銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫っ…

銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫ってるとはいえ、いっそ迫っているからこそ言葉に魂を込めて、文章を綴ってゆく所存です。 雑文、エッセーから小説まで……綴ることしか能のない身ですが……

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  • 小説 小説らしきもの

    基本 短いです。 長いのは一本だけ……

  • 連載した長めの小説です。お暇な時に、どーぞ(^o^)

    大人むきの純文学です……でもキャッチコピーは「面白系純文学」と言っておきます。

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星月夜の夢

                             経済学の祖アダム・スミスがこんなことを言ってる。 世界にどんな悲劇が勃発しようとも、人間というものは自らの爪先の痛みに関心を向けたがる…… 人間のエゴを……とりもなおさず、野放図の欲望を起爆剤とした資本主義のシクミを見事に言い当てている。 試みに、ついそこの新聞を斜めにでもいいから読んでみよう。 コロナは未だ終点が見えず、政局は猿芝居に終始し、海彼の紛争は後をたたず、地球はカタストロフィーに向け

    • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 15章

             15 アダムとイヴ  革命という魔羅を振りたて、病院体制にいどむ刑天のいきごみとは裏腹に、目下の冬吉はプロジェクトの掌中なさけなく、やはり憂慮すべきは《愛の臓器》の件に他ならない。貴宏と臓器ブローカーとの密談の真相はいかに。究明しようにも、白衣の訪問はぱったり途絶え、ひたすら苛立ちの一週間が過ぎていた。  来ないとなるといっそ不安が募るは、やはり病のこころだろう。カードを手につい病院内をうろつけど、少しでも枢要においたつ地帯に踏み込めば、おい、どこへゆく。同

      • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 14章

               14 刑天(けいてん)  少女と生首との整合性いまだつかぬうち、時計は九時を回ってノックとともに、 「螺旋サービスのものでーす。遅くなりました」  冬吉が扉を開くと、作業着姿の若いやつが立って一礼うやうやしく、訊けば、電話と錠前の取りつけに参じたとのこと。招き入れれば慣れた手つきテキパキと抱えた梱包を解けば、電話は昨今流行という黒いレトロなやつで、なんとコードの先のプラグを壁のコンセントに差し込んだ。訊けば、インターネットとをはじめとする通信網もコンセントに

        • 【SF連載小説】 GHOST DANCE 13章

              1    3 禁じられた遊び  冬吉が部屋の前で美也子と別れると、一服する間もなく待ち構えていたように稲垣博士と涼一郎がやってきた。  まず、稲垣博士が開口一番、 「どうだったね、デートは」 「まあ、そこそこ」 「それはよかった。さっそく、質問に答えてもらいたい」  涼一郎は立ったままながら、稲垣博士は椅子にかけて冬吉に向かうとカルテとボールペンで身構え、ひどく真剣な表情でぶつけるには、 「どんな些細なことでも、すっかり話してもらいたい。まず、口説きの文句。キスの

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          88本

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          【SF連載小説】 GHOST DANCE 12章

                 12 あかね  明くる日の昼すぎ、ノックとともに入ってきたのは貴宏であった。顔色は相変わらず冴えない。それでも、灰色のカードを冬吉に手渡すと、事務的な口調で言うことに、 「もうじき、美也子君が来ます。さっそくのデートの件、よろしくお願いします。外の案内は彼女に……」  冬吉は手で制して、 「その前に話がある。単刀直入に訊く。おぬしと美也子さん、恋人同士じゃなかったのか」  答えもせず顔をそむけたのに、 「もし、なんらかの圧力によって仲を裂かれ、言ってみれば研

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 12章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 10章、11章

                 10 PSD  その日の夜である。冬吉はデジタルピアノの前に座り、ヘッドホンを耳に鍵盤を叩いた。そう。涼一郎との『蟻の巣』見学を終え部屋に戻ったところで自由は打ち止め。カードは取り上げられ、再び幽閉の身に逆戻りであった。おまけに、先ほど食事を運んできたのが美也子とは別口の看護師で、美也子のことを訊いても何も答えず、明日検査があると事務的に告げただけ。  いくら作り物と理解はしてみても、血塗れの美也子の姿が眼間にちらついて容易に消えず、加えて当人が消息不明とあ

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 10章、11章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 9章

                 9 スナッフゲーム  気になるカップルを残し、冬吉は涼一郎とともにすぐにエレベーターに乗って一階に出た。  降りたフロアはやはり大病院の、白衣あわただしく舞い、外来らしい患者ひしめく不安ただよう待合室。ここを抜け、カートに乗って芝を渡る。所々にプールやファーストフードの店舗が並び、南国の植物も形よく、ちょいとしたレジャーランドのとば口のながめであった。  それでも、じきに目に迫るはかっての東西ベルリンを仕切った壁にも似て、構えいかめしく、こちらとあちらを厳然

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 9章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 8章

