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詩77「女と男」

スーパーで買い物をしていると
同年代の女性が
近寄って来て
僕の顔をじっと見る

そして
何も言わずに
歩き去って行く

誰かと
見間違いをしたようだ

思い当たることはなかったが
とりあえず笑ったので
何だか損した気分になる

誰かに見間違われることが
昔から多い

大野君でしょ?
名前を呼ばれて
いえ、違います
丁寧に否定したのに
嘘、大野君だよね?
否定を否定された

妻によれば
特徴のない
角度によってどうにでも見える顔で
話し掛けやすい雰囲気を醸し出している
僕に問題があるそうだ

どうせなら
大野君になってあげればいいのに
勇気をもって声を掛けたのに
否定されるのが私達は一番嫌なの
営業なんだから
話くらい合わせられるでしょ?

見ず知らずの見間違い話を聞いて
共感する妻は
たぶん
同じように声を掛けたことがあるに違いない

特徴のない顔に罪はないので
整形する必要はない
話しやすい雰囲気は営業に不可欠なので
不機嫌になる必要もない

見間違えられた時
どう応じれば
正解なのか分からなくなる

もしかして? と思っても
僕は話し掛けることはないので
勇気は認めるが
どう考えても
見間違えられる側に
落ち度があるとは思えないのだが
見当違いだろうか?

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