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「主人公らが償いのために働く物語」の魅力!!|【三占:仲間と友達、時々ライバル(1)】「うらら迷路帖」を三幕構成で分析する

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!


分析対象


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三幕構成


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ポイント①


本話のストーリーをざっくり整理すると……

・第1幕:千矢ら4人はお使いを頼まれ、占い道具屋へ → 商品を壊してしまう

・第2幕前半:店主が厳しい口調で「どうしてくれるんだい!」「店の手伝いをして弁償してもらうしかないね!」 → 4人は大人しく従うことにする

・第2幕後半(1):4人が働き始める → ドタバタ劇(道具への愛が強すぎる紺の暴走 etc.)

・第2幕後半(2)しばらくして店主が言う「1年は働いてもらわないとね」 → 紺、小梅、ノノはショックを受ける。しかし千矢だけは冷静に「どうか許してください」と謝罪・交渉

・第3幕:店主がサイコロ勝負を提案 → 紺、小梅、ノノは腰が引ける。この曲者店主に勝てるとは思えぬ!ところが千矢だけは「絶対に勝ってみせる!」 → サイコロ勝負。千矢の勝ち。かくして無事帰宅 → 4人は知らぬことだが……じつは店主がわざと負けたことが明かされる「なかなか見どころのある娘たちだね」


ポイント②


<1>

本話は、【主人公らが何かのミスを犯し、その償いのために働くことになる】というタイプの物語です。

・Step 1:千矢ら4人が商品を壊してしまう

・Step 2:店の手伝いをして弁償することになる

・Step 3:アレコレ起こる


<2>

ありますよね、こういう物語!マンガやアニメに慣れ親しんでいる方なら、「あー、確かに見かけるなぁ」とご納得いただけると思います。


例えば「侵略!イカ娘」のように、物語全体のバックボーンして使われるケースもあります。

※補足:「侵略!イカ娘」では【主人公が海の家を破壊 → 働いて弁償することになる】のが物語の始まり。


一方、本作のようにエピソードの1つとして描かれることもある。

本記事で注目するのはこちらです。


<3>

クリエイター視点で考えると、【主人公らが何かのミスを犯し、その償いのために働くことになるエピソード】って、とても魅力的だと思うんですよね。

何しろ、主人公らの普段とは異なる一面を容易に描けるわけですから。


・例1:学校では落第生キャラ → じつは接客が大得意で客から好かれる

・例2:学校では優等生キャラ → 仕事ではポンコツで激しく落ち込む

……なんて具合です。


<4>

本話にも、千矢らの「普段とは異なる一面」が描かれています


▶ 千矢の場合

千矢は浮世離れしたキャラです。ズバリ常識がない。普段は仲間に助けてもらうことが多い。

ところが本話では一転、千矢は大活躍します。

・【1】ミッドポイント:力仕事を淡々とこなし、店に貢献

・【2】セカンドターニング・ポイント:1人だけ冷静。店主に謝罪・交渉する

・【3】第3幕:1人だけ希望を見失わず、「絶対に勝つ!」と勝負に挑む


▶ 紺の場合

紺はしっかり者の優等生キャラです。普段は千矢らをリードするポジションにいる。

ところが本話では……

・【1】第1幕:大好きな占い道具を前にはしゃぐ

・【2】ミッドポイント:道具への愛が強すぎて、客から呆れられる

・【3】第2幕後半:店主が「1年は働いてもらわないとね!」と言うのを聞いてショックを受ける(千矢とは対照的)

・【4】第3幕:店主とのサイコロ勝負に及び腰(千矢とは対照的)


嗚呼、このポンコツっぷり!

---


かくして私たち鑑賞者は、カッコよく頼もしい千矢に歓声を上げ、そしてポンコツな紺に萌えるという次第です。


ポイント③


<1>

ところで一般論として……ギャグ作品やコメディ作品には「極端にヘイトを集めやすいキャラ」を登場させるべきではありません

だって、鑑賞者・読者は「笑い」や「リラックス」を求めて作品を手に取るわけですからね。ムカつくキャラなぞ見たくない!


<2>

ところが、ですよ。

【主人公らが何かのミスを犯し、その償いのために働くことになるエピソード】に登場する「主人公らを働かせるキャラ」って、ヘイトを集めやすいんですよね。

主人公らに非があるとはいえ、「さぁ、体で償ってもらうよ!働きな!」って、そりゃどうなのよ。近代国家では奴隷的な待遇を伴う強制労働は禁じられてるんだぜ!この人非人!……というわけです。


<3>

その点、本話はじつによくできています。


ご注目いただきたいのは、「エンディング」です。

・Step 1:店主がサイコロ勝負でわざと負けてやったのだと明かされる

・Step 2:店主が嬉しそうに呟く「なかなか見どころのある娘たちだね」


おお!店主は善人だった!

かくして私たちは心穏やかに鑑賞を終え、「次のエピソードも見逃せないぞ!」という気持ちになるのです。


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(担当:三葉)

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