「新人の前では、終始明るく笑顔でふるまう先輩キャラ→しかし新人帰宅後、密かに疲労感に身を任せる」というシーンを描くことで、彼が新人のために努めて明るくふるまっていたと示唆する ~アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の場合
◆概要
【「新人の前では、終始明るく笑顔でふるまう先輩キャラ→しかし新人帰宅後、密かに疲労感に身を任せる」というシーンを描くことで、彼が新人のために努めて明るくふるまっていたと示唆する】は「読者・鑑賞者に好かれるキャラ、共感されるキャラ、応援されるキャラ」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」(第2話)
▶1
本作の主要キャラの1人・虹夏(高2女子)。
彼女は明るく元気で快活な少女だ。所属するバンド「結束バンド」ではムードメーカーであり、かつまとめ役でもある。
第1話、
・Step1:結束バンドに新メンバーが加わった。後藤ひとり(高1女子)だ。また、ひとりは虹夏と同じライブハウスでバイトをするようになる。
・Step2:ところがこのひとりという少女は、対人コミュニケーションが大の苦手だった。いわゆる「コミュ障」であり、加えて「陰キャ」。友達はいない。人と目を合わせることもままならない。
第2話、
・Step3:そんなひとりを虹夏がサポートし続ける。すぐに腰が引けてしまうひとりを優しく引っ張る。強烈なネガティブ思考の持ち主で大変に扱いづらいひとりを、明るく励まし元気づける。失敗しても怒らず、フォローし、ほんのちょっとでも成功したら大いに褒めて伸ばす……!虹夏はまるで天使である。
・Step4:虹夏のおかげで、ひとりはバンドとバイトに馴染んでいった。
第2話終盤、
・Step5:ひと足早くひとりが帰宅。彼女は虹夏のおかげで自信がついたらしく、「また明日!」「明日も頑張るぞー!」と言って帰っていった。
・Step6:一方、ライブハウス。椅子に腰かけた虹夏がテーブルに頭を乗せて、だらっと弛緩している。彼女はリョウ(結束バンドのメンバーの1人)に言った「『また明日』って言ってくれたねぇ」「バンド組めてよかったよねぇ」。その口調はいつもよりも穏やかというか気が抜けているというか、ふわふわしている。「心地よい疲労感に身を任せている」といった感じだ。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step6の虹夏である。
虹夏は、終始明るく笑顔でひとりをサポートし続けた。その姿はまさに天使だ。
ところがStep6では、彼女は疲労感に身を任せている……。
そう、いくら天使に見えようとも実際には虹夏は生身の人間。しかも、まだまだ未熟な女子高生。超絶扱いづらいひとりの面倒を見る中で、虹夏は心身ともに疲労していたのだ。また、ひとりのために私が頑張らなければという気負い、ひとりの心が折れてしまったらどうしようという不安などもあっただろう。
虹夏がすごいのは、それにも関わらずひとりの前では笑顔を絶やさなかったことだ。
ひとりはスーパーネガティブシンキングの持ち主ゆえ、虹夏が少しでも疲れた顔を見せようものなら自己嫌悪に陥り、「私のせいだ!」「私がバンドを抜ければいいんだ!」「バイトを辞めればいいんだ!」と引きこもりかねない。虹夏はひとりのために天使を演じ続けたのだろう。
「疲れ知らずの超人」も格好いいが、しかし私たちは「疲労しながらも、相手のことを思って笑顔を絶やさない一般人」にこそより強く惹かれるものだ。
というわけで、第2話を見た鑑賞者の多くは「虹夏……あんたいいやつだなぁ!」と虹夏のことを大好きになったに違いない。
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