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先輩の黒歴史を糧にした、若き日の私

自分の失敗談を話せる人って、素敵だなって思う。
過去の武勇伝や、おしつけがましい苦労話ではなく、苦しかった時のこと、やらかしてしまったことを、ありのままに話してくれた先輩に勇気をもらった話。

私は新卒で入社した会社を、1年と半年で辞めた。転職先は、外資系の小さい会社。1社目を短期間で辞めてしまった気まずさに、働くことへの自信のなさを、しばらく抱えていた。

転職先で出会った先輩。同じチームではないけれど、給湯室で会うたびに話しかけてくれるその人が気になって、ある日ランチを申し出たことがある。

予定を合わせて、2人で会社近くのフレンチカフェに入った。自分から誘ったわりに、先輩を前にして何を話そうかと、少しどぎまぎした。

先輩は、それまでの私の自信の無さを感じていたのかもしれない。たわいもない会話のあとに、静かに、秘密話でもするかのように、

「私には黒歴史があるの」

と言って、ニヤッと笑った。
そして先輩がこの会社に入社したときのことを、話し出してくれた。

黒歴史・・・消し去りたい、なかったことにしたい過去・・・私は興味深々に相槌を打っていた。



当時、チームリーダーが怖かったこと、仕事が終わらず、よく終電まで会社にいたこと、大事な日に寝坊して、怖いリーダーからの電話で起きて、パニックになったこと。怒られるのが怖くて電話に出ずにいたら、どこかで倒れたんじゃないかと、会社中が騒ぎになったこと・・・

初めて聞いた、若き日の先輩の苦い思い出と、失敗の数々。天真爛漫な先輩の、若手社員だったころの話。

あまりに明るく話してくれるので、ちょっと可笑しくなって、2人で笑い合った。

若手社員のうちにやるべきことは、仕事を覚えるだけじゃなく、その後の、ずっと続く社会人生活を自分で漕いでいくために、後ろ向きな思い込みを捨てて、健全な自信をつけることだと思う。

自分の失敗を話してくれた先輩は、見事に、私の心配を吹き飛ばしてくれた。あんなに豪快に失敗してた人。でも今は、後輩を気遣ってくれる、素敵な先輩。苦しかった日々を、黒歴史だと言って、笑って話してくれている。

先輩にも、そんな時代があったんだなあ。そう思うと、少し勇気が湧いた。

私も、きっと大丈夫だ。


その会社は、初めて、楽しい社会人生活を経験するところになった。

その2年後に転職していった先輩を、今もときどき思い出しては、彼女の失敗談にまたクスっと笑って勇気をもらう。

先輩の失敗は、無駄じゃなかったよ。少なくとも、私の糧になった。






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