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詩65「日曜日の昼下がり」

跳んで
揺れて
ペンライトを振る

窓の外
男女比半々
平均年齢二十五歳前後

僕は
ショッピングモールの
カフェでヘルシーランチを食べている

屋上のイベント会場で
何かが始まったのだが
店からは
観客しか見えない

たぶん
マイナーな
アイドルを推す
ファンの集まりだと思われる

跳んで
揺れて
ペンライトを振る

交わることのない人種
との壁が
段々となくなり
彼らの一挙一動に心奪われる

ステージのアイドルは
まったく見えないのに
観客の熱に引き込まれる

とにかく
とても
楽しそうなのだ

窓を突き破り
僕も
一緒に
跳んで
揺れて
ペンライトを振りたくなる

応援されている
アイドルは
どんなにうれしいことか

応援される人
応援する人
応援する人を見ている人

誰もが
幸せになる
楽しい時間は
あっという間に
三十分で終わる

観客は
何事もなかったかのように
ペンライトを差した
リュックを担ぎ
会場を
あっさりと後にして
ショッピングモールに消えて行く

高揚感と
疲労感で
小腹が空いた僕は
フルーツタルトを追加注文して
コーヒーのお代わりをする 

来月の健康診断に向けて
ヘルシーランチを
選んだ自分が馬鹿らしくなる

跳んで
揺れて
ペンライトを振る

誤魔化しではなく
堂々と
人生を楽しめ
と教えられた
日曜日の昼下がり

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