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空が白い 青さは無く 雲が空にのさばってようが 微睡みは心地がいい 晴れていようが、曇っていようが 微睡みは心地がいい 結局 自分次第なのである

ウネメ
5年前

あの家 7

二人でクッキーを食べ終えると、私も庭掃除に加わり、ついでとばかりに境内も掃除すると、その流れで昼食を頂き、私の休日は終了した。 神社に来る時点で、ある程度は覚悟…

ウネメ
5年前

あの家 6

砂利を少し引き摺る足音は、幼い頃から変わっていない。 「庭の掃除、まだ終わってねぇから」 声に視線を向ければ、学校指定ジャージのパンツとTシャツを着崩した、悪ぶ…

ウネメ
5年前

あの家 5

家を見下ろしていると、足元にふわりとまとわりつく感触があり、目線を家から足元に移す。 驚きはしない。 この神社付近を根城にしている猫だと解っている。 普段からスカ…

ウネメ
5年前
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あの家 4

階段を登り切った先には、境内に続く真っ直ぐな道と、脇道に、地域資料等を管理している文庫へと続く道がある。 私は其方に迷わず足を向けた。 もう何年も歩む道に疑問も…

ウネメ
5年前
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あの家 3

あの家が見下ろせる場所がある。 今日はそこでお茶でもしようと、飲み物とクッキーを持参して向かっている。 季節は長い冬を終え、桜も葉桜になり、今は夏を待つ頃。 こう…

ウネメ
5年前
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あの家 2

家に帰宅後、家族にあの家の話をしようとして、やはり諦めた。 回答などとうに解っているから。 幼い頃からあの家が気になっていた私は、あの道を家族と通る度に何度とな…

ウネメ
5年前

あの家 1

電気が灯っていた。 灯っていたのだ、確かに。 遅くなった学校帰り、電光柱の少ない道を自転車で駆け抜けていると、あの家の電気が灯っていた。 夜になると見えなくなるよ…

ウネメ
5年前

615

空が白い
青さは無く
雲が空にのさばってようが
微睡みは心地がいい
晴れていようが、曇っていようが
微睡みは心地がいい

結局
自分次第なのである

あの家 7

二人でクッキーを食べ終えると、私も庭掃除に加わり、ついでとばかりに境内も掃除すると、その流れで昼食を頂き、私の休日は終了した。
神社に来る時点で、ある程度は覚悟していたが、今日は気分的に疲れた気がする。
幼馴染みの愚痴を聞いたからかもしれない。
それと、これからどんどん変わっていく祭りに、若干の不安と寂しさを感じているからか……。
どちらにしろ、疲れているのは変わりない。

来た道を、なんとなく足

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あの家 6

砂利を少し引き摺る足音は、幼い頃から変わっていない。

「庭の掃除、まだ終わってねぇから」

声に視線を向ければ、学校指定ジャージのパンツとTシャツを着崩した、悪ぶってるつもりの幼馴染みが居た。
手にはお気に入りの竹箒を握っているが、彼がお気に入りだと認めたことは無い。

それにしても、相変わらず勘が鋭い。

彼が言う事には、霊感の一つだという。
縁遠い私には解らないが、幼い頃からこの神社で手伝い

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あの家 5

家を見下ろしていると、足元にふわりとまとわりつく感触があり、目線を家から足元に移す。
驚きはしない。
この神社付近を根城にしている猫だと解っている。
普段からスカートしか履かない私の脚に、猫のモフっとした太い尻尾が巻き付いていた。
これでは動けないなと思いながらも、どうせすぐに元の場所に戻って行くことも知っているから、まぁ良いかと猫の頭を撫でてやった。

この猫。
普段はこの見晴らし台の隅にある、

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あの家 4

階段を登り切った先には、境内に続く真っ直ぐな道と、脇道に、地域資料等を管理している文庫へと続く道がある。
私は其方に迷わず足を向けた。

もう何年も歩む道に疑問も不安も期待もない。
いつも通りの光景が待っているだけだ。
でも、安堵はしているかもしれない。
ここに来ると、どこか空気が違うような気がするから。

脇道を少し行くと、向かって右側に六角形の赤い建物がある。
建物はそんなに大きくはないが

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あの家 3

あの家が見下ろせる場所がある。
今日はそこでお茶でもしようと、飲み物とクッキーを持参して向かっている。
季節は長い冬を終え、桜も葉桜になり、今は夏を待つ頃。
こうしてあっという間に何も無く日々が過ぎて行っている。
あの家も、そうなのだろう。

通り慣れた道を歩み、目的地が目の前に移る。
近所では有名な神社だ。
40段ほどある階段と、その上にある赤い鳥居を見上げて、鞄の取手を握り直す。

今日は此処

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あの家 2

家に帰宅後、家族にあの家の話をしようとして、やはり諦めた。
回答などとうに解っているから。

幼い頃からあの家が気になっていた私は、あの道を家族と通る度に何度となく聞いていたのだから。
そして、返ってくる言葉は、決まって、もう誰も住んでいないのだろうと、それだけだった。

あの家は隣町にあるから、近所付き合いもない。
幼馴染がその町に居るが、興味の無い返事ばかりが繰り返されるばかり。

あの家は、

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あの家 1

電気が灯っていた。
灯っていたのだ、確かに。
遅くなった学校帰り、電光柱の少ない道を自転車で駆け抜けていると、あの家の電気が灯っていた。
夜になると見えなくなるような、あの家に、灯りが。
驚きながらも、自転車の速度は下げずに家の前を走り抜けた。
それだけなのに、胸騒ぎがする。
いや、胸騒ぎではないかもしれない。
見てはいけないものを見てしまったような驚きが、恐れでもあり、好奇心でもあった。

あの

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