あの家 3

あの家が見下ろせる場所がある。
今日はそこでお茶でもしようと、飲み物とクッキーを持参して向かっている。
季節は長い冬を終え、桜も葉桜になり、今は夏を待つ頃。
こうしてあっという間に何も無く日々が過ぎて行っている。
あの家も、そうなのだろう。

通り慣れた道を歩み、目的地が目の前に移る。
近所では有名な神社だ。
40段ほどある階段と、その上にある赤い鳥居を見上げて、鞄の取手を握り直す。

今日は此処でのんびりと過ごすのだ。
あの家を眼下に眺めながら。