茶禅華 2024.08
はじめに
東京にある中国料理店「茶禅華」に参りました。
日本で唯一のミシュラン三つ星の中華です。
この日をずっと心待ちにしておりました!!
勝手に評価!
総合評価:4.7 凄く良い!
料理・味:4.9
サービス:4.5
雰囲気:4.4
コスパ:4.5
実際に食べたもの
季節の食材のおまかせコース(46,200円、別途サービス料)にメインを雲白肉片にご変更いただきました。(今回差額は発生しませんでしたが、時期によっては発生することもあるようです)
また、当日追加できる締めの食事として、麻婆豆腐を追加をしました。(2,700円、別途サービス料)
手紙のような形でメニューをお渡しいただきました。(表記の物以外にもお口直しや締めの料理、デザートが供されます)
漢字4文字で構成されたメニュー、どんな料理が頂けるのか、ワクワクが膨らみます。
コース序盤
前菜類をご紹介します。
青トマトとビーフンを使った一品。
トマトは瑞々しさと心地良い青々しさの後に、山椒が優しくもしっかりと華やかなアクセントを加えます。
スープは、赤トマトと青トマトを一晩かけてゆっくり潰してできた物。果実味とほんのりの甘みを感じられ、夏の爽やかさと瑞々しさを味わえます。
柔らかく蒸した鮑を軽く紹興酒に漬けた一品。
料理長川田さんが追求する料理哲学である、「真味只是淡(真の味は淡き所に宿る)」を感じました。
鮑の旨味、紹興酒の甘みとコク、それぞれは柔らかくも味わいの濃淡が感じられる。
この心地良い調和が滋味深い余韻をもたらします。
「味わいが柔らかい」ことと、「味がボヤけている」ことは全く別物だと、改めて実感します。
海老の紹興酒漬けをヒントに、四川のお酒で酔っ払わせた鮎。その鮎を米の衣で纏わせてカラッと揚げています。
(使用されている四川のお酒はメロンのようなフルーティーな香りがあり、瓜系と相性の良い鮎と合わせたとのことです)
頭側の一口二口はそのままて、残りは赤蓼酢のタレと共に頂きます。
日本の天ぷらとは異なる、クランチーで香ばしい衣。水分が保たれた身からは、すっと優しく染み込み旨味とほんのりと爽やかな甘みと酸を感じます。
炭火の香りを纏わせて供されます。
口に咥えると元気に弾む、でもショキッと力を加えずとも噛み切れてしまうほどの柔らかさ。
甘みは必要最小限、丸身を帯びた山椒やガラムマサラの華やかさ、炭火の香ばしさ、そして豚本来の純粋な甘味と旨味。
この調和が大変素晴らしく、味わい深くも爽やかに消えていく。
付け合わせには、ゴーヤの甘酢漬けと香辛料で炊いた大豆、味変にマヤというペルーの野菜を擦り下ろした物も供されました。
特に、マヤが印象的でした(柔らかなホースラディッシュのようなイメージです)。焼豚に清涼感を加え、2切れがあっという間に消えてしまいました…
一言で申し上げると酢豚。でも、「別物なのでは?」と思うほどに技巧に詰まっている。
巨峰を豚肉で包んだ物を揚げ焼きにした酢豚、衣は驚くほど薄いのに、水あめのようにカリッと仕上がっています。
中は溢れんばかりの肉汁に、葡萄の瑞々しさと優しい甘み!!柔らかな酸と甘みの効いたタレが、豚肉と巨峰の調和をさらに促します。
青柚子とクラゲを使った一品。
蓋となっている青柚子の果肉を絞って頂きます。
コリコリと心地良く歯切れ良い食感と、青柚子の酸と香ばしさ(ネギ由来かな?)が柔らかく効いております。
雉のお肉を使った雲呑からは、水のように澄んだ肉汁が心地良く流れます。
またスープは雉のみ使用。雉の骨を煮詰めた出汁に、当日雉の挽き肉を加えて煮込む。
このことで、挽き肉がアクをぐっと引き込み、写真のような透明なスープができます。
清らかで混じりっ気ない旨味の中に、クレソンの青味が心地良いアクセントです。
北寄貝と春雨を使った一品。
北寄貝はムッチリ肉厚。咀嚼の度にミルキーな香りと旨味が広がります。
そこへパンチのある春雨とパクチーの清涼感が加わり、癖になる味わいです!
