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【若林源三解体新書】#11 ~ペナルティエリアの外からゴールを奪われたあの日~


★一人の男の人生について筋を通したくて市井の民が考察している文章です、色々ご容赦願います★


(漫画のコマがたくさん出てきますが、びっくりしないでください。)

若林くんといえば、「ペナルティリアの外からはゴールを許さない」という伝説を持つ男

この伝説は、彼の代名詞でもあります




このペナルティエリア、以下略してPAといいます。

小学生時代の翼君は、難波FCの巨漢ゴールキーパー中西君からPA外からのシュートを決めることで、若林くんと中西君との違いを見せつけます。↓ ↓ ↓



一方、シュナイダーは若林のPA外からゴールを奪う!というこだわりを常に持っています。
そんなゴールを決めてこそ、若林くんに対する完全勝利なのです。↓ ↓ ↓


世界中のストライカーにとってSGGK若林のPA外からゴールを奪うことは、やんごとなき評価に値し自分の確固たる実力を世界中に見せつけるものとも言えます。


その若林くんですが、今まで原作中でPA外からシュートを許したことが2回ほどあります。
いずれもワールドユース大会での出来事で、一度目はアジア予選の対中国戦、ニ度目は本戦の決勝・対ブラジル戦です。


その昔、実をいうと私はワールドユース編を一読した後、当分の間読めなくなりました。

PA外からのシュートはすべて防ぐ、その代名詞が破壊された時の私のショックったらありませんでした
そして、PA外からゴールを奪われ涙する、そんな彼を見ていられなかったのです。

その後10年近く経ってからようやくまともに見れるようになりましたが、今でも決して嬉しい場面ではありません。


この二つのゴールシーン、よく読むと、いや、何とな~く読んでも、実は違和感がありすぎます。

一度はともかく、二度目の方です。

ナトゥレーザというブラジルの選手のシュートでPA外からゴールを割られる若林くん。
そして、見上さん(若林くんの幼少期の個人コーチ)は、これで源三のSGGK伝説は終わった、と魂を抜かれたようにその様子を見つめています。

…… 始めてこの部分を読んだ時、意味がよくわかりませんでした。
え、伝説が終わったって、既に予選の対中国戦でPA外からゴールされたじゃないの、あれは?……と謎でしかなく、その謎をすっきりと解決してくれる原作の描写には出会っていません。


PAの外からゴールを奪われてしまった若林くんの中で、いったい何が起こっているのでしょうか………??


なお、ワールドユース大会より後のことですが、若林くんはブンデスリーガのハンブルグ・ミュンヘン戦でもシュナイダーにロングボールをゴールへ蹴り込まれています。
PA外といえばそうかもしれませんが、これは若林くんがオーバーラップして相手ゴールに近い所にいる状況でしたので、明らかにノーカウントということでよいでしょう。



☆『 自分 』に負けたゴール

まず、ワールドユース大会予選の対中国戦。

↑ ↑ ↑ サッカーのシュートです。肖俊光しょうしゅんこう反動蹴速迅砲はんどうしゅうそくじんほう



↑ ↑ ↑ 右上の吹き出しのセリフは翼君の言葉です。若林くんがPA外からゴールを奪われるのを初めて見た、と述べているのです。


………自分で並べておいてなんですが、あんまりこういう場面を並べたくないんですけどね……見たくないですね……はぁ……。


肖俊光しょうしゅんこうのシュート・反動蹴速迅砲はんどうしゅうそくじんほうが凄まじいのはわかります。

凄まじいので、手が出なかった。

何が原因であろうが、ゴールはゴールです。PA外から決められてしまったのです。

若林くんの心にはぽっかり穴が空き、翼君もあ然とする。
若林くんのPA外からシュートを決めることは、翼くんですら不可能な所業だったのですから。


しかしながら、この状況をよく見てみることにします。


ボールはどこにゴールインしたでしょうか?正確には、ゴールインしてからボールはネットを突き破ってますので、そのネットの破れた位置はどこでしょうか。

手を伸ばせば届きそうな距離、若林くんのわりとすぐ横をボールは通過してゴールネットを突き破りました。

石崎君なら絶対に顔で止めにいく距離感(吹っ飛ばされて石崎君ごとゴールインだと思いますが)。

本来の若林くんであれば、無反応ということはまずありえない。

目にも止まらぬ高速シュート、だったかもしれませんが、それでもPA外から飛んでくるものをまったく見えないまま、すぐ真横を通過するのを許すでしょうか、SGGKほどの人が。


