自炊エレジー
近頃、全く自炊から遠ざかっている。
特に、この暑かった夏……何もかもシンドくて、弁当ばかり食べていた。たいして美味しくも無く、ウンザリという時もあったが、厨房の熱気を思うと尻込みしていまったのだ。
お陰というわけでもないが、ガス代は一月千円ちょっとほど。
やっと涼しくもなってきたので、そろそろ自炊とも考えるのだが、人間という奴、一度怠け癖がつくと、どんどんとそっちに舵を切りたがる生き物らしい。
さすがに弁当からは卒業したが……ご飯はレトルト、総菜もスーパーのパック入りという無精である。
時には、豚カルビ丼などで、ガスは使うが、ネギを刻んで、キッコーマンの塩タレをぶっかけるだけの、とても料理とは言いかねる。
そんな僕なのだが、本来自炊が嫌いだったわけではない。noteを始めた頃も「銀騎士カートのお料理教室」なる記事を書いた記憶もある。
とはいえ、何も料理に自信があるわけではないが、出来ることなら……自分の舌が満足する味を出したいとは、かなり子供の頃から思っていた。
子供時代の好物として、お袋が作る「みやこどり(鶏と卵のそぼろ丼)」が好きだったのだが……今一、味付けに不満であった。
たぶん、北海道出身の祖母の、濃い味付けが幼小期にしみ込んでいたせいかも知れない。この祖母は、お袋が働きに出ていたので料理などは担当していたのだが、僕が中学の時に椅子に座り損ねて尻餅をつき、股関節を患ってからというもの、厨房に立つことはなくなったのだ。
結果、お袋が料理を担当したのだが……元来肉類が大嫌い、特に「酉年」だったせいか……自分を食べるというイメージから「鶏肉」を徹底的に嫌悪していたのだ。
そんなお袋の作る「鶏そぼろ」だ。とはいえ、お袋はそれなりに料理のセンスはあったのだが……はやり一切味見をしない鳥そぼろには、不満があった。
基本、祖母とはちがって味が薄い。かてて加えて、いり卵もどこか焦点が曖昧なのだ。
僕が、料理の味付けに色々工夫し出したのは、高校から浪人時代頃だろうか。
まずは、「鶏そぼろ」。俄然、味付けを濃くしたと同時、他人に食わせたら入れ過ぎという位にショーガが利かせる。
ついで「いり卵」だが……僕は、関西の出汁を効を加えた「だし巻き」と関東の味の濃い「卵焼き」の折衷として、味は濃い(砂糖以外に醤油も濃い口をかなり入れる)が、出汁も強めに加えるというものだ。
かくして作った「卵焼き」は、かなり好評であった。
ついては、基本この卵焼きのレシピそのままに、いり卵に仕上げるのが僕流である。
……と、ここまで書いてきて、急に「みやこどり」が食いたくなったのだが……いけない。未だ無精癖が抜け切っていなかったのか、スーパーで美味そうな地養鶏を籠に入れかけたのだが……ついつい敬遠して、出来合いの肉団子を買ってしまった。
やはり、出来合いの肉団子……美味いわけがない。
よし、今度の休みこそ「みやこどり」に挑戦するつもりであります。
貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。