新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
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書籍解説No.11「ワークライフバランス入門 日本を元気にする処方箋」

こちらのnoteでは、毎週土曜日に「書籍解説」を更新しています。
※感想文ではありません。

本の要点だと思われる部分を軸に、私がこれまで読んだ文献や論文から得られた知識や、大学時代に専攻していた社会学、趣味でかじっている心理学の知識なども織り交ぜながら要約しています。
よりよいコンテンツになるよう試行錯誤している段階ですが、有益な情報源となるようまとめていきますので、ご覧いただければ幸いです。

それでは、前回の投稿はこちらからお願いします。

第11弾は【ワークライフバランス入門 日本を元気にする処方箋】です。

【ワークライフバランス(以下、WLB)とは】
仕事とプライベートのバランスを意味し、その目的は仕事も私生活も犠牲にすることなく、健全な心のバランスを保ち、充実した職業生活や私的生活を送ることにある。

皆さんは、現在の生活においてどの程度の充実感、満足度を感じていますか。
家族との時間、キャリアアップのための時間、余暇活動や趣味のための時間は確保されていますか。

これらが満たされていなければ、WLBが達成されているとはいえません。仕事と私生活の折り合いがつかなければ、日頃のストレスから心や体の健康、そして家族との時間を損ないかねません。
かく言う私も、新卒で勤めた福祉施設では不規則な勤務形態も相まって、プライベートに時間を割く余裕がないほどに身を粉にして勤めていました。

今回の記事では、そうした現代の働き方に関する課題と、求められている変化について綴っていきます。

【豊かさの変化】

生活の「豊かさ」には経済的豊かさ、精神的豊かさ、健康的豊かさなどが挙げられます。
生活必需品が整っていなかった時代には経済的豊かさにかかるウェイトが高かったことから、経済成長に伴って暮らし向きは豊かになっていきました。

今なお、経済的豊かさが重視されている面はありますが、それ以上に地球環境、文化、健康といった生活の質を高めることにも人々の目は向くようになりました。
また、1990年代後半になると、少子高齢化や働く女性の増加、個人の価値観の多様化などを背景に、働く者すべての家庭責任に配慮し、仕事と家庭の両立を支援するため、育児や介護に関する施策の充実が求められるようになりました。

このように、私たちが追求する「豊かさ」は時代とともに移り変わっていきます。そのため、それに合わせて経済・社会システムも変化する必要があり、同時に私たち自身のマインドも柔軟に変容させなければなりません。

【WLBの本質的な意義】

WLBはアメリカでいち早く浸透しました。
その背景には、多様化する価値観や社員の働き方のニーズに柔軟に対応することによって、社員の意欲を引き出したり、優秀な人材を確保・定着させたりすることができ、それが企業の成長につながるという考え方があります。

企業がWLBを推進する本質的な意義は、社員が仕事と私生活のバランスをとりながら、持てる能力を最大限に発揮するようサポートすることにあります。
具体的には、育児・介護・看護・メンタルヘルスといった心身や私生活上の不安材料に対する施策や、在宅勤務・フレックスタイム・学習や研修の費用負担といった、業務の生産性や個人のスキルを上げることを保障する施策などが挙げられます。
実際、このように社員の仕事と子育てを含めた生活の両立を支援することは、社員から高い勤労意欲を引き出すための労働条件として認められています。

これらの実績が明らかにされているにもかかわらず、長時間労働、不払い残業(サービス残業)といった課題は多くの企業、事業所で現存しています。こうした労働環境が、労働者自身の健康、生産性、そして労働者の家族にマイナスな影響を与えることは言うまでもありません。
子どもにとって、両親は最も身近な大人のロールモデルです。
長時間労働で疲弊する父親、仕事と育児の両立に悩む母親を子どもたちはどのような思いで見つめているのでしょうか。

現代の過酷で不条理な労働環境を見直すことは、労働者の健康、企業の業績、家族関係のすべてを改善する鍵となります。また、そのような意識を持つ個人が増えることは社会に変容をもたらし、経済の活性化にもつながります。

【女性の抱える問題】

長らく女性の年齢別労働者率のグラフは「M字型曲線」を描いてきました。

(https://mitsucari.com/blog/m_employment_reason/)

グラフがこのような形になるのは、結婚・出産・育児で一度仕事を辞め、数年後に子どもが大きくなった後に再就職する女性が多くいるためであり、メディアや国際比較などで長らく、日本に特徴的なワークスタイルの問題と指摘されていました。
一昔前に比べてこの形は改善傾向にあり、現在は「M字型」から「台形型」に近い形になっています。