コース中盤
メイン類を紹介します。
枝豆を詰めた手羽先を揚げた一品。
唐辛子の山から手羽先を取って頂きます。
まず火入れが絶妙。
皮は薄くもパリッと香ばしく、身はしなやかな弾力ある肉質と澄んだ旨味と肉汁が詰まっている。枝豆の食感と甘みも心地良い。
味付けは香辛料がしっかり効いていてスパイシー。しかし、鶏肉や枝豆の味わいも感じられて、これは病みつきになる!!
人目気にせず、骨の隅までしゃぶり付いてしまいました。(何なら、骨も食べてしまった)
メニューに表記されていないお品です。
甘酢漬け(?)ホオズキの中には、ソルベが入っています。
酸と甘みと冷たさの3段階で、辛みの余韻と食欲がすっきりリセットされます。
まさに中華の王道、フカヒレの煮込み料理。
フカヒレの厚みにまずビックリ!
気仙沼から直接、希望の程度にまで戻していただいた乾燥フカヒレを取り寄せていらっしゃるそうです。
このタイミングで炊きたての土鍋ご飯も供されました。魚沼産のコシヒカリです。
フカヒレを口いっぱいに頬張る幸せは勿論、ソースが強く心に残りました。
濃縮されたコク深い旨みとまるで卵黄のようなまろやかさが、フカヒレを優しく包み込みます。(このフカヒレだからこそ成立するのだと思う)
黒酢を加えると、柔らかな酸のアクセントが食欲を加速させる。
フカヒレの調理やソースの濃度など、一つ一つが緻密に計算された、洗練の一品。なのに、温かみというか、心穏やかになります。
あまりの美味しさに何と、この一品で土鍋ご飯を全て平らげてしまいました(笑)
メニュー外の一品。
フカヒレの姿煮の後に供されました。
お米を先程のソースでぐーっと煮込んだリゾット仕立て。ソースの旨味が染み込んだことで、より米の甘さとの絡み合いを感じます。
大盛りにしてくださって、感激です!!
鹿児島のキングオクラという品種で、名前通りに大きい!
仕上げに金華ハムを削っていただきました。1つ目はそのまま、2つ目は生姜のタレで頂きます。
生姜のタレが丸みのある清涼感で、飲み干したかったほど。
一方で、オクラは火の入りに疑問を覚えました。若干えぐ味を感じたためです。(わざと?)
こちらはフルバージョンの物です。
今回はメインを変更して頂きましたが、別途料金で追加することも可能とのことです。(フルポーション:22,000円〜、ハーフポーション:11,000円〜、別途サービス料)
第一印象はズバリ、「何だコレ!?」
口に入れた瞬間、豚と茄子が驚くほど同時にとろける。
皿ごと蒸す前に茹でて処理しているため、臭みや脂のしつこさは微塵もなく、水のようにさらさらと清らか。そんな旨味と甘みが…気付いたら無くなってしまいます。
揚げガーリックの華やかなパンチと相まって、ご飯のおかわりが止まりませんでした!(有り難いことに、またまた土鍋ご飯をご用意頂きました!!)
メニューには記載しておりませんが、締めの料理も登場します!
こちらは、別途料金で追加できる締め。(2,700円、別途サービス料)
ご厚意で大盛りにしていただきました!
口に入れると、山椒や唐辛子の辛みがじんわり広がる。汗を掻くほどにしっかり辛いですが、豆腐の柔らかな甘みやお肉の旨味も確かに感じる。
マスキングではなく、食材の旨味(と食欲)を引き立てるように調理される技術。筆者は辛い物が得意でないのですが(寧ろ苦手)、麻婆豆腐の真の魅力に感銘を受けました。
ご飯もしっかりおかわりして完食です!
