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【週末投稿】つれづれ有用植物#107(ウルシ科ウルシ属:ハゼノキ)

秋になると美しい紅葉をする樹の一つとしてハゼノキがあります。
単に「ハゼ」と呼ぶ事があるウルシ属の木です。江戸時代頃に琉球王国から持ち込まれたと言われており、現在山野に生えているハゼノキは、栽培されていたものが野生化したものが多いと言われています

同属では「ウルシ」が有名で、昔から日本に自生していたと言われています。こちらもウルシ科特有の美しい紅葉が見られます。

さて、ハゼの木はどんな有用植物なのでしょうか。
ご覧の様に、紅葉する美しい木でもあるので盆栽にも利用され、材は耐湿性があり、黄色で箱や挽き物細工されます(他の需要は後述します)。
しかし何と言っても一番の需要は、木蝋(モクロウ)を採る事でした。
木蝋は主にロウソクの原料に使われています。

■蝋(ロウ)とは
融点の高い油脂状の物質(ワックスエステル)の事です。
ハゼの木蝋は室温ではある程度固い状態で、水の沸点(100℃)より低い融点を持ち、気体はよく燃焼します。
木蝋はハゼノ木の実から採るのが代表的ですが、以前は「ウルシ」の実から採取していました。また、米ぬかから抽出した糠蝋(ぬかろう)、サトウキビの搾りかす(茎から砂糖分を絞った残り)から抽出した「サトウキビ蝋」、アブラヤシの幹から採取される「パーム蝋」などがあります。動物からは、マッコウクジラ頭部に含まれる液体蝋(マッコウクジラ油)、原油から採れるパラフィンワックスなど様々なものがあります。

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■ロウソクとしてとても重宝されていました
時代劇をご覧になりますと和ロウソクが照明の一手段として重宝されていた事はご理解いただけると思いますが、実はとても高価な贅沢品でした。日常的に室内照明に使うのは大名の御殿や料亭、遊廓など限られた場所だったそうで、日常は高価なエゴマ油を焚いていました。庶民はさらに安価な菜種油を使っていました。

和ロウソクの芯は、い草(畳表の原料)の髄から取れる燈芯や和紙を巻いた紙芯が使われていますが、洋ローソクでは糸を使用しています。
和ロウソクは、一本ずつ手作業で作られるため、出来あがる数が限られてしまう短所があります。現代では洋ローソクが機械で製造して大量生産が出来るため、和ロウソクはあまり利用する人が少なくなってしまいました。

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【和ロウソク】

しかし、和ロウソクにも多くの利点があります。
パラフィンワックスや他のワックスにない独特の粘りを持っているのが特徴なので、化粧品の口紅、ハンドクリーム、軟膏、座薬、クレヨン、色鉛筆、お相撲さんのビン付け油等に利用されてきました。そしてひと昔前ではワープロのリボン等にも用いられました。

また、お土産用に「絵ロウソク」というステキな和ロウソクもあります。

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■植物としての特徴
日本では本州の関東地方南部以西、四国、九州・沖縄、小笠原諸島に分布しています。暖地の海に近い地方に多く分布し、明るい場所を好む性質があり、街中の道端に生えてくることもあります。
雌雄異株の落葉高木で、樹高は 7 ~ 10mほどになります。
花期は 5 ~ 6月で、花は葉の付け根から伸びた円錐花序で、枝先に黄緑色の小さな花を咲かせます。

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秋に直径 5 ~ 15mm ほどの扁平な球形の果実が熟し、冬になると、カラスやキツツキなどの鳥類が高カロリーの餌として好んで摂取し、種子散布に寄与します。

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Let's Green Life  和ロウソクの原料ハゼノキ




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