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<クソ女と見せかけて超絶かわいい♥>というテクニックで、ヒロインを魅力的に描く!!|「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析する

※引き続き、アニメ「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


六花はクソ女


<1>

本話を初めて見た時のことです。

私、「六花って嫌な女だなぁ!このクソ女!」って思ったんですよ。


だって、

・クソポイント①:記憶喪失になり、困惑する主人公・裕太。そんな彼に対して、かなりきつい口調で「あのさ、ふざけてんの?」。

・クソポイント②:裕太を病院に連れて行くのを、面倒くさがる。

・クソポイント③:隙あらば眉間にしわを寄せて、ため息をつく。


<2>

ハァ?なんでそんなにツンケンしてるの!?

裕太くんは記憶喪失なんだよ!もうちょっと優しくしてやれよ!このクソ女!


私同様に、ムカッとした鑑賞者は少なくないと思います。

裕太くんがかわいい感じの男の子なので、余計ムカッとするんですよねぇ。


六花はクソ女(じゃないのかも?)


<1>

ところが、ですよ。

物語が始まって5分ほど経ったところで、こんなシーンが描かれます。

---

裕太を病院に連れていく途中、六花がふいに口を開いた「ねぇ。記憶がないってことはさ、今日のこと全部覚えてないってこと?

裕太が頷く「うん」

六花「……そっか。でも、もし記憶喪失のふりだったら最悪だからね

裕太は困惑する「えっ。何かあったの?」

六花は無言。

---


<2>

多くの鑑賞者が、「あれ?」と思ったことでしょう。

えっ。何?何なの?どういうこと?この六花の思わせぶりな態度は何なの!?

こいつ、もしかして……単なる嫌な女ではない?


六花はクソ女(じゃない!)


<1>

さらに、それからおよそ1分後。

病院での診察を終え、六花が裕太を自宅まで送ってやるシーンで、2人はこんな会話を交わします。

---

裕太が問う「なんで俺、女子の家で寝てたの?」

六花はぶっきらぼうに「『女子』じゃなくて、宝多六花

裕太「えっ?」

六花「私の名前!響くん、うちの前で倒れて寝ちゃって起きなかったんだよ」

裕太が驚く「何それ?」

裕太は自分と六花を交互に指差して「どっ、どういう関係!?えっ。友達?」

六花はジト目になって裕太を見つめる。

そして一瞬俯く。

だが、すぐに元の調子に戻って「悪いけど、響くんと同じクラスになって初めてこんなにしゃべった感じだよ」

裕太「そっすか……」

---


<2>

このシーンを見て、多くの鑑賞者は口元が緩んだに違いありません。私は緩みました。

そうか、そういうことだったのか!六花さん、きみは……!


本話の冒頭シーン以前に何があったのか?


<1>

そう!

作中では明言されていませんが、六花の言動から推測するに、本話冒頭以前にこんな出来事があったのでしょう

・Step 1:その日、裕太が六花に愛を告白した(もしくはそれに近いことを言った)。

・Step 2:六花は喜ぶ。ハッピー♥

・Step 3:しかしその後、ふいに裕太が倒れた。

・Step 4:しばらくして裕太が目を覚ます。だが、彼は記憶喪失になっていた(本話はここから始まる)。


<2>

なお、裕太から告白された六花が大喜びしたのは間違いありません。

なぜなら、本話の冒頭シーン(裕太が目覚めるシーン)で、六花が合唱曲「Believe」を口ずさんでいるから。六花には<嬉しい時に「Believe」を口ずさむ>というクセがあるのです(これ、第4回で判明します)。


六花がツンケンするのも無理ないよね!


<1>

つまり、ですよ。

六花視点でいえば……

・Step 1:響くんから告白された!ハッピー♥

・Step 2:えっ!響くんが倒れちゃった!大丈夫!?

・Step 3:あっ、目を覚ました。よかったー!

・Step 4:って!はぁ?記憶喪失!?今日のことを何も覚えていない!?ちょっ……どういうこと!?


<2>

うーむ。

こりゃ、六花がツンケンするのも無理ないですよねぇ……。


六花、かわいい!大好き♥


<1>

というか、ですね。

普通に考えれば、「裕太くん、覚えてないの?私だよ!六花だよ!あなたの……カノジョだよ!」とか何とか言ってもいいと思うんですよ。

「大丈夫だよ。私がいるからね!」と言って裕太を抱きしめたっていい。

あるいは、「ひどい!裕太くん、さっき私に告白してくれたんだよ!」と涙を流したっていい。


<2>

ところが……我らが六花はそんなことはしない!

上述の通り、

・Step 1:裕太が「俺たちはどういう関係?友達?」と問う

・Step 2:六花はジト目になって裕太を見つめる

・Step 3:そして一瞬俯く

・Step 4:だが、すぐに元の調子に戻って「悪いけど、響くんと同じクラスになって初めてこんなにしゃべった感じだよ」


これですよ、これ!いろんな想いをグッと腹に収めて、「初めてこんなにしゃべった」と嘘をつく。

この<素直になれない感じ>が最高ですよね!


「『女子』じゃなくて、宝多六花」というセリフ(他の女子と一緒にしないでよという六花の生の感情が表れていて最高ですよね!)と、このジト目で、私は六花に恋をしました。


まとめ


以上を整理すると……

・Step 1:まずは、ヒロインを<ツンケンした嫌な女>に描く

・Step 2:鑑賞者はムカッとする「なんて嫌な女なんだ!」

・Step 3:しばらくして、「彼女がツンケンしているのは愛や好意の裏返しだ」と示唆する

・Step 4:鑑賞者はそのギャップにやられ、一気にヒロインのファンになる「嗚呼、この<素直になれない感じ>が最高だ!かわいい♥」


この素晴らしいテクニック、みなさんもぜひ使ってみてくださいねー!!


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(担当:三葉)

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