こちらはコースに予め付いた締めの料理です。
鶏をベースとしたスープ(恐らく清湯?)と中華麺。
味変としてXO醤を加えます。
麻婆豆腐の後であるにも関わらず、スープの清らかな旨味が分かる。塩気も控えめで、じんわりと優しい旨味が心に染み渡ります。
XO醬は蟹や海老の豊かな、でも柔らかな香りとミルキーな旨味がぎゅっと詰まっている。
優しい風味ながら、中毒になりそうです。
コース終盤
デザートをご紹介します。
以下は全てメニューには載っておりませんでした。
桃とココナッツアイスに、桃とタピオカのスープ。
スープは数口頂いた後から掛けて頂きます。
桃の瑞々しい甘み、ほんのりと感じるフィンガーライムとグレープフルーツの爽やかさ、ココナッツアイスの華やかな香りと甘みが心地良い調和を生み出します。
また、ソースの滑らかさやアイスの丸みの中に、桃やタピオカそれぞれの食感が加わり、五感で楽しめるデザートです。
温と冷、2種類の杏仁豆腐。冷たい物から頂きます。
冷たい物は、つるんと滑らかな口当たりで、華やかな杏仁の香りや甘みが優しく口に広がります。
温かい物は昔ながらのスープ仕立て。杏仁の香りが鼻を抜け、丸みを帯びた甘みが身体にじんわり溶け込みます。
生麩のような物が入っており、香りや温度だけでなく、食感のアクセントも楽しめました。
野生白芽を使った白茶のスープに胡麻ペーストが入った団子。
ジャスミンとは一味異なる華やかな香りと、優しく深い甘み。
団子は中から胡麻の香ばしさと甘みの詰まった温かいペーストがとろ~んと、一気に口福が広がります。
食材を引き立てるシンプルな作りでありつつ、味わい深いデザートです。
また、意図されているかは不明ですが、冷→冷と温→温と3段階で温度帯を変えていくことで、それぞれが得意とする甘みや香りの引き出し方を巧みに利用されているのかなと思いました。
また、全体として、確立された世界観と唯一無二の魅力を感じました。
香辛料を多用されていることによる、中国料理らしい華やかさ
食材の持ち味があるからこそ成立する、日本料理を思わせる味わい
上記2点が美しく、心地良く調和していました。
サービス
サービスは率直に申し上げると、料理の完成度に比べると改善の余地があるのかな?と思いました。
具体的には、同じミシュラン三つ星として比較し、カンテサンスの方がレベルが高いと感じました。
下記2点が理由です。※ダイニング席(茶禅華)と個室席(カンテサンス)の違いもあると思います!!
ひとつひとつの立ち振舞い
サービススタッフの方が多い割りには、目が行き届いていない印象。 ご飯のおかわりなど、こちらからリクエストする場面が多かったです。若干オペレーションっぽく感じる点があった
スタッフの方のやり取り(「〇〇卓のドリンクはペアリングです」「✕✕卓は離席しました」など)かなり耳に届いてしまいました。
結果として、ダイニング席は若干窮屈な印象を受けました。
しかし、
料理の説明やさらに踏み込んだ質問への対応、料理に付随するエピソードなどをお話いただいた点
ご飯のおかわりなど我儘に快くご対応いたたいた点
何より、茶禅華が大好きなんだなという思い
この3点が非常に心に残りました。
お値段
季節の食材のおまかせコース(46,200円、別途サービス料)、麻婆豆腐追加(2,700円、別途サービス料)、菊茶×2(料金不明)で、60,000円/1名でした。
ダイニング席はサービス料10%、個室席は15%であるため、注意が必要です。
まとめ
全体を通して感じたのは、料理の完成度の高さ。
中国料理らしい華やかさと日本文化を彷彿とさせる「引き算の美学」。
ジャンルや国境に囚われず、多様な食材や食の在り方に目を向け、その良さを活かすアプローチと技術。
そして、食材や人とのご縁を大切にされる、謙虚で実直なご姿勢を鑑みました。
何度伺っても、また新たな発見に胸高鳴ること違いない。是非再訪したいです!!
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