【週末投稿】つれづれ有用植物#214(バラ科ナシ属:ヤマナシ)
本州中部以南、四国、九州の山地や人家に近い山中に古くから自生している梨です。中国から入ってきて栽培されていたものが野性化したとも言われており、各地で自然交配を繰り返した結果さまざまな品種が自生する様になり、それらを総称してニホンヤマナシと呼んでいるようです。
日本書紀にも登場するほど日本人との関係は深く、私たちが口にする「二十世紀」、「香水」、「長十郎」といった和ナシの原種として、また台木として利用されています。樹高は10 ~15mにもなる落葉高木です。
またこの系統以外にも、東北などに自生する野生種とされる「イワテヤマナシ(ミチノクナシ)」と呼ばれる品種や「アオナシ」という品種などがあります。
4~5月になると葉の展開と共に白い花が開花します。
花は直径5センチほどで花弁は5枚、花柱(雌しべ)5本の周りを20本ほどある雄しべが取り囲みます。短い枝の先に5~10輪が集まって咲く姿は美しく観賞価値があります。
実の大きさは3cmから大きくても8cmほどで、栽培されている一般的な梨と比べるととても小さいです。
さて実のお味ですが
梨本来のシャリシャリ感はあるのですが、酸っぱくて食用にはあまり向きません(原種ですから)。甘みは乏しいですが香りがよく、長十郎梨の味によく似ているといわれるています。
しかし昔の人は工夫をして利用していました。
山梨県にある山村では生食のほか、茹でておやつにしたこともあったそうです。またホワイトリカーに漬けて果実酒にしてナシの香りをたのしみます。
幹の直径は最大で60センチほどです。
染料に使われる樹皮は黒っぽい色合いで、古木になると縦や鱗状に裂け目が入ります。
ヤマナシの材は緻密で耐久性が高いため、書道で使う墨の木型に重用されているそうです。
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