見出し画像

【週末投稿】四季がある日本のバナナ #6(可能性に賭ける、多様性DNA)

バナナに似た容姿のバショウは冬、枯れて見えるのだが、春になると空に向かって無から有を生む如く、勢いよく葉を作り出す。バショウは北海道でも冬を越して南国チックな気分を私たちに見せてくれる。

散歩が好きは私は、畑や庭に植えられたバショウを見てきて生命力のすばらしさを感じてきた。しかし、まさか食用となるバナナまでもが、耐寒性を獲得したバショウの様に冬は枯れて、春に芽を勢いよく伸ばすなんて信じられなかった。

少し脇道にそれてバナナ品種についてを見てみよう。
食用バナナは世界で見ると、正確には把握されていないが約300品種はあるとされている。
日本の店に並ぶバナナは、そのうちのごくわずかに品種である。
生食用の Cavendish がほとんどで、時々Lacatan や GrassMichel、モンキーバナナとして売られる  Masバナナなどが並ぶ。専門店に行くと、野菜バナナ(生食は不向きで、焼いたり蒸かして食べるバナナ)として、Saba や Tanduk が有名だ。昔は皮が橙からどす黒い赤色を帯びるいわゆる赤バナナも売られていた。
ハワイなど海外へ行くと、多少酸味が強いアップルバナナやナムワバナナ等々、進化の過程で違う道を歩んだ、フェイバナナなどいろいろな品種が販売されている。

しかし、これら多くのバナナ品種は耐寒性が無く、日本では温室でしっかりと温湿度管理されたところでないと、開花・結実は難しい。

さて、話を元に戻そう。
海外や日本のバナナ育成愛好家が、熱帯植物であるバナナを温帯地域でなんとか「育てられないか」という事で、様々な品種を使って越冬実験を繰り返し、なんと日本でも最近になって収穫の成果が出てきたのである。
草の根的活動の成果であり、利潤を追求する企業は out of 眼中なのであった。

まずは関東のマンションでバナナを育てている、私の事例をご紹介しよう。

これは1月の越冬中ナムワバナナ。
若干緑が残っているが、2月くらいになると冬のバショウ写真の様にカリカリに枯れてしまう。

4月になり、枯れ枝をカットした状況で新芽が吹いてきている様子が分かるだろうか。

このように霜があたらず、風もある程度防げる場所など植える場所(壁付近に植える事に意味がある)を工夫すると、関東でも無保護で越冬が出来、3年かけて結実できるまでの大きさに成長できるのである。

このナムワ(Namwa 別名、Awak)バナナのような耐寒性は、進化の過程でタイ、インドの山間部の寒いところで体得した力なのかもしれない。
バショウが日本に上陸して耐寒性を獲得して北上したように。

数年という短いスパンで耐寒性は獲得できないと思うので、バナナ愛好家が耐寒性のあるバナナに育て上げたという事ではなく、耐寒性のあるバナナを探し当てたという方が正しいであろう。結実後その株は枯れる運命であるため、育成者は時々出てくる脇芽を使って株を増やすことになる。

実は同じ遺伝子を子孫へ脇芽(水芽と呼ばれる)という形で継承してゆくのと言われているが、どうも違う様に私は考えている。親株の脇から出た小さな芽は、株の大きさにかかわらず越冬出来たり、越冬できなかったりする「個性」があるのだ。

すなわち全く同じDNAが継承されるわけではなく、個性としてわずかに変化したDNAを持って生まれた芽は、さまざまな環境に順応できる可能性を秘めていると思っている。私は個人的に、これらを多様性DNAと呼びたい。

耐寒性を追求するバナナ育成愛好家は、越冬成功してすくすく元気に成長する株を意図的に、または無意識に選抜して育成している。これが積りつもって数十年積み重なった結果、日本の気候に適応しやすい株へさらに進化するのではないかと思っている。

実は面々と引き継がれているバナナのDNAは、日本のような四季を知らない。次回は実の収穫のタイミングについて話したいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?