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空が白い 青さは無く 雲が空にのさばってようが 微睡みは心地がいい 晴れていようが、曇っていようが 微睡みは心地がいい 結局 自分次第なのである

    • あの家 7

      二人でクッキーを食べ終えると、私も庭掃除に加わり、ついでとばかりに境内も掃除すると、その流れで昼食を頂き、私の休日は終了した。 神社に来る時点で、ある程度は覚悟していたが、今日は気分的に疲れた気がする。 幼馴染みの愚痴を聞いたからかもしれない。 それと、これからどんどん変わっていく祭りに、若干の不安と寂しさを感じているからか……。 どちらにしろ、疲れているのは変わりない。 来た道を、なんとなく足取り重く進んで行く。 今日もさり気なく、でも注意深くあの家を通り過ぎる。 ど

      • あの家 6

        砂利を少し引き摺る足音は、幼い頃から変わっていない。 「庭の掃除、まだ終わってねぇから」 声に視線を向ければ、学校指定ジャージのパンツとTシャツを着崩した、悪ぶってるつもりの幼馴染みが居た。 手にはお気に入りの竹箒を握っているが、彼がお気に入りだと認めたことは無い。 それにしても、相変わらず勘が鋭い。 彼が言う事には、霊感の一つだという。 縁遠い私には解らないが、幼い頃からこの神社で手伝いをし、仏教に触れ合ってきたので、そんなモノかと受け入れている。 「また、あの家

        • あの家 5

          家を見下ろしていると、足元にふわりとまとわりつく感触があり、目線を家から足元に移す。 驚きはしない。 この神社付近を根城にしている猫だと解っている。 普段からスカートしか履かない私の脚に、猫のモフっとした太い尻尾が巻き付いていた。 これでは動けないなと思いながらも、どうせすぐに元の場所に戻って行くことも知っているから、まぁ良いかと猫の頭を撫でてやった。 この猫。 普段はこの見晴らし台の隅にある、水溜まり程度の小さな池とも言えない池の主なのだ。 池には金魚が一匹しかおらず、猫

          あの家 4

          階段を登り切った先には、境内に続く真っ直ぐな道と、脇道に、地域資料等を管理している文庫へと続く道がある。 私は其方に迷わず足を向けた。 もう何年も歩む道に疑問も不安も期待もない。 いつも通りの光景が待っているだけだ。 でも、安堵はしているかもしれない。 ここに来ると、どこか空気が違うような気がするから。 脇道を少し行くと、向かって右側に六角形の赤い建物がある。 建物はそんなに大きくはないが、大正を思わせるモダンな造りは気に入っている。 その建物を通り過ぎると、今回の目

          あの家 4

          あの家 3

          あの家が見下ろせる場所がある。 今日はそこでお茶でもしようと、飲み物とクッキーを持参して向かっている。 季節は長い冬を終え、桜も葉桜になり、今は夏を待つ頃。 こうしてあっという間に何も無く日々が過ぎて行っている。 あの家も、そうなのだろう。 通り慣れた道を歩み、目的地が目の前に移る。 近所では有名な神社だ。 40段ほどある階段と、その上にある赤い鳥居を見上げて、鞄の取手を握り直す。 今日は此処でのんびりと過ごすのだ。 あの家を眼下に眺めながら。

          あの家 3

          あの家 2

          家に帰宅後、家族にあの家の話をしようとして、やはり諦めた。 回答などとうに解っているから。 幼い頃からあの家が気になっていた私は、あの道を家族と通る度に何度となく聞いていたのだから。 そして、返ってくる言葉は、決まって、もう誰も住んでいないのだろうと、それだけだった。 あの家は隣町にあるから、近所付き合いもない。 幼馴染がその町に居るが、興味の無い返事ばかりが繰り返されるばかり。 あの家は、あんなに変わった造りをしているのに、どうして誰も興味を示さないのか。 置き去り

          あの家 1

          電気が灯っていた。 灯っていたのだ、確かに。 遅くなった学校帰り、電光柱の少ない道を自転車で駆け抜けていると、あの家の電気が灯っていた。 夜になると見えなくなるような、あの家に、灯りが。 驚きながらも、自転車の速度は下げずに家の前を走り抜けた。 それだけなのに、胸騒ぎがする。 いや、胸騒ぎではないかもしれない。 見てはいけないものを見てしまったような驚きが、恐れでもあり、好奇心でもあった。 あの家は、ずっと昔からそこにあったから。 時間を止めたようなあの家は、誰も興味を示