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詩67「目醒め」

ほんの
少しだけ
優しさを
分けて下さい

改札を
出たら
声を
かけられた

募金箱を
持たない
黒髪の少女は
泳ぐ目を
捕らえて射抜く

ほんの
少しだけ
優しさを
分けて欲しいのは
僕のほうです

思わず口にすると
ぽっかり
足元に
大きな穴が開いた

 でも
  なぜか
   落ちない

少女は
小さく頷き
長い髪を揺らして

 代りに
  落ちた

これから
生活のために
老いた人を騙し
傷つけるはずだったけど
急に
怖くなって
改札に戻る

与えられた
スマホは
ゴミ箱に捨てて
逃げることにする

少女がくれた
とても
大きな
優しさを胸に
どこまでも

電車に飛び乗り
膝に手を置いたら
少女が
仏壇の母と 
重なった  

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