き上げているのかもしれませんね。

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