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『ゴジラ -1.0』弱ネタバレ有り感想

『シン・ゴジラ』以来7年ぶりの純国産ゴジラ。監督は山崎貴。
この初報を聴いたとき、期待感より先に不安が襲った方も多いと思うのですが、自分も完全にその一人でした。

興行収入80億を超えた『シン・ゴジラ』は、庵野秀明氏によるシン・シリーズの記念すべき第1作であるとともに数々のサプライズで、生粋のゴジラファンである自分にとっても人生の一作になりました。そんな『シン・ゴジラ』の次の多大なる期待感を背負っての国産ゴジラが、Your何とかとかSTAND BY何とかとかでアレな評判がたってしまった山崎貴監督とは。初報が公開されるときに「ゴジ泣き」がトレンドするなど、世間的な不安感は共通していたものがあると思います。


ふたを開けてみたらそんな不安感や前評判を完全にぶち壊す、超快作でした。

もう笑ってしまうくらいの手の平クルーな好評価の嵐。興行収入も調子がよく、山崎監督もガッツポーズなのではないでしょうか。本当、自分を含めて不安がってた人間は全員山崎監督に土下座したほうが良い。本作のゴジラの被害者よろしく、虫けらのように踏みつぶされるがよい。

まず何よりも、ゴジラが強い・怖い・格好いい。『シン・ゴジラ』もたいがいでしたが、今作のゴジラは何というかより一層の生々しさと容赦なさがすごい。主人公にトラウマを植え付ける冒頭の襲撃シーン、ゴジラがまだ小さかったことがあいまって逆に生々しい。スプラッター映画のような生々しい殺戮描写や死体描写を見せているわけではないけど、きっとこんな風になってるんだろうなというのが想像できる恐ろしさ。そら目の前で見せつけられる主人公はあんなの一生トラウマになるし、銀座に至ってはもう加減しろバカと言いたくなる暴れっぷり。一番近いので行ったらGMKゴジラでしょうか。


そんな怖いゴジラですが、一方でもうどうしようもなくカッコいいんです。今日公式からも発表になった放射熱戦のシーンですが、通称内閣総辞職ビーム(というか完全にジェネリック・エヴァだ)で度肝を抜かれたシン・ゴジラの放射熱戦とは違い、きちんと正統派で、でもそんなんありかよ⁉って言わしめる男の子心がヒャッハーする最高のシークエンスになっていました。庵野のやりたい放題の後によくこれを作ったものです。心の中で拍手喝采でした。バンダイのフィギュア担当が泣いて喜んでたと思いますよ。

っていうのとあとはやはりクライマックスの海上戦ですね。ゴジラのテーマをBGMに軍艦・戦闘機が遠方のゴジラに向かっていくシーンは、もう男の子心がストップ高。これこれ、これなんだよ。ゴジラの真骨頂は。結局人間は、絶望しても立ち上がって、力を合わせて、強大な敵に立ち向かうシーンに興奮するもんなんすよ。ていうか絶対山崎貴監督もここの絵を撮りたかったんでしょうね。本当に最高でした。

正直ゴジラとゴジラ戦が格好良すぎたのでそれだけで満点なのですが、本作はやはりテーマが「戦後」なこともあって、かなり心に来るものはありました。人間ドラマ部分もちょっと長かったけど悪くなかったんじゃないでしょうか。ていうか銀座のシーンが本当につらい。ゴジラの放射熱戦、あれもろ原爆の暗喩に感じました。キノコ雲こそ出てなかったけど黒い雨浴びてたし、数万人が一瞬にして命をなくすあたりとかも。

ボロボロになりながらも一生懸命生きようとしている微力な人間たちを圧倒的な力で虐殺する不条理。そこへのどうしようもない絶望。怒り。死んでしまったほうが楽な中、それでも生きる。無力でも生きて、抗う。『シン・ゴジラ』が徹底して「もし現代日本にゴジラが現れたら、日本はどう戦うのか」という現代の日本組織 vs ゴジラ(虚構)に主眼を置いているのに対して、本作はそのキャッチコピーの通り、日本人の逃れられないアイデンティティ(敗戦国・原爆への恐怖)に対して、真っ向から「抗う」という苦しみを肯定する映画のように思えました。それは日本に生まれた身として、ものすごく心に来るものでした。特撮でこんな感覚になったの、はじめてかもしれない。


…なんだかやはりものすごい傑作を見てしまった気がしてきました。庵野監督が対談で言っていた通りツッコミどころはあるんですけどね。それでも『シン・ゴジラ』が大成功した後の極大なプレッシャーの中で、きちんとゴジラの原点に立ち返って(省略しましたけど本作、オリジナルの54年ゴジラのオマージュがめちゃくちゃ多いです)この傑作を送り出した山崎監督に最大の謝辞を。最後に一言。「Your ゴジラ」や「STAND BY ME ゴジラ」にしないでくれて本当にありがとうございました!!!!!(こんだけネタにされてりゃもういいだろう本人的にも)

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