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詩72「聴き屋」

その人は
僕の話を
聴きながら
涙を流す

泣きたいのは
僕なのに

不可思議な
商売だと思う

話を聴く
だけで
お金を稼ぐ

医師でも
なければ
カウンセラーでも
なく
占い師や
坊さんでもない

ただの
聴き屋

僕の話を聴いて
泣き
笑い
怒るけど
癒しの言葉も
救いの言葉も
発することはない

なのに
通い続ける
僕も
不可思議だが
予約も難しいくらいに
繁盛している

専門医に
話してみた
妻に
話してみた
壁に
話してみた

けれど
気づけば
聴き屋
に戻る

上からでもなく
憐れみでもない
目線がいいのだ

聴き屋と
向き合うと
僕は
丸裸になって
話し掛けている

最近
聴き屋に
通う回数が減った

きっと
聴き屋が
効いたからだ

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