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【読書感想】体験の哲学 地上最強の人生に役立つ哲学活用法

「体験の哲学 地上最強の人生に役立つ哲学活用法」を読んで、印象に残ったフレーズから引用して、所感を記載していきます。

実践しないで知識だけを得るような学習は、哲学であれ何であれ、役に立たない
人生は選択の連続です。ただし、どんなに聡明な人であっても全ての選択で正しい方を選ぶことはできない。人は間違ってしまう動物だから。歴史や哲学を学ぶのは、選択を迫られたときに判断材料の引き出しを増やすため。そして聡明な人ほど間違った選択を行った時の対処が早く、そして上手い。
そもそも何が正しくて、何が正しくないのか、それすらも分からない。結局、過去は変えられないので間違った選択をしていたとしても、その過去を正当化できるように、今もしくは未来の自分が正しい選択だったと解釈できるように努力する他ない。

「なっちゃいない。漫然と口に運ぶな。何を前にし、何を食べているのかを意識しろ。それが命食うものに課せられた責任。義務と知れ」
漫画「刃牙」シリーズから引用したセリフで、「体験の哲学」の骨子となる考え方です。
人生とは、日常的な体験の集まりであると言えます。すなわち「人生=体験の集合」ということ。このように人生と体験が互いに密接するのであれば、「体験の質を向上させれば、人生の質も向上する」逆に言えば「体験を意識せずに漠然と暮らしていたら、人生も漠然と過ぎ去っていく」とも言える。
真に解決したい問題は、人生(体験)を漠然と過ごしてしまうこと。その解決策として、本書では体験のチェックリストを提示している。

体験を意識して味わって生きよ
意識から注目の対象が減っていった時、言い換えれば体験が減っていった時、人生が漠然と過ぎ去ってしまうのだから、逆に注目の対象となる体験を増やしていけば良い。
ただし、刺激的でプレミアムな体験を増やそうということではない。海外旅行やスカイダイビングといったプレミアムな体験も繰り返せばすぐに色を失い、またいつもの平凡な日常の感覚に戻ってしまう。そうなると、さらに刺激的な体験を求めることになるので、それを繰り返すとキリがなくなってしまう。
だから先ず必要なのは体験そのものの重要性を自覚し、今この瞬間の体験を意識できるようになること。すなわち「日常生活をしっかりと味わう生き方を身につける」ということ。それが出来ないうちはどんなに刺激的な体験を得ようと、また漠然と過ごす日常に戻ってしまう。

私たちは自分の日常(世界)を、自分の知っている世界だけで構成する傾向を持っている
本書に記載されている体験のチェックリストを見れば「世の中には未経験のものがまだまだたくさんあるのだと気づくこと」が出来ます。自分の知っている世界だけでなく、広く視点を広げて知らない世界があるということに気付けるだけでも、漠然と日常を過ごしてしまう問題の解決に、一歩近づけます。
既に知っている項目であったとしても、それをいつ、どんな体験であったかをきちんと言語化出来なければ、それは「知っている」という風に言えるのでしょうか。また、人間は実際には経験していないのに、それを知っていると思い込みがちな側面も持っています。例えば、ネットだけで見た知識を自分で仮説検証をせずに信じてしまったりなどです。
ですので、体験のチェックリストを見るときは、「自分は知っている」という先入観を捨てて、きちんと体験したことを言語化できるものだけを体験済みとしてみるのが良いでしょう。

人間とは理性と感性を持った存在です
そもそも、人間とは理性と感性を持った存在なので、両方を知らなければ人間とは何かという問いに答えられない。このうち理性について、哲学者たちは真理(人間は何を正しいと思うのか)を追求することで明らかにしようとしてきました。感性の仕組みについては、人間は何を美しいと思うのかを追求することで明らかにしようとしてきた。
自分が、どんなアクセサリーやファッションを好ましいと思うのか、どんなことに喜び、または怒りを感じてしまうのかなど、自分自身のことを理解するためには体験をすることでしか学べない。

厳かに味わうために歴史を知る
本書の意図は単に「色んな体験をしよう」ではなく「何気ない日常であろうと、その体験を意識して深く味わおう」というもの。意識して味わうための効果的な方法として体験する前に、その体験の基礎知識や歴史を知るというやり方をお勧めします。身近にありふれた物でさえ、むしろありふれた物であるからこそ、長い歴史を乗り越え、たいてい何らかの奇跡的な物語を持って、そこに存在している。必ずしも先入観を持って体験することが好ましいわけではないですが、歴史の重みを知って体験する方がより厳かになるというものです。

行為それ自体が目的となるような行為こそが幸福だ
例えば、水を飲むときは水分を補給するという実利的な目的のために飲むのではなく、飲んだ時の冷たさそのものを目的として見る。窓を開けるときは、見える景色そのものを目的とし、歩くときは足の裏の感覚そのものを目的としてみる。
つまり、今まさに起こっている体験それ自体を目的とするのです。それ自体が目的なのだから、過去の記憶や誰かの体験と比較する必要もなく、それゆえ言語化する必要もない。体験そのものを目的として無心で味わうとき純粋な経験が訪れ、幸福という状態になるでしょう。

感想・所感
僕は元々、百聞は一見にしかず、百見は一体験にしかずの精神で生きてきました。新しいゲームを始める時も、説明書を読まずにまずやってみる。そしてどこかのタイミングで詰んだら立ち戻るというような感じです。そんな考え方を元から持っていたので、本書の体験の哲学には大変共感しました。本書を読んで、僕の価値観に大きなアップデートがあったのは、この3つです。
①体験重視とはいえ、プレミアムで刺激的な体験でなくてもいい。むしろ日常を深く体験するマインドが備わっていないとプレミアムな体験も味わいが薄くなってしまう。
②厳かに味わうために歴史を知る。自分の興味のある分野は進んで歴史を学んでいましたが、今後は興味の範疇にないものもターゲットにしていこうと思います。
③行為それ自体を目的とする。僕は合理的に物事を捉えすぎるので、実利ないことをするのがとても嫌です。いきなりは難しいと思いますが、行為そのものを目的とする体験を少しずつ意識してやっていこうと思います。

本書には体験を意識して行っていくために、もしくは体験したものを記録するために「体験のチェックリスト」が書かれています。当たり前に知っているものからニッチすぎるだろって分野まで幅広く書かれているので、このリストを見て知見を得る為だけでも、本書を買う価値はあると思いました。この記事をご覧いただいた方はぜひご一読してみてください。


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