「汗がしたたり落ちる→汗が跳ねて王冠の形（ミルククラウン）になる→だが王冠はすぐに消えてしまう」という描写によって、「努力が実って勝利を得るかと思いきや、あっという間に逆転負けしてしまう」という展開を暗示する　～アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」の場合

ナリタトップロード「いける！このまま私が！！」

アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」（第1話）

◆概要

【「汗がしたたり落ちる→汗が跳ねて王冠の形（ミルククラウン）になる→だが王冠はすぐに消えてしまう」という描写によって、「努力が実って勝利を得るかと思いきや、あっという間に逆転負けしてしまう」という展開を暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。

◆事例研究

◇事例：アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」（第1話）

▶1

本作の主人公は、ナリタトップロード。

ウマ娘育成校「トレセン学園」に在籍する若きウマ娘だ。誰からも愛される人気者で、そして努力家である。

第1話終盤、

・Step1：ナリタトップロードは重要なレース「皐月賞」に出走した。

・Step2：強力なライバルたちを相手に苦戦しつつも、彼女は奮闘。皆の応援を糧に加速していった。

・Step3：そして、さぁいよいよゴールが近づいてきた。ナリタトップロードはいい位置にいる。勝利は目前だ！あとひと踏ん張り！応援席の皆が叫ぶ「いけー！」。ナリタトップロードも心の中で叫ぶ「いける！このまま私が！！」。

と、次の瞬間だった。

・Step4：突如として静寂が訪れた。BGMも大歓声も消える。さらに、映像がスローモーションに切り替わる。

・Step5：ナリタトップロードの顔からひと粒の汗がしたたり落ちた。汗は地面にぶつかり、ピチャンと音を立てる。間もなく汗が跳ね返り、王冠の形になる。いわゆる「ミルククラウン」だ。

・Step6：だが、ミルククラウンはすぐに消え、汗は地面に吸収されていった。次いで、画面がオレンジ色に染まった……！

※この静かなスローモーションシーンは6秒ほどで終わり、この後すぐに激しいレースシーンに戻る。

▶2

ご注目いただきたいのはStep4-6だ。

何やら意味深なこのシーンが何を示唆しているのか、解釈してみよう。

まず、「したたる汗」はナリタトップロードの努力の象徴だろう。それが「王冠」の形になる……努力が実り、勝利に結びつくというわけだ。

が、「王冠」はすぐに消えてしまう。

そして「オレンジ色の光」が射し込んでくる。オレンジ色はテイエムオペラオー（ナリタトップロードのライバル）のテーマカラーである。

つまりここで暗示されているのは、「ナリタトップロードの努力が実り、勝利を得るかと思われたが、それは一時の幻想にすぎなかった。彼女はテイエムオペラオーに逆転負けしてしまう」という展開だ。

この不吉な演出を受けて、多くの鑑賞者はドキッとしたことだろう。「えっ？負けちゃうの！？」「嘘でしょ！？」「あんなに頑張ってきたのに！」「ううっ、レースの続きを見るのが怖い……」とドキドキして、物語に引きつけられたに違いない。

そして実際のところ、Step6の直後、テイエムオペラオーが猛追撃してくる。ナリタトップロードは最後の力を振り絞るが、結局ゴール直前で逆転され、敗北を喫す。

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