                 8 滅亡の遺伝子  翌日の朝、いつもより食事の時間が遅いと訝る冬吉のところに、美也子ならぬ貴宏がラフなジャケット姿で現れるなり、 「さあ、今日は外の見学です。食事も向こうでとりましょう」  そう言って渡されたのは、白よりは格の落ちるらしい灰色のカードながら、とりあえずのパスポートであった。冬吉は、さっそく貴宏に従って扉を抜けた。  すでにささやきとの見学で都市と融合したこの時代の病院の概要をおぼろに掴んでいたはずが、貴宏とのゆったりとした散策に於て冬吉は改

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 8章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 7章

                7 愛国少年の物語 遊園地と性教育ふたつながら半端になったせいか、プリプリと膨れるささやきを宥めすかし、冬吉がやっとの思いで1707号室に舞い戻ったのと、美也子が配膳車にて夕食を運んできたのはぎりぎりセーフの、時間差にして五分足らずのことであった。  美也子は態度そっけなく、顔つきも冷たい。やはり、当方の責任だろう。そう。最初に言葉を交わしたノリを件の肉体的条件故にひとまず引っ込めたに代わってヌッと顔を出したタチは、自分でも首をひねるほど陰気な、辞令すらままなら

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 7章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 5章、6章

                5 模範的患者  翌日から、さっそくリハビリテーションが始まった。話によると、結果的に冬眠の運命をみるきっかけの事故はダメージ深刻な重傷とのことで、手当てなおざりのままとっとと凍結されたらしく、本格的な治療はもっぱらこの百年後に於いて行なわれたという。  ところがさすが隔世の、進歩した医療あらたかに昔の致命傷もお茶の子さいさいのわざで、意識が戻った時にはおおかたの修理は完了、からだが動かぬと信じたは冬吉の精神的思い込みによるものと知れた。  さるほどに、一週

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 5章、6章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 3章、4章

                3 西暦210×年  ささやきと名告る少女が帰ったあと、意識は俄然気力を回復した。「今村冬吉」という名前を取り戻したせいだろう。面も、あんなものか。別に違和感を覚えないところをみると、失われた記憶の骨組みくらいは出来上がった心地であった。  起き上がる力はまだない。それでも手足は重いながらも操作に支障なく、何よりも視界という窓がすっきり開いたは心強かった。とりあえずあたりを見回せば、病室というより小振りのワンルームマンションのつくりである。ここから見れば横にやや

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 3章、4章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 1章、2章

                   GHOST DANCE                                                                                                                                                                                                                           

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 1章、2章

          活字中毒

             以前ホテルでバイトをしていた時、同僚の一人にほとんど「活字中毒」と呼べるような奴がいた。  とにかく仕事以外の時間にあっては本を手放さない。職場への行き帰り、食事中、トイレにまで本を持って入る。    どんなジャンルが好きなのか訊いたところ、文字通り「活字」がそこにあるならば、小説であろうと、歴史書であろうと、街中でもらったパンフでも……なんでもござれという。  はっきり言って、ちょっと怖かったこともある。  休憩時間に話しかけても「ああ」とか「うん」とか以外の発語は

          【短編小説】僕の瞳の中で君は永遠に生きる

              僕の瞳の中で君は永遠(とわ)に生きる      「悪いけど、貴方と知り合いだなんて誤解されたら……私、首くくって死ななくちゃならないから」  ショックなんてもんじゃない。  どこぞアイドルみたいな服装に、色の濃いサングラス姿ではあったが、仁吉は一目で、加納絵里子さんだと気が付いた。  場所は、六本木の交差点。オシャレとは無縁の仁吉には場違いとはいえ、たまたま友人に誘われ、某新進画家の個展を見ての帰りであった。  当の友人は、大学卒業後はファッション業界に進

          【短編小説】僕の瞳の中で君は永遠に生きる

          ビバ! おにぎり

           「  おにぎり」が、流行っているのだろうか?  地元の商店街にも最近、おにぎり専門店が開店し、当初は行列を作り、今でも覗くたびに満席である。  僕はまだ入店したことはないが、いずれ賞味したいとも考えている。  実は、僕がおにぎりの美味しさを知ったのは……呆れ返ることに、去年の夏からなのだ。  金欠いみじくして、昼食も省いていたのだが、いかんせん暑さに体力がついてゆかず、ついスーパーのおにぎりを買ったのが、まさしくエポックになったらしい。  記憶を辿るまでもなく、僕はこ

          ビバ! おにぎり

          【短編小説】深夜の幻想譚(改訂版)

           午前一時を待って、工藤祥吉は愛用のロシナンテ号に乗って家を出た。ご大層な名前だか、幾分ガタのきたマウンテンバイクである。  なに、ネットオークションでゲットしたF値1・2の明るい単焦点レンズを試してみたくなったのだ。コロナ以来、友人とも音信不通、飲み屋に脚を向けたこともないのだから、ストレスは破裂寸前の風船なみだ。時には缶チューハイ片手に路上で喚き散らしたい衝動にもかられるが、三十路過ぎのしゃらくせえフンベツはこれを許さない。  せめて、真夜中の写真撮影くらい、許してもらい

          【短編小説】深夜の幻想譚(改訂版)