「左から右へと走っていくキャラA→いろいろあって、走る向きが逆になる」という展開によって、Aの心境がポジティブに変化したことを暗示する ~アニメ「お兄ちゃんはおしまい!」の場合
◆概要
【「左から右へと走っていくキャラA→いろいろあって、走る向きが逆になる」という展開によって、Aの心境がポジティブに変化したことを暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「お兄ちゃんはおしまい!」(第1話)
▶1
本作の主人公は、まひろ(20歳頃の男性)。
彼は引きこもりのニートであり、自堕落な生活を送っていた。
ところが物語冒頭、
・Step1:彼は一夜にして、中学生頃の女の子の体になってしまった(!)。
・Step2:原因は、妹のみはり(17歳)だ。彼女が、自ら開発した性転換薬をこっそり盛ったのだ。
・Step3:まひろは仰天する。だが、如何ともしがたい。かくして「女の子としての暮らし ≒ みはりの妹としての生活」が始まったのだった。
とはいえ女の子になってからも、
・Step4:相変わらず自堕落な生活を続けるまひろ。
・Step5:みはりは呆れる。こりゃダメだ……。というわけである日、彼女はまひろをジョギングに連れ出した。
・Step6:2人は夕暮れの川沿いを走る。みはりの足取りは軽い。背筋をピンと伸ばして、リズムよく走っていく。
・Step7:一方のまひろ。彼はふらふらだ。フォームは滅茶苦茶、息も絶え絶え。やがて彼は、前を走るみはりの背中を見つめた……。
・Step8:で、ここでまひろの回想シーンが始まる。じつは彼は昔から、みはりに劣等感を抱いていた。みはりは文武両道の完璧超人であり、まひろは勉強も運動も何ひとつとして勝てなかったのだ。それが辛かった。プレッシャーだった。彼が引きこもりニートになった原因の1つである。さらにいまや、みはりの手によって女の子の体にされてしまったわけだが……。
ここで回想が終わる。
・Step9:引き続き、みはりの後ろを走るまひろ。その表情は妙に明るい。息切れは収まり、視線は上を向いている。
・Step10:まひろは思う「じつのところ、いまは妙に気分が楽だ。自分が身の丈にあった位置に収まった気がする。もういっそお兄ちゃんはおしまいにしてこのまま……」。そう、「完璧超人みはりのお兄ちゃん」という立場を離れたことで劣等感やプレッシャーが薄れ、気が楽になっていたのだ。
▶2
ご注目いただきたいのは、まひろが走る方向である。
・回想前(Step7):左から右へと走っていくまひろの姿が描かれる。
・回想後(Step9-10):右から左へと走っていくまひろの姿が描かれる。
走る向きが変化したのはなぜか。
まひろの心境が変化したからだろう。
優れた妹に劣等感を抱き、プレッシャーに押し潰され、かくして外に出られなくなってしまったまひろ。彼はいま、「妹の妹」になったことで劣等感が薄れ、前向きに生きられるようになりつつあったのだ。
つまり、走る向きの変化によって、キャラの心境の変化が暗示されているというわけである。
▶3
なお一般的には、「左(下手、しもて)から右(上手、かみて)への移動」にはネガティブなニュアンスが、「右から左への移動」にはポジティブなニュアンスが伴うとされる。
まひろの走る向きが「左から右へ」→「右から左へ」と変化したのは、この理屈からして必然といえるだろう。
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