見出し画像

真面目な優等生キャラは、なぜ人気があるのか?|「うらら迷路帖」に学ぶテクニック

【問】紺はなぜ魅力的なのか?


<1>

「うらら迷路帖」の中心人物は4人。

千矢、紺、小梅、ノノです。


それぞれの人となりを一言でまとめると、

・千矢:元気、野生児、天才型

・紺:真面目、常識人、秀才型

・小梅:ツンデレ、奔放、西洋文化への憧憬

・ノノ:大人しい、人見知り、幼女

……となる。


<2>

さて、4人の中で最も人気があるのは誰か、あなたはおわかりになりますか?


正解は、ズバリ紺です。

多くのブログやツイートを調べてみましたが、明らかに紺の人気が高い。千矢や小梅やノノだってそれぞれ魅力的でかわいらしい少女ですが……しかし紺の人気は頭ひとつ抜けている


<3>

本記事で注目するのはこの点です。

なぜ紺なのか?元気っ子やツンデレ、幼女キャラを相手に、なぜ真面目で優等生な紺に人気が集まるのか?


その理由を考えていきましょう。


【ポイント】紺の魅力の源泉


さて、紺は一体どのようなキャラでしょうか?

上述の通り、基本的な性質は「真面目、常識人、秀才型」です。

しかし、これだけではありません。紺は「真面目、常識人、秀才型」に矛盾するような性質も持っている。


つまりは、紺は「ギャップのあるキャラ」なのです。

そして、このギャップこそが彼女の魅力の源泉だと思うんですよね。


画像1


詳しくご説明しましょう。


【紺の魅力の源泉①】「リアクションが大きい + 乙女チック」というギャップ


<1>

まずは、【リアクションが大きい + 乙女チック】

画像2


象徴的なのが、作中に4回登場する「お嫁に行けないと嘆くシーン」です。


▶ シーン1(第1話)

・Step 1:ひょんなことから、紺が千矢に謝罪する

・Step 2:千矢は「謝る時はお腹を出すんだよ!」と言って、紺のシャツを無理に脱がした。往来にも関わらず、紺の腹が丸出しになる

・Step 3紺は目に涙を浮かべる「もうお嫁に行けない……」


▶ シーン2(第1話)

・Step 1:ひょんなことから、千矢が「紺の正体はキツネでは?」と疑う

・Step 2:キツネなら尻尾があるに違いない!千矢は紺の袴をめくった。往来にも関わらず、紺の下着(ドロワーズ)が露わになる

・Step 3紺は顔を真っ赤にして目を回す「やっぱりもうお嫁に行けない……」


▶ シーン3(第4話)

・Step 1:ある日、紺らがほくろ占いを学んだ

・Step 2:千矢らから「練習したいの!」と乞われ、紺は不承不承下着姿になる

・Step 3:千矢らが紺の体をジロジロ観察し、ほくろを探す

・Step 4紺は真っ赤になって「もう私、お嫁どころか……見られるのが恥ずかしくて銭湯だって行けないじゃない!」


▶ シーン4(第5話)

・Step 1:祭りの日。規則に従って、紺らは白無垢をまとう

・Step 2:紺は想う「白無垢ってきれい♥やっぱり女の子の憧れよね。いつか私もこんな白無垢を着て、皆との思い出を胸に、お嫁に……」

・Step 3:紺の脳裏に<皆との思い出>が蘇る。すなわち、千矢にシャツを脱がされた思い出、千矢に袴をめくられて下着が露わになった思い出、ほくろ占いの際に皆にジロジロ観察された思い出……ハレンチな思い出ばかり!

