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冷たい寂しさ

相変わらず気持ちが落ち込んでいる。

昨日は太刀打ちできないくらいの寂しさに襲われて、限界になって眠った。

目が覚めて限界ではなくなったが、寂しさはまだ私の生活の中に漂っている。

職場でも声を発する元気も、面白い話題も思いつかずに目線が下の方でふらついたまま仕事をしていた。

やってきてしまった月曜日と弥生。

気持ちも追い付かずに、ふらふらとした視線と上がらない気持ちの中である上司・Aさんが出社していないことに気がついた。

違う部署の方なので、お休みか午後に出社するのかななんて思っていた。

2階からやってきた上司が一言。「Aさん、しばらくお休みだから。3ヶ月くらい。病気療養、何かあったらBさんに話して。」

この、今後私と一つ上の先輩に何も質問させないようなこの一言は、メンタルが壊れかけていた私を完全に壊す最後の一撃だった。

私はその一言を聞いた瞬間に体が冷たくなっていく感じがした。そしてぐるぐると止まらない思考。「最後に会ったのは金曜日、元気そうだった。でもどこか悪かったのだろうか・・・」と考えだすとキリがなく、涙が出そうになった。

職場や仕事関係では泣かないと決めているので、涙がこぼれないように目を見開いて涙が引くのを待った。

同じ部署ではないものの、Aさんは私を職場関係のいろいろな場所へ連れて行ってくれた。私に運転させて、Aさんの取引先に同行させてくれたこともあった。私が今やっているところで基礎をしっかりやればこんなこともできるのかとわくわくさせてくれた。

そんなAさんだったけど、私がこんな気持ちや思考を止められないのには理由があった。

去年の夏に大好きだった俳優さんが突然自殺してしまった。ショックで、私は職場で一言も口を聞けないくらいに落ち込んで毎晩泣いていた時期があった。

少し泣かなくなったかな、と思った頃に私の運転でAさんと外出したことがあった。普段、割と仕事中に雑談を振ったり笑ったりしている私が急に大人しくなったことを気づいていたのだろう。大丈夫かと心配してくれた。

私は俳優さんの死を受け入れられていなくて、まだ夢だと思いたかった。だから、その話をされることが嫌だった。口から音声が言葉として意味を持って、現実として強制的に認めさせられたくなかったのだ。また、この人も話題作りで話しかけてきてるのかな・・・と思っていたが、そうではなかった。

そしてぽつりと、自分も傷つきやすいのだ、と。

私から見れば完璧で、上司からも後輩からも頼りにされていて、何も欠けていないように見えたAさんの人間の部分を見た気がした。

あの温度感と詳しい話の内容は私だけの記憶なのだ。だから私はあの上司の一言が最後の一撃に感じたのだろうし、体が冷えていく感覚を味わったのだろうし、涙が溢れそうになったのかもしれない。

あの瞬間、確かに冷たい車内で静かな寂しさが混じり合った。

(Photo by ainoaki、Thanks!)

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