しかし、キャリア形成にとって重要な時期にある女性が、結婚や出産を機に退職を余儀なくされるケースが少なくありません。また、こうした会社ではたとえ退職しなくても、育児休業復帰後に評価がマイナスからスタートし、その後の昇進や昇格に大きな影響を与えてしまうのです。
こうしたリスクを避けるために結婚や出産を諦めている(あるいは遅らせている)人もいます。

もう一つの問題が「男女間における賃金格差」です。
この主な原因として、管理職の女性が少ないこと、女性の平均勤続年数が短いこと、業務の難易度が違うことなどが挙げられます。
近年、女性の管理職比率は上昇しつつありますが、依然として先進国とのそれを比較すると大きな開きがあります。

既婚女性が家事や育児の大部分を担っており、フルタイムの仕事には就けない、またそうした女性を対象にした求人はアルバイトやパート等の非正規雇用がほとんどという現実があります。
そして、非正規雇用のほとんどが「有期雇用(期限に限りがある雇用)」です。これは短期の雇用契約の繰り返しになることから、ボーナスや退職金、定期昇給がなく、熟練度が挙がっても賃金は上がらず、正社員への登用もされない、といった過酷な待遇を受けます。

このように、日本では性別間における待遇の乖離が生じていることから、ILO条約適用勧告委員会や国連女性差別撤廃委員会からの是正勧告を受けています。

【男性の抱える問題】

男性の働き方に関する最大の問題としては、長時間労働が挙げられます。

言うまでもありませんが、長時間労働は健康に多大なマイナスな影響を与えます。近年、脳・心臓疾患で倒れている人が50代で増加しています。また、どの年代においても精神障害が増加していますが、特に働き盛りの30代のうつ病が深刻で、それを契機とした自殺者数も増加しています。

また、日本人男性の家事参画度は他の国と比較して非常に低いという結果も出ています。
この原因の一端となるのが長時間労働であり、その影響は家庭にも及びます。家族との時間は給料に反映されない度重なるサービス残業によって奪われ、子どもと接する時間は減り、母親の育児の孤立にも直結します。

つまり、男性のWLBを考えるということは、子どもやパートナー、あるいは家族や社会を考える契機でもあるのです。

「平成28年社会生活基本調査」の結果から~男性の育児・家事関連時間~
(内閣府男女共同参画局)
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_42/pdf/s1-2.pdf

【まとめ―WLBの実現のために】

本書では、WLBの重要なキーワードとして「経営者の強い意志」「運用の柔軟性」の二つを挙げています。

WLBの実現には、働く場所や時間、働き方の柔軟性を高めるために従来の仕事のスタイルを根本的に見直し、合理的で効率的な働き方を追求する必要があります。
とはいえ、会社に長時間いることが生産性につながるという思想は未だ根強く、家父長制といった社会的な背景から女性の管理職の増加にも歯止めがかかり、多くの企業が従来のやり方を変えられずにいます。

しかし、先にも述べたように、現代の過酷で不条理な労働環境を見直すことは、労働者の健康、企業の業績、家族関係のすべてを改善する鍵となります。
また、そのような意識を持つ個人が増えることは社会に変容をもたらし、経済の活性化にもつながります。

また、海外の企業では以前からフレックスタイムやリモートワークが導入されていましたが、日本ではそれほどの広がりを見せていませんでした。
そこで、今回の新型コロナウィルス情勢はその流れを変える契機となるかもしれません。在宅ワークが積極的に導入されることで毎日の通勤にかかる時間や労力のロスを省くことができ、その浮いた時間を個人の余暇や家族のために費やすことが可能になります。
かつてはネット環境も良くなかったことから、会議や打ち合わせができず業務における連絡調整が難しいとされていましたが、テクノロジーの発展により現代ではその点も大幅に改善されています。

日本の特徴的な雇用システムである終身雇用制度や年功序列賃金の思想は、グローバル化の波が押し寄せるなかで崩壊し、終焉に向かっています。それに伴い、女性が家庭で男性を支えるという構図も変容しつつあります。
こうした社会変化に伴い、企業での働き方も転換していかなければなりません。

性別を問わずに多様で自由な働き方・生き方を選択できる、男性であっても家事に参加できる、女性が仕事と家庭を両立できる、キャリアを一時中断してスキルアップに専念できる。
このような多様性を受け入れられる社会の構築のため、諸外国の取り組みを参考にしながら、日本式のWLB政策を確立することが求められているのだと思います。

参考までに、こちらもご覧ください。

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2018年6月から2年間ヨルダン滞在。パレスチナ難民キャンプを訪れ、生活調査を行う。大学では福祉・家族社会学を専攻し、保育士資格等を取得。在学中にはタイ北部にある、子ども達を人身取引の被害から守る施設で活動。趣味は独学(主に社会学、心理学、国際政治学)、読書、ランニング、料理。

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