ペチャンコ好き
この夏は、カツ丼をメインにかなりトンカツを食べた。
最近はどこのスーパーでトンカツを買っても、そこそこ分厚い肉の場合が多い。
やはり、分厚い方が、肉はトンカツに限らず食べごたえもあるし、美味いというのが一般的なのかも知れない。
しかし、僕は昔から……豚肉であれ牛肉であれ、分厚い肉というのが今一好きになれないのだ。
我ながら「貧乏性」だと思うのだか……やむを得ない。
思えば、僕が子供の頃だが……近場の商店街に総菜屋があって、唐揚げとかコロッケなどの揚げ物をメインに売っていたのだが……とにかく安い。
まあ、安いも当然……トンカツなどは、文字通り「紙の薄さ」なのだ。
貧乏だったこともあって、僕にとってはこの薄いトンカツの味が舌に刷り込まれてしまったのだろう。
掛けるソースも、トンカツソースでは負けてしまうのでウスターが常であった。
結果、その後どういうことになったか?
そう。例えば豚のショーガ焼きを作るにしても、厚い切り身ではなく薄切りを使うし……仮に、ユトリがあって牛肉を食えるとしても、分厚いステーキよりは、薄切りを炒め、醤油と胡椒で味わうようにもなったのだ。
しかし、薄いトンカツというのは自炊してみると、案外難しい。下手をすればお煎餅のようになってしまい、何を食っているか判らなくなる。
ついては、ミルフィーユ仕立てとでも言うか、薄切りを何枚が重ねてトンカツにするのだが……今でも、有名店の分厚いトンカツよりはこの貧乏臭いふぜいを愛している。
他にも、ハンバーグなど昨今ではオニギリみたいにゴロッとした奴もあるが……僕はそれだけで退いてしまう。
自分で作る時も、小判形に整形した後、かなりペチャンコにし、尚且つ真ん中を凹ませて焼く。
カレーにいれる牛肉も、やはりゴロッ系ではなく、薄切りの方が好みである。
ペチャンコ好みは、何も肉ばかりではない。塩鮭の切り身も厚いよりは薄い方が好きだし、鰤の照焼きなどもこれに準ずる。足らなければ、二枚食えばいいだけの話である。
畢竟……僕自身も分厚い重厚な人間ではなく、薄っぺらな、風のまにまの存在なのだから……案外相性がいいのだろう。
ちなみに、女性の好みも……豊満よりは俄然「ペチャパイ」好みだが……ま、いらぬお世話のようであった。