【短編小説】深夜の幻想譚(改訂版)
午前一時を待って、工藤祥吉は愛用のロシナンテ号に乗って家を出た。ご大層な名前だか、幾分ガタのきたマウンテンバイクである。
なに、ネットオークションでゲットしたF値1・2の明るい単焦点レンズを試してみたくなったのだ。コロナ以来、友人とも音信不通、飲み屋に脚を向けたこともないのだから、ストレスは破裂寸前の風船なみだ。時には缶チューハイ片手に路上で喚き散らしたい衝動にもかられるが、三十路過ぎのしゃらくせえフンベツはこれを許さない。
せめて、真夜中の写真撮影くらい、許してもらい