守屋 秋冬

コロナ禍以降、50歳を過ぎてから詩を書き始めました。 日本現代詩人会会員。ネット詩誌…

守屋 秋冬

コロナ禍以降、50歳を過ぎてから詩を書き始めました。 日本現代詩人会会員。ネット詩誌『MY DEAR』同人。詩誌『冊』同人。

マガジン

  • 詩(投稿作品)

    ネット詩誌MY DEARなどへ投稿した詩をまとめました。 「1 息子の息子と息子」が一番古い作品(2021.8.19)となっており、投稿順に並んでいます。

  • 雑文まとめ

    「詩」以外の文章になります

最近の記事

詩57「ゴミの行方」

燃えるゴミ か 燃えないゴミ か 僕が 子供の頃は 分けることなく 近くのゴミ捨て場に 放り投げていた 紙なんかは 捨てることもなく 裏庭で 燃やしていた 高校生になって 祖父が亡くなり 人間も 燃える方なんだ と知った時の ざわつきは 僕が 燃やされたら 忘れるのかな 燃えるゴミ と 燃えないゴミ 普段は 悩むはずもない 分別が 時々 分からなくなる 残った骨 と 見上げた煙 を 思い出すのだ 燃えないゴミは 死ぬことが できないのだろうか 祖父も僕も 燃え

    • 詩56「冷えた朝」

      すってん ころりん なんて具合に 転ぶことはない と思っていたら すってん ころりん と転んだ 時間が 止った ような 時間を 超えた ような あっ と思ったら 地べたに 倒れていた 雪が降った 翌朝は 凍結に注意 昨晩の ニュースを 思い出す あまりに 見事な すってん ころりん だから みんな見惚れている 痛みはないが 恥ずかしさで 胸元から上が 紅潮していく すってん ころりん どっこいしょ どっこいしょ まで言わないと 物語は完結しない 昔話から 抜

      • 『えーえんとくちから』笹井宏之(ちくま文庫)を読んでいます

         『鬱の本』(点滅社)で池田彩乃さんが「形を持った灯りを撫でる」というエッセイを書かれており、不思議と心に残っている。池田さんが大切な存在として取り上げられているのが『えーえんとくちから』で、『BRUTUS』1008号「一行だけで」の短歌コーナーでも寺井奈緒美さんが笹井宏之の短歌を選んでいる。  よかったら絶望をしてくださいね きちんとあとを追いますからね  こちらも『えーえんとくちから』とのこと。  池田彩乃さんも寺井奈緒美さんも存じ上げないのだが、お二人を通じて笹井宏

        • 詩55「身体の声」

          36.4 36.3 36.9 36.2 36.5 37.0 36.4 君の検温記録だが やはり 酒を飲んだ翌朝は 少し高い 体温計を 脇にはさむなんて コロナ禍まで 年に数日あるかないか だったのに すっかりと 朝の日課となっている 少し熱っぽい やや体が重い そんな 身体の声が 聞こえなくなった 数字に 判断を 委ねて 身体を 頼らなくなったから 最近 よく 躓く 美味しいと 笑うことが なくなった 君は 数字に 支配され 感覚が どんどん 鈍くなり どんど

        詩57「ゴミの行方」

        マガジン

        • 詩(投稿作品)
          58本
        • 雑文まとめ
          3本

        記事

          詩54「行列」

          列ができているので 並んでみたら 僕の後ろにも どんどんと 列ができていく 前後の人も 落ち着きがないから みんな同じなのかもしれない 理由も分からず 並ぶ者たちで 列がのびていく この先に 何があるのか 後ろは どこまで 続くのか 気になるから 抜けるに 抜けられない パンダ らしいよ 前の方から 波のように 聞こえてくる そんな訳は ないのだが パンダ らしいよ 僕も 独り言する スマホを 取り出し  パンダの列に  並んでいるところ 嘘を呟くが

          詩54「行列」

          詩53「すとんとずどん」

          すとん と落ちる 音が した 肚落ち した 音だ ずどん と落ちる 音が した 滑り落ちた 雪の 音だ ずどん では 重すぎる すとん なら 腹八分目 すとん すとん と おとん や おかん に 言われたことが 同じ年齢になって ようやく 肚落ち するようになった ずどん と心を撃ち抜く 強さに憧れ 反発し 聞こえぬふりをしていたのに 大事なことは どこかに積もり 時がくれば ゆっくりと 落ちるのだろう 人生は 劇的でなく 小さな 積み重ね おはようと言われ

          詩53「すとんとずどん」

          詩52「再会」

          窓の外で しきりに 鳥が囀る あまりに しつこいので ベランダを見遣ると 雨上がりの夕陽に染まった 胸元緑 全身茶の鳥が 小刻みに首を傾げ 音ズレしながら鳴く 目が合うと ぴたりと 動きが止む あぁ あなた でしたか 夢にも現れないから 忘れられたと思っていたら 鳥になったとは 驚かそうと思ったくせに 気づかれなかったらどうしようと心配して 自分の好きな色を胸元に入れるなんて そんなことをしなくても わたしは分かるのに 音痴だったから 鳥になっても やはり音ズレ

          詩52「再会」

          詩51「今日も洗濯日和です~17歳」

          今日も とても きれいな 洗濯日和です 僕より ワンサイズ大きな 白いワイシャツの 皺を伸ばし広げて ハンガーにかける 君は 今日で十七歳になり 僕は 見上げるようになった 僕が パパになった日 僕が 洗濯が好きになった日 あれから 十七年 洗濯は すっかりと 僕の役割になった 最近は いつも 不機嫌顔で 会話もないが パパも そうだったから 気にしていない でも ママには 優しくしろよ 冬なのに 君が 生まれた日は いつも 良く晴れて 十七勝一敗 今日も と

