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ボク、社会が得意だから法学部目指そうかな?

 法学部とはどんな学部でしょうか。法学部とは法律を中心に学習する学部です。では、法律学とはいかなる学問なのでしょうか。今回、小中高のどの科目に一番似ているのかという観点から法律学について考えていきたいと思います。

 題名の通り、よくよく法律学は小中高の社会科に一番近しいとされ、これが大学入学後の実際の法律の学習内容とのギャップを生み、結果、法律学って想像してたものと違ったという人を生み出している気がします。

 では、なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。答えは法律学が社会科と同じく暗記ゲーだと思われているからだと思います。そう、法律学は暗記だけでは太刀打ちできないのです。

 ここで、法律学って膨大な条文暗記をする学問じゃないの?と考えられている方は「こいつ、何を言っているんだ」と疑問に思っていることでしょう。法律学は暗記だけではないことを法律学はどの教科に似ているかを説明することによって知っていただけれるとうれしいです。

 私は、法律学は数学、さらに言うと証明の分野に一番近しいと考えています。なぜ、そう考えているのか。実際の答案を例にして説明します。

 数学の証明の答案例は以下の通りになると思います。

「(1)△ABC≡△DEFを証明する。(2)~よりAB=DE, AC=DF, ・・・より∠BAC=∠EDF よって、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。(3)したがって、△ABC≡△DEF」

 一方、法律学の答案例は以下の通りになります。

「(1)XのOOした行為に傷害罪(204条)が成立するか。(2)【問題文中の状況】より人の生理的機能を障害しており、Xに傷害罪の実行行為が認められる。[中略](3)したがって、XのOOした行為に傷害罪が成立し、同罪一罪の罪責を負う。」

 どうでしょうか、すごく似ていませんか。数学の証明も法律学も、まず、(1)最初に何を証明するのか示しています。次に、(2)問題文中から必要な情報のみ抜き出してそれが何を意味するのか説明しています。最後に、(3)結論を述べています。

 このように、数学の証明と法律学の答案構成は非常に似ているのです。

 また、数学の試験で証明問題が出題されたときに、教科書で扱った問題と全く同じ問題が出ることはないでしょう。おそらく教科書の例題をどこかしら変えた問題が出題されると思います。同様に、法律学の試験でも講義内で扱った判例と全く同じ問題は出題されず、その判例を一部だけ改変した問題が出題されるのです。

 さらに、法律系の試験の最難関たる司法試験の論文式試験では、六法全書の使用が許可されています。数学の定期テストで公式集の持ち込みが不可とされているのと比べると、法律学がいかに暗記偏重でないことが伝わると思います。

 しかしながら、先ほどから私は、法律学は「暗記『だけ』ではない」とか、「暗記偏重ではない」と述べています。そう、六法全書を試験中に使えるからといって法律学は決して暗記不要ではありません。

 では、何を覚えなければならないのか。先ほど出てきた判例の内容や条文化されていない(条文に記されていない)ルール、各条文の立法趣旨などが挙げられます。いずれにしろ、暗記内容が多いことには変わりないのです。(私もここで苦労しています。泣)

 まとめますと、法律学における暗記とは、決して法律学の本質ではなく、法律学を学ぶ上でのあくまで大前提、されど大前提といった感じでしょうか。そして、学部2年生がこれを語るのも恐れ多いですが、法律学の本質とは、条文(公式)や暗記した事項をいかにうまく使いこなすかという点にあると感じています。

 最後になりますが、特に受験生の方は法律学を決して題名のセリフのように間違って理解した状態で学部を選び、せっかくの学生生活で後悔をしないようにしてもらえたらと思います。

 そして、それでも法律学を学びたいと思ってくださった方、これを知って逆に法律に興味がわいてきた方、大歓迎ですよ!法律学はとても楽しいのでぜひ法学部を目指してみてください。応援しています!また、既に大学生の方及び既卒の方も、ぜひ法律系の資格にチャレンジしてみてください。法律って社会生活を送る上で役に立ちますし、勉強していてすごく楽しいですから!


追記:もちろん社会科(政治経済)が好きだという動機で法学部を目指すことも良いとは思います。事実、私も社会科好きであったことが志望動機の一つでした。重要なのは社会科自体が好きなのか、それとも単に暗記が得意なだけなのか、という点にあると思います。
 ただ、そうはいっても社会科に法律学という分野はなかったと思います。それゆえ、法律学が小中高の社会科の延長線上に位置しているわけでは決してないので、暗記云々抜きにしてもなお社会科と法律学では学習内容が全く異なることは留意しておくべきだと思います。(2022/6/5)

冒頭写真:みんなのフォトギャラリーより引用(2022/6/4)



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執筆する際は私個人の話も交えつつ、大学生の1年間のイベントを知って頂けるよう、大学生活全般を客観的に描写することを意識しました。
意外にも、大学生活を月毎にまとめた記事はネット上に少なく、大学生の年間行事を知る方法はあまりないのではないかと感じ、本マガジン企画を始めました。


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