読書日記232【シアター2】
有川浩さんの作品。劇団を運営する弟の春川巧が資金難になって、兄の司がその借金300万円の肩代わりをし小劇団の再建に乗り出していく……
自分の読書日記にも前著である『シアター』についても書いてあった。
まあ面白い。著者特有というか登場人物の躍動というか心理描写の上手さがすごく現れている。最初の作品はどう劇団を再生させるかがテーマだったのに対して、今回は演じる役者の葛藤や脚本や演出のこだわりなどがメインになっている。
あとがきには主人公の一人である兄の司が動かないためだと書かれているけど、他の団員やもう一人の主人公の弟の巧の劇団員ぶりがしっかりと書かれていて劇団の運営の裏側を除いている感が前作以上に増している。
登場人物も多いといっても物語的な「仕分け」もきちんとされているので、感情移入しやすい。昔なら映像化されてドラマ化なんてこともあっただろうなと思える。コロナが終わって劇団とかの活動も活発になってきたので、こんな作品が映像化されていくかもしれない……と思わせてくれる。
巧のほうは脚本がうまく書けるようになっていく。劇団員で人気がでてきた声優の羽田千歳はアンチの誹謗中傷に傷つき、そして劇団の仲間に癒されてたくましくなっていく。司との恋バナも発展しそうで話は盛り上がる。
劇団の看板女優の早瀬牧子も女優として認められ客演(他の劇団の役を演じる)の仕事も増えていく。そこで巧は女優としてでなく牧子を意識し始める。(こっちも恋バナです)
劇団がうまくいく中で借金返済の時間は刻々と近づいていく。大きなシアター(劇団)を借りて公演をする実力はあるが、劇場をおさえるためには新たな資金もいる。そのために司は機転をきかせて新しい計画を立ち上げる。
続編の良さというか登場人物のキャラクターを知っているので、感情移入がしやすいのと著者の振り切って書いてしまう感が相まって一気に読んでしまった。もう文庫のほうは絶版になってしまっているのかな?
あとがきで3を予告していたんだけど、結局書かないことになってしまったみたいで、それを著者とおぼしき人が(これも経緯があるのですが)書いている。
ネットを駆使して書き始めた初期の作家だったし、Twitterなんかもよくしていたのでこういう結果になったのは寂しい気がする。
否定的な意見というか批評って基本的に作品の否定であることが多い。noteでも人気のある宇野常寛さんなんかも村上春樹を批評している。
内田樹さんが語っているけど、村上春樹さんは作家デビューした後の純文学批評家の評価は以上に低かったと……
確かに、僕の高校の時の国語の先生は短歌の俵万智の先輩だったと自慢したうえで「村上春樹は終わるね」と言った。(『サラダ記念日』という本が1987.5.8に出版されて200万部のベストセラーになった)
僕が課題で好きな作家に村上春樹さんを挙げたことへの返答だったんだけど、その半年後ぐらいに『ノルウェイの森』が大ヒットしてからそんなことはなかったかの如く振舞っていた。(『ノルウェイの森』の出版は1987.9.4)
僕はその時に『ノルウェイの森』を新刊で買うお金がなかったけど、運送屋でバイトしているときの先輩が貸してくれた。(その時はありがとう)だいぶ経って図書館でも読めるようになったけど、その後に直ぐに出版された『ダンス・ダンス・ダンス』まで貸してもらった。
批評本を読んでるのってインテリというか文芸界や群像などの雑誌を読んでいる人が多かったので、読んでる人からしたらどこ吹く風だった。
ただ、村上春樹さんは傷ついていていたことをエッセイとかにも書いているから、いいことではないなとも思う。(あくまで個人的な意見です。)
余談なんだけど、何故か今(2023.6.23現在)に「村上春樹 批評本」と検索すると13番目に僕の『読書日記230』が出ますw 何故に?w
有川ひろさんの『シアター』の続編を読んでみたいなと思った。
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