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「ギタリスト志望のAがギターを直に床に置く」というシーンを通じて、Aがギターを大切に扱っていないこと、つまりギタリストの基本すらできていないこと、ゆえにギタリストとして成長するには技術以前にまずは心を入れ替える必要があることを暗示する ~アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の場合

愛音「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」「あの楽奈って子がバンドに入ったら……私、空気じゃん!」「どうしよう!?」

アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」(第5話)




◆概要

【「ギタリスト志望のAがギターを直に床に置く」というシーンを通じて、Aがギターを大切に扱っていないこと、つまりギタリストの基本すらできていないこと、ゆえにギタリストとして成長するには技術以前にまずは心を入れ替える必要があることを暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」(第1-5話)

▶1

本作の主要キャラの1人・愛音(「あのん」と読む。高1女子)。


彼女は、

・Step1:ミーハーで目立ちたがり屋の少女だ。

・Step2:ゆえに、ガールズバンドが流行っていると聞くや否やすぐに決意した「よーし!私もバンドを組んじゃうぞ❤」。――楽器なんてほとんどまったく弾けないくせに!


その後いろいろあって、

・Step3:幸運にもバンド経験者3人とバンドを組むことになった愛音。彼女はギター担当だ。


ある日、

・Step4:愛音たちがスタジオで練習していると、ふいに1人の少女がやってきた。少女の名は楽奈(「らーな」と読む)。

・Step5:彼女は、祖母から譲り受けたという年季の入ったギターをおもむろに取り出した。そして、愛音たちが使っていた楽譜を一瞥しただけで――見事に弾きこなしてみせた。すっ、すごい!天才だ!!

・Step6:演奏後、楽奈は愛音たちのことを気に入ったらしい。「私もバンドに入りたい」と申し出た


楽奈の言葉に、

・Step7:愛音はショックを受ける。彼女は心の中で悲鳴を上げた「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」「あの楽奈って子がバンドに入ったら……私、空気じゃん!」「どうしよう!?」。――愛音が動揺するのも無理ないだろう。何しろ相手は天才ギタリスト。いまだコードをいくつか押さえることしかできない愛音とは格が違う。愛音の存在感は薄れ……というか、バンド内に愛音の居場所はなくなってしまうかもしれない

・Step8:というわけで、愛音は慌てて帰宅すると猛練習を開始した。

・Step9:ところが間もなく「っていまから練習してもすぐ上手くなるわけじゃないし」なんて呟くと、愛音はギターを床に置き、美容系YouTuberの動画を見始めた。――もう諦めてしまったらしい。


▶2

ご注目いただきたいのは、楽奈と愛音のギターの扱い方の相違である。

・楽奈の場合:祖母から譲り受けたという年季の入ったギターを愛用している。当然ながら、メンテナンスなどにはきっちり時間をかけているに違いない。 →Good!

・愛音の場合:Step9、彼女はギターを床に置いた。ケースに戻したりスタンドに立てたりするのではなく、かといって毛布などにくるむこともなく直置きである(補足:ネックが折れたり曲がったり、塗装が剥げたりするおそれがあるため、ギターを直に床に置くのはタブーである)。 →Bad!


2人のギターの腕前には雲泥の差があるが――最早これはそれ以前の問題である。

だって、ギタリストにとってギターといえばすなわちパートナーであり、パートナーを大切にするのは基本のキといえる。それができないのだから、愛音はギタリスト失格だ。


要するに、愛音はいまもってミーハー気分でバンドに所属しているのであり、ギターに真剣に向き合っているとは言えない。

そして、こんな状態では到底上達は見込めまい。

「この先彼女がギタリストとして成長するとすれば、それは何か決定的な出来事を経て心を入れ替えた時に違いない」と感じた鑑賞者は少なくないだろう(なお、その「決定的な出来事」は第6話で訪れる)。


つまり、【「ギタリスト志望のAがギターを直に床に置く」というシーンを通じて、Aがギターを大切に扱っていないこと、つまりギタリストの基本すらできていないこと、ゆえにギタリストとして成長するには技術以前にまずは心を入れ替える必要があることを暗示する】というテクニックが使われているわけだ。


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