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【週末投稿】つれづれ有用植物#203(クワ科イチジク属:イヌビワ)

関東地方以西から沖縄の暖地の山地や丘陵と韓国の済州島に分布する、雄雌異株の落葉低木または小高木です。高さは5mくらいにまでなります。

果実(正確にはイチジク状果という偽果の1種)がビワに似ていて、甘くて美味しいのですが、ビワに比べ不味であることから「イヌビワ」と名付けられたようです。「イヌ」とか「カラス」などの接頭語として付く植物の名前は、比較対象の植物に比べて「劣る」時によく付けられます。犬や烏に失礼ですけどね。

イチジクが日本に渡来する前の時代は、本種を「イチジク」と呼んでいたそうですよ。果実や白い乳液を薬用とします。

【イヌビワの果実】

この植物の面白い所は、結実過程で昆虫と共生関係にある事なんです。

花期は晩春(4 ~ 5月ごろ)です。
10〜11月頃になると、果嚢は直径約2cmの球形になり黒紫色に熟します。
雌果嚢はとりあえず食べられますが、雄果嚢はかたくて食べられません。

雄花序の奥側には雌花に似た「虫えい花」があり、これに「イヌビワコバチ類」が先端の穴から中に入って受粉させて卵を産み付けます。幼虫は越冬して虫えい花の子房が成熟して果実状になるとそれを食べて成虫になります。
運悪く雌花に入ってしまうと、産卵もできず、出ることもできずに閉じこめられてしまいます。

共生関係と言えどもイヌビワが仕掛けた環境に、イムビワコバチ類を利用する(生のサイクルを運命づけられた)とも言えるでしょう。
この様に植物の進化の過程で、自分に都合の良い様に昆虫類をうまく手名付けさせて進化した事実に驚きを隠しきれません。

初夏になるとイヌビワコバチ類の雌成虫は偽果の外に出ますが、雄成虫は花序の中で雌成虫と交尾するだけで一生を終えます。
雌成虫は雄花序の出口付近にある雄花から花粉を受け、初夏に開花する雌花序に入った際に授粉をしますが子孫を残せず、雄花序に入ったものだけが産卵し、翌年春にこれが幼虫になるという生活サイクルを繰り返します。

イヌビワコバチがオス株の花のうから飛び出し、メス株の花に受粉をすると夏から秋には甘いイヌビワになるのです。
食感はイチジクによく似ていて、小さな種が多数入っています。

■花粉を運ぶメスのイチジクコバチ(訳1分半)
JT生命誌研究館 様

■参考
・やくしまじかん様
生きていく為に絶対必要な存在 ~イヌビワ&イヌビワコバチ~

・松江の花図鑑様 イヌビワ(犬枇杷)

・BRH 系統進化研究室様
「イチジク属植物とイチジクコバチの共生関係の仕組みについて」


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