          詩51「今日も洗濯日和です~17歳」

          詩50「今日は洗濯日和です」

          とても きれいな 洗濯日和です 酔ってもいないのに 歌を口ずさみ 洗濯物を干しています 君は 生まれたばかりで 僕は パパになったばかり これから 洗濯日和には 毎回思い出すだろう 君が 生まれた朝 僕が パパになった朝 君のママから おろしたてのタオルを 洗うように言われたんだ 真っ白いタオルを 七枚干し終え 太陽に向かって 大きく背伸びする 洗濯が 嫌いだった男が 洗濯が 好きになった朝 それだけでも 君が 生まれた意味はある 今日は とても きれいな 洗

          詩50「今日は洗濯日和です」

          詩49「転んだ老婆」

          老婆が 目の前で 転んで動けない みんな 見て見ぬふりで 歩き去っていく 当然だ 会社に遅れてしまう 僕が ここで 行き去れば 誰かが いつか 通報するだろうが いつになるのかは 分からない 足を 挫いたようで 立ち上がることも 難しそうだ 会社に 遅れると 連絡を入れ 背負って 派出所を目指す 背中に 名前が書かれた 老婆は 悪いねぇ とあっさり 僕の背中に乗った アツさん、ありがとうねぇ アツさん、ありがとうねぇ と耳元で繰り返す 旦那さんなのか 息子さん

          詩49「転んだ老婆」

          詩48「愛の欠片」

          愛の欠片が あちらこちらに 落ちている 拾ってみては 向きを変えながら 力の限り 嵌め込もうとするが どれも合わない 君の欠片 ではないようだ 怒りに 任せて アスファルトに 叩きつける 愛の欠片は 強いから 割れない 余計に 腹立たしくなり 踏みつけるが びくともしない これほど 硬いのに 愛の欠片は 至るところに 落ちている 完全な 愛は 壊れやすいのだが 欠片になると 強くなるのだ 欠片を 戻すことは できないのに 君は ひたすら試す 壊れた 理由も

          詩48「愛の欠片」

          詩47「腐ったみかん」

          買ったばかりの みかんが ひとつ腐っていた ネットに 詰め込まれた Mサイズみかん10個 のうちの1個 炬燵で みかんを むきながら テレビを見る 何個腐っていたら スーパーに 文句を言いに行く? 10個のうち 3個かしら 左に同じ 普段は 気の合わない夫婦なのに 珍しく意見が合う たぶん 経験による 面倒回避なのだと思う 今までに 2個はあったが さすがに3個はなかった 3個も腐っていたら さすがに 買う段で気づくはず いずれにしても スーパーに 文句を

          詩47「腐ったみかん」

          『冊』合評会(2024.6.23)

           昨日は渋谷で『冊』Vol.69の合評会が開催されました。    参加は9名でした。参加同人の詩について、全員が感想や疑問、あるいは改善の指摘を述べ合います。一詩あたり20分程度ですが、一行をめぐって見解が違って議論が白熱することもあり、思いのほか長引くことも。同じ詩であっても、読み方、感じ方が違うのは、とても面白いです。間違った解釈をしても許されますし、諸先輩の詩に対して疑問箇所を指摘してもきちんと受け止めてくれます。同人になってから2回目の合評会ですが、とてもリラックスし

          『冊』合評会(2024.6.23)

          詩46「夕飯が決まる過程」

          夕飯は なにがいい? と聞いたら 拉麺とか 鮨とか 少し考えて イタリアンとか 鰻とか 更に考え込んで カレーとか フレンチとか とかとか女の「とか」が始まる 僕は 彼女の「とか」を聞くのが とても好きなのだ もう少し聞きたいので 粘ることにする 焼鳥なんてどう? 焼鳥って レバーとか ハツとか モツとか カシラとか? また「とか」が始まる 僕は特に食べたいものがないので 何でもいいのだ ただ こうやって「とかとか」を聞いていたいだけ 焼鳥より 唐揚

          詩46「夕飯が決まる過程」

          詩45「カナブンと私」

          足元に カナブンが 転がっている 妻が出て行った朝から ずっと 仰向けのまま 夏の終わり 蝉が騒がしかった あの日から 弔いもせず 放ってある 死骸を なぜか 捨てようとは 思わない カナブンに とっては 大いに 迷惑だろう もう いい加減 捨てて欲しいのか 近くの 地中に 埋めて欲しいのか あるいは このまま 冬を越したいのか 毎朝 靴を履きながら カナブンに 話しかけるが 返答はない 夏の終わりに 雪国の実家へ 戻ったきり 妻は 帰って来ない このま

          詩45「カナブンと私」

          詩44「レシート問題」

          コンビニで レシートを受け取ったら もらってどうするんっすか? と部下から聞かれ 言葉が出てこない 確かに 財布に溜まったら 捨てるだけなのだ レジの近くに置かれた 回収箱に捨てればいいのに 捨てられないのは 「何か」あった時のため 商品に問題があり 返品したり 交換してもらう時に レシートが必要になる 食あたりした時に 何を食べたのか 思い出す手がかりとして レシートは有効だ もらう理由を 捨てない理由を 俺は考えて はたと気づく 商品に問題があったことも 食あ

          詩44「レシート問題」