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第5回 30万人の予備役の動員,ロシア国内でのデモと抑圧

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【ロシアのプーチン大統領,予備役の部分的動員表明「あらゆる手段」でロシア防衛と】BBC

9月21日,プーチン大統領は軍の部分的な動員(30万人の予備役)をテレビ演説の場で発表した.
更には,この戦闘においては「あらゆる手段」を取る意向を示すなど,再び核攻撃をも示唆している.

今回の動員令は,長らく国内に喧伝してきたプロパガンダとの矛盾が生じることとなる.国内向けには「ドンバス地域の解放」「ウクライナの非ナチ化」を目的とした「特別軍事作戦」と伝えており,西側勢力を悪魔化した形で戦況を進めてきた.そして決して大規模な戦争状態にはなく,戦況もロシア軍が有利に運んでいると常に報告している

多くのロシア国民はそうした当局によって作成されたストーリーを信じ込んでいることから,国民のなかでも今回の侵攻の正当化するなど,一定のコンセンサスがある.

しかし実態としては,初期段階から制空権を確保できず,リソースの分散により指揮系統がとれておらず,ロジスティクスの面では終始問題を来しているなど苦戦を強いられており,当初は数日で方を付けられると見込んでいたところから既に半年以上が経過している
そのため,兵力不足に喘いでいる軍としては,今や囚人までをも前線に送り込んでいる状況にある.

ロシア軍の優勢が伝えられている国民としては,当然ながら今回の動員に対して不満・反感を抱くこととなり,国内各地でデモが発生している.
当局はこれを力で抑圧し,この短期間で1000名を超える逮捕者が出ている.


【ロシアでの抗議:反戦デモで1300人以上を逮捕】The Guardian

そしてこの演説後には,旧ソ連諸国等行きの航空便のチケットは次々に完売し,残りのチケットも高騰するなど,動員を恐れた国民が国外への移動を試みているという.
近い将来,成人男性の国外への出国禁止令が出されることを見込んでの動きであることが予想される.

ウクライナ軍は9月10日,ロシア軍によって占拠されていたイジュームの奪還に成功するなど反転攻勢を強めており,ロシア軍は特にウクライナ東部において多大な損失を被っていることに加え,志願兵や囚人を戦場に送り込むほどの兵力不足に喘いでいる状況である.

戦場ではこうした苦戦,国内では国民の不満の噴出と,プーチンとしては追い詰められた局面となっている.

一方で,ウクライナ国内の親ロシア派勢力は,東部のドネツク州とルハンシク州,南部のヘルソン州と南東部のザポリージャ州の支配地域において,ロシアへの編入を問う住民投票の実施を表明しており,国際社会からの非難の声が強まっている.

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