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【旅blog】八重山諸島周遊の旅6

8月12日(4日目)

7時起床。
部屋を出ると、もう一人の宿泊者である女性が玄関に置いてある全身鏡で化粧をしていた。

私に気付くと「おはよ!」と笑って声を掛けてくれた。女性は朝ごはんに島豆腐をくれて、2人で昨晩と同じように軒先で食べた。

9:00のマングローブツアーを申し込む為に2人は宿をチェックアウトし、港へ向かう。

マングローブツアーは30人ほど乗れる船で両側にマングローブの茂る川を渡るというものだった。料金は1,500円だ。

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マングローブツアーの最後は船から降りて、サキシマスオウノキという大きな木を眺めるというもの。

私と女性はその木の下で記念に写真を撮った。

なんとなくこの文章からテンションの低さは伝わるでしょうか。この時、私の旅はすでに終わっていた。

昨晩終わったのだ。

いつもそう。旅の最初は全てが新鮮に見えてワクワクが止まらない。しかし、最終日に近づくにつれて、「旅を通して日常とシンクロさせた考え事」が頭の中をぐるぐると回るのだ。

その瞬間、旅は終わる。

スケールはだいぶ違うが、沢木耕太郎の「深夜特急」もヨーロッパに着いた頃にはすでに旅が終わっていた気がする。


旅が終わるのは決して最終日ではない。


フェリーに乗って石垣島に戻り、
彼女とは分かれた。

波照間島行きが消えた私はとりあえずそのまま小浜島に向かった。

すごくのどかで綺麗な場所。

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小浜島は西表島以上になにもない島だ。原付をレンタルすることでただただ「ざわわ」感を楽しめる小さな島。

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走っているとすぐに海にぶつかる。途中で小道を見つけて原付を降りて登って行くと…

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小浜島を見渡すことができた。

そんな感じで小浜島でざわわ時間を堪能してから、石垣島に戻る。その日は初日に満室だった「美ら宿」に泊まった。2100円だ。

美ら宿は正直楽しめなかった。石垣島でゲストハウスを検索するとおそらく一番最初に出てくるところだと思うが、印象として都会のカプセルホテルのような感じだった。

やっぱり自分は初日に偶然見つけて泊まった家族経営の民宿や竹富島や西表島で見つけた小さな宿でオーナーと楽しく会話したり、一緒に泊まっている人としっぽり軒先で語るような感じが好きです。下の写真のように様々な人と出会えたから。

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でも、誰かにとっての楽しかった場所は誰かにとっての楽しくない場所になり得る為、結局は気の向くまま足の向くまま自分の決めた道を歩くのが一番のような気がします。

夕方になり、最後に夕日を見ようと思ってサザンゲートブリッジという石垣島の夕日スポットへ向かった。すでに数人の観光客がいた。

橋の中央でみんなカメラを構えて夕日を撮影している。

そう、みんな夕日が好きなのだ。
夕日は本当に人を繋ぐ。

その中に1人、麦わら帽子をかぶってカメラも持たず、ただただ夕日を眺めている女性がいた。


そう、西表島の彼女だ!!


肩を叩いて挨拶をすると彼女は切なげな表情をしていた。

彼女もまた旅を終えたのかもしれないと思った。

私は道路と歩道を隔てる手すりに腰掛け、その横で彼女は夕日を眺めた。その時間は2人とも無言であった。

西表島の港では寝転がって天の川を眺めながら音楽を聴いて、宿の軒先では幻の泡盛「泡波」を飲んで笑い合った2人。

……終始無言だった。

夕日が沈み、私は先に帰る旨を彼女に伝え、橋のゆるやかな坂道をくだった。途中まで来ると後ろから自転車の走る音が聞こえてくる。

私の横を風が通り過ぎて行く。

橋を下る私の横を自転車で勢いよく通り過ぎて行ったのは彼女で、こちらを振り返った時、さっきまでの切なげな表情はなかった。

西表島で見た笑顔に戻っていたのだ。そして、彼女はこちらに向かって大声で叫んだ。


**「久々にデートみたいで楽しかったよ!そんじゃ、バイバーイッ!」 **


大きく手を振りながら軽快に橋を下るその後ろ姿はとても爽やかで、見ていて気持ちの良いものだった。

「ありがとーうッ!俺も楽しかった!じゃあねー!」

彼女の後ろ姿は小さくなっていき、次第に見えなくなった。

その日の夜も、石垣島の空には星がなく、何処かで微かに三線の音と、歌声が聞こえているのだった。


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翌日は沖縄本島へ渡り、700円で24時間乗り放題のモノレールに乗って首里城を観光し、ステアリゾートというゲストハウスに1,500円で宿泊した。

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こうして私の旅は本当に終わりを告げた。

今回の旅で印象に残っている音楽は、久石譲の「summer」でも井上陽水の「少年時代」でもなく、西表島の彼女が教えてくれた。toconomaというインストバンドの「seesaw」という曲だった。

ちなみに彼女はその後、西表島で話してくれた彼氏と結婚し、現在では男の子が生まれて幸せな家庭を築いている。




おわり

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