新しい敵が登場する前に、「ヒーローの装備がいち早く危険を察知し、これまでにない反応を示す」「他の敵が怯え出す」といった描写を積み上げることで、「相当ヤバい敵が来るに違いないぞ!」「一体どんなやつなんだ!?」と読者・鑑賞者にワクワクしてもらう ~特撮ドラマ「ウルトラマンZ」の場合
◆概要
【新しい敵が登場する前に、「ヒーローの装備がいち早く危険を察知し、これまでにない反応を示す」「他の敵が怯え出す」といった描写を積み上げることで、「相当ヤバい敵が来るに違いないぞ!」「一体どんなやつなんだ!?」と読者・鑑賞者にワクワクしてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:特撮ドラマ「ウルトラマンZ」(第19話)
▶1
本作の主人公は、ハルキ(男性23歳)。
彼は、地球防衛軍日本支部の対怪獣特殊空挺機甲隊「STORAGE」の隊員である。他の隊員とともに、日夜怪獣と戦っている。
また、ゆえあって、彼はウルトラマンゼットに変身することができる。
ある日、
・Step1:宇宙大怪獣「ベムスター」が襲来。街で大暴れした。
・Step2:ハルキらSTRAGEのメンバーはロボ2体に乗り込み、出撃した。
・Step3:だがベムスターは強い。このままではやられてしまう!
というわけで、
・Step4:ハルキはウルトラマンゼットに変身しようとする。いつものようにウルトラメダル(変身するにあたって必要なツール)を手に取ると……えっ?メダルが点滅している。こんなことは初めてだ。一体何事だ!?
・Step5:とその時だった。ふいに空の一部にひびが入った。あれは何だ!?驚くハルキたち。
・Step6:ベムスターの様子もおかしい。ひびを見つめて目を真ん丸にする。キューキューと鳴く。どうやら怯えているようだ。彼はロボの腕を振り払うと、慌てて飛び上がった。そしてそのまま宇宙に逃げていった。あんなに強いベムスターが怯え、逃げ出すなんて……。
・Step7:おかしい。何もかもがおかしい!
・Step8:その後、①空のひびがどんどん大きくなっていること、②おそらくは異次元に通じる穴であること、③やがて穴が開通し、ベムスターを怯えさせた何かがこちらの世界にやってくるだろうことが明らかになる。
・Step9:かくして、STRAGEの隊長が命じた「これよりSTRAGEは第三防衛準備態勢に入る!」(STRAGEが第三防衛準備態勢なる非常態勢を取るのは、全話を通じてこの時のみである)。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step4-9である。
ウルトラメダルの点滅(「新たに到来する敵の危険性をいち早く察知して、これまでにない反応を示していた」ということが後に判明する)。
空のひび。
強敵ベムスターの動揺と逃亡。
第三防衛準備態勢。
――すべてが前代未聞だ。異例尽くし。
というわけで多くの鑑賞者は、「こりゃ何かとんでもないことが起こるぞ!」「これまでの怪獣も強敵揃いだったが、段違いにヤバいやつが来るに違いないぞ!」と胸を弾ませたに違いない。
そして続きが気になり、ググっと興味を引きつけられる……!
つまり、【新しい敵が登場する前に、「ヒーローの装備がいち早く危険を察知し、これまでにない反応を示す」「他の敵が怯え出す」といった描写を積み上げることで、「相当ヤバい敵が来るに違いないぞ!」「一体どんなやつなんだ!?」と読者・鑑賞者にワクワクしてもらう】というテクニックである。
なお、この後異次元から到来したのは「バラバ」。「殺し屋超獣」という恐ろしい肩書を持つやつだ。私たち鑑賞者の期待を裏切らぬ強敵である。
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