あの家 4

階段を登り切った先には、境内に続く真っ直ぐな道と、脇道に、地域資料等を管理している文庫へと続く道がある。
私は其方に迷わず足を向けた。

もう何年も歩む道に疑問も不安も期待もない。
いつも通りの光景が待っているだけだ。
でも、安堵はしているかもしれない。
ここに来ると、どこか空気が違うような気がするから。

脇道を少し行くと、向かって右側に六角形の赤い建物がある。
建物はそんなに大きくはないが、大正を思わせるモダンな造りは気に入っている。
その建物を通り過ぎると、今回の目的地である場所に到着だ。

建物と同じく六角形であるが、その場所は鳥籠のような見晴らし台。
赤い屋根と、赤い柱、中央には六角形の石で出来たテーブルと、石で固定された椅子が六個設置されている。
その椅子に座る前に、私は広がった景色を見渡す。

遠くには海があり、眼下には町並みがある。
そして、さらに下。
この見晴らし台の下に見えるのは、あの家だ。