三世代、台所に立つ。
昨日は姪っ子が実家に泊まりに来ていたので晩御飯を一緒にどうかと誘われた。
一昨日もお邪魔したので二日連続になるが楽しそうなことには参加したいので行きますと答えた。
すると姪っ子からLINEがきて今日は私がご飯を作るというので手伝おうか?と聞くと、うんと返事が返ってきた。
だったらまずは買い物だなと思って妻と一緒に実家に姪っ子を迎えに行った。
確か先月も出会った気がするが元気そうだった。
二人で行きつけのスーパーに行って何を作ろうかと言いながら店内を一周した。
精肉コーナーに行くとひき肉が三割引きだったのでこれを使おうという話になった。
餃子、シュウマイ、ハンバーグ…とあれこれ候補が出たが、姪っ子がメンチカツを食べたいと言うのでそうすることにした。
青果コーナーでキャベツを一玉買って後の材料もそろえた。
それからお酒を買って実家に戻った。
時計の針を見ると四時を少し回ったところ。
じゃあ早速やりますかと言って父のエプロンを借りてキュッと引き締めた。
まずは包丁仕事。
私がキャベツをみじん切りにしている間に姪っ子には玉ねぎを刻んでもらった。
目に染みるのか涙がポロポロ出ていたので悲しいの?と聞くともう、冗談はやめてと少しムッとされた。
ごめんごめんと軽く謝りながら刻んだ野菜に塩を軽く振って水分を出しておく。
塩が馴染むまでの間にひき肉を練っていく。
野菜と合わせる前にねっとりと粘りが出るまでよく練ると調味料との味の絡みが良くなるし、滑らかな口当たりになる。
ひき肉の全体が白っぽくなったら水分を抜いた野菜を合わせる。
下味をウスターソース、塩こしょうでつけたら卵、パン粉、片栗粉を加えて再び練っていく。
全体がしっかり混ざったらいったん冷蔵庫に肉をしまってしばらく冷やす。
その間に副菜を作っていく。
母が煮しめを作っていたのでとりあえず一品はクリアー。
姪っ子に何か作る?と聞いたらキャベツを使うと答えた。
手伝おうか?と聞くといい、自分でやるからと言う。
ふむ、ではお手並み拝見と思って見ているとキャベツを一枚ずつ剥がして水で洗っていた。
それから芯の固い部分を落としてレンジでチン。
ツナ缶を開けてみじん切りの玉ねぎと卵、を合わせてよく混ぜる。
味付けは塩コショウと麺つゆ。
レンチンで加熱が終わってしんなりしたキャベツでツナ種を包んでそれをごま油を敷いたフライパンでこんがり焼いていた。
香ばしい匂いがしたらロールツナの出来上がり。
私は初めて見る料理だったが、最近友達から聞いて覚えたらしい。
これで一品出来たので私は父の畑で採れたトマトをサラダにした。
トマトを輪切りにして上から塩とニンニクスライス、オリーブオイルをかけただけのごくシンプルなもの。
メンチカツの種がよく冷えたら成形して揚げていく。
パン粉をつける前の段階を省くためにバッター液を作った。
卵、小麦粉、水を合わせたものだが揚げ物の手間を省くためには欠かせない。
私がバッター液にくぐらせて母と姪っ子がパン粉をつける役になった。
冷蔵庫で肉種を冷やしているのでまとめやすくて綺麗に成型できる。
バッター液につける、パン粉をまぶすという工程を流れ作業でサクサク進めた。
手を動かしながら姪っ子と久しぶりにしっかりと話した。
ものの十分でパン粉をつけ終わったのでいよいよ揚げていく。
深いフライパンにサラダ油をトプトプと注いで火を点ける。
実家のコンロは自動で火力調整が出来る優れモノなので170度に設定して油が温まるのを待った。
しばらくしてコンロがピーと鳴ったのでメンチカツを油に滑らせる。
ショワーと揚がっていくのを見ているのは単純に楽しい。
五分くらいかけて火が通ったら油切り用の新聞紙に乗せる。
二回目からは姪っ子に揚げてもらった。
その間に母と副菜をお皿に盛ったり居間に運んだりした。
居間では妻と父がケーブルテレビの麻雀番組を熱心に観ていた。
はいはい、ご飯だよーと私が言うと父はいそいそとお酒の準備を始めた。
妻も手伝おうかと聞いてきたが、あまり広くない台所に大人三人いるだけでギュウギュウだからお父さんの相手をお願いと言うと分かったと敬礼された。
そのうちに残りのメンチカツも揚げ終わったのでみんなで居間に集まって乾杯した。
姪っ子はまだ19歳なのでお酒は飲めない。
早くお酒飲んでみたいなぁと言いながらコーラを口にしていた。
食卓にはメンチカツ、ロールツナ、煮しめ、トマトサラダとご馳走が並んだ。
ビールをクピッと飲みながらサラダを食べる。
朝捥ぎの鮮度抜群のトマトは甘酸っぱくて季節の味だなと思った。
お次はロールツナを食べる。
キャベツをしっかり焼いているの焦げ目があってそれが香ばしい味を出している。
私はツナ好きなのでこの料理を気に入った。
ちょっとマヨネーズをつけて食べてと姪っ子が言うのでその通りにするとツナマヨサラダになってこれはつまみにもってこいだった。
妻の口にもあったようで美味しいよと姪っ子をほめていた。
それからメインのメンチカツを食べる。
ウスターソースをジャブジャブかけて齧りつく。
まだ熱くて口の中を火傷しそうになった。
ジューシーな肉汁があふれて、野菜の甘みが伝わってくる。
しっかり捏ねたのでお肉がしっとりしていて食べ応えも十分だった。
特に父は気に入ったらしく姪っ子になぁ、将来コックになるか?と冗談を飛ばしていた。
そうだねぇ、じぃじがスポンサーになってくれたらいいよと切り返して楽しそうにウハハと笑っていた。
母の手製の煮しめもくどくなりがちな揚げ物ご飯の中であっさりとしておりよく箸が伸びていた。
みんなで食べて飲んでお腹いっぱいになったのでご馳走様。
母も孫と一緒に料理できたのは楽しかったらしくまたやろうねと言っていた。
食後にコーヒーを飲んでまったりしてからおいとました。
余ったメンチカツをお土産にもらったのでお昼にでも食べようと思う。
いや、姪っ子って可愛いですね。
今度会えるのはお盆かなぁ。
何だすぐじゃないか。
さぁ、今晩は何を食べようかな。
いや、まだ朝…。
私が一日中食べる事ばかり感がているのは両親譲りである。
姪っ子も色気より食い気の気配が濃厚なので我が一族の食いしん坊の系譜は連綿と続いていきそうである。
それはそれで頼もしい。
いやはやご馳走様でした。
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