・Step 4紺が涙を流す「やっぱり私、お嫁になんか行けませーん!」


<2>

ご注目いただきたいのは、

・1:紺は、普段は冷静沈着。ところが…… → 顔を真っ赤にしたり、目に涙を浮かべたり、意外にもリアクションが大きい♥

・2:紺は、普段は真面目な優等生。ところが…… → 「お嫁に行けない」と嘆く。意外にも乙女チック♥

……という2つのギャップです。


私たち鑑賞者はこのギャップに萌え、紺に恋してしまうのでしょう


【紺の魅力の源泉②】「なぜかポンコツ」というギャップ


続いてご説明するのは、【なぜかポンコツ】です。

画像3


象徴的なシーンが第4話にあります。


・Step 1:突然の雨。紺ら4人は、古ぼけた寺で雨宿りをする

・Step 2:しかし雨はなかなか止まぬ

・Step 3:紺が「古来から伝わる雨を止めるための儀式・水止めの舞」を披露する

・Step 4:が、その動きはあまりにも奇怪。率直に言って気色悪い!小梅らは言葉を失う

・Step 5:しかも、雨は止むどころか激しさを増した。紺はがっくりうなだれる


嗚呼、このポンコツっぷり!

「真面目な優等生なのにポンコツ」というこのギャップが最高ですよね!


【紺の魅力の源泉③】「精神的に脆いところがある」というギャップ


<1>

最後にご説明するのは、【精神的に脆いところがある】

画像4


例えば、第5話にこんなシーンがあります。


・Step 1:ある日、千矢が正体不明の化け物と遭遇する

・Step 2:紺は、それが神様ではないかと推理する。そして「超一流の素質を持つ者は神様を見ることができる」という言い伝えから、千矢には優れた才能が眠っているに違いないと考える

・Step 3:紺は努力家だ。誰よりも努力してきた。占いの知識なら、千矢らに負けはしない。しかし……紺は神様を見たことがない!

・Step 4:紺は、とある感情に襲われる。それは「不甲斐ない自分への絶望」であり、「自分が報われないことへの呪詛」であり、「千矢に対する嫉妬」であり、そして「千矢に嫉妬してしまう自分への戸惑い」だろう。紺は1人俯く

・Step 5:そこにニナ先生がやってくる。そして、「嫉妬は悪いことではない。私たちは仲間であると共にライバルでもある。悔しさをバネに切磋琢磨すればいい」と語る

・Step 6:紺はニナ先生の言葉に力を得て、元気を取り戻す


<2>

これ、結構危ないシーンだったと思うんですよね。ニナ先生が来なければ闇落ちしていた可能性も否定できません。


「自分は死ぬほど努力してきた。しかし、いつものほほんとしている友だちの方が優秀」というシチュエーションですからね。ショックを受けるのはわかる。しかし、だからといって誰もが闇落ちするわけではありません。

やはり、紺は精神的に脆いところがあるのでしょう。


そして……そう!

「紺は優等生で、一見すると完璧。しかしじつは精神的に脆いところがある」というこのギャップ、私たち鑑賞者はこのギャップに萌えるんだと思うんですよね。


【結論】私たちは「ギャップ」が大好き♥


<1>

ここまで申し上げてきたことをまとめると……

画像5


<2>

さて結論です。


私たちは、ギャップに弱いものです。皆さんも「普段は大人しいのに、いざという時には頼りになる男子」とか、「普段は勝気なキャラが、ふとした時に見せる女らしさ」とか、そういうのが大好きでしょ?

であれば、ですよ。

これだけたくさんの「ギャップ」を抱えた紺というキャラが人気を集めるのも、ごく自然なことですよね!


<3>

最後に、紺とよく似たキャラを3人あげておきましょう。


まずは、「けいおん!」の秋山澪


次に、「さよなら絶望先生」の木津千里


そして、「らき☆すた」の柊かがみ


紺は、澪、千里、かがみといった「真面目系大人気キャラ」の系譜に連なる存在と言えるでしょう。


関連記事


山奥育ちのヒロインはなぜ魅力的なのか?|【一占:少女と占い、時々おなか(1)】「うらら迷路帖」を三幕構成で分析する

「主人公らが償いのために働く物語」の魅力!!|【三占:仲間と友達、時々ライバル(1)】「うらら迷路帖」を三幕構成で分析する

「行動を共にしなければならなくなった2人」の物語!!|【三占:仲間と友達、時々ライバル(2)】「うらら迷路帖」を三幕構成で分析する


---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで!

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!