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詩73「風と父と」

風に
背中を押され
歩く朝

父を
感じる

幼稚園
小学校
転校した小学校

いつも
門の前で
立ち竦んだ

手をつなぎ
みんなが
追い越していくのを
二人で見送り

さぁ 行っておいで

手を離した父が
私の背中を
優しく押す

きっかけは
手を握る力か
あるいは
手の平の汗か

まるで
風に
背中を押されたように
前へ進めるのだ

父は
私を良く見て
心から理解してくれた

中学校
高校
大学
そして入社
転々とした会社

私はひとり
立ち竦み
父の声と手を
背中に感じて
前に進んだ

息子達は
手がかからなかったから
私の出番は
なかった

定年が近づいても
時折
立ち竦む日がある

そんな日は
決まって
優しい風が
吹くのだ

亡くなった父は
呆れているだろうが
風になって
背中を押してくれる

まもなく
父の人生を
超える

そろそろ
ひとり立ち
しなければ

今朝も
背中に風を
感じながら
出社した

父の人生を
超えても
父は超えられそうにない

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