実は、若林くんはワールドユース大会の予選が始まる前から両腕を怪我していました。
ブンデスリーガで試合・特別参加したドイツユースの試合とで、それぞれの手を負傷するに至ったのです。

なお、15歳でプロの公式戦にデビューした彼、ワールドユース大会が開催された18歳の時点では、ブンデスリーガ1部の所属チームで背番号1を背負う正ゴールキーパーなのです。

ちょっと考えてみていただけないでしょうか?

18歳の日本人の若者が、ドイツの1部リーグで正GKなんですよ?
しかも、日本人なのになぜかドイツ代表のユースチームに参加しているんですよ?なぜというか、何故も何もドイツがナショナル的に若林くんをドイツチームの一員として扱いたかったからです。

実は、そんなものすごい人なのですよ?!
若林くんは!!


……ごめんなさい、話がそれてしまいました。

とにかく完治してない怪我をおして、ワールドユース予選に出場しているのです。

そもそもこんな怪我人を使わないと予選突破できないチーム体制・チーム作りに疑問があります。)


けれど、止められないのは怪我で実力が出せなかったからだ、とそんなつまらないことを言いたいのではありません。

彼自身、小学生の時から怪我を言い訳にしない人ですから。


肖俊光のシュートは、この世のものとは思えない恐怖だったかもしれません。
しかも初見のシュート、初見で高速の龍が来たら不意をつかれてしまうことも否めません。


ただ、ここで、気になるのは肖俊光しょうしゅんこうの台詞です。
ゴールされた若林くんを横目に心の中でこう告げています。↓ ↓ ↓

「 正解だ 若林源三 今のシュートに反応し手でも出そうものなら その手はきっと龍にかみくだかれこなごなにされていたはずだ 」

肖自身が「もしも手を出せば」と言っています

手を出したなら、手を出すならば。
そして、手を出さないことが「正解」である、と。
その言葉尻をとらえれば、それは『 手を出せる余地があった 』ということになるのです。

本当にGKの目にもまったくも捉えられない超高速のシュートだったら、手を出すという想定の言葉など出ないはずです。
「 閃光のごとき龍の軌跡には、さすがの若林も動けまい 」とでも言うことでしょう。

ここで肖俊光しょうしゅんこうが強調したかったのは、シュートの速度よりも破壊力なのです。

だから、シュートが見えなかったというより、見えていたんです、若林くんには

見えているなら、取れるかどうか別ですが反応くらいするはず。
PA内の至近距離で1歩も動けないことはありますが、PA外なら無反応は絶対にないはず
です。

それなのに、動けない。

何故でしょう。

確かに恐ろしかったのでしょう、あのシュート。

怖いのは確かだとして、何が怖かったのか?
飛翔する龍に見えてしまうシュートだからといって、本当の龍だと思って怖がったわけじゃないでしょう。


この、恐怖心。

恐怖を感じる心とは、自分の中にあるものです。

これはきっと、肖俊光しょうしゅんこうの言うとおり、手を出せばシュートの破壊力で大怪我に至る、彼の中でそれを瞬時に察し、それを恐れたことで生まれたのです。

先に述べたとおり、既に手を負傷している。しかも、GK生命が危なかったほどの怪我でした。それをどうにか誤魔化しなら試合に出続けていたのです。

その手を、間違いなく再び酷く痛めつけられてしまう。選手生命を再び脅かされる。

だから、怪我している手を無意識にかばった、あるいは大怪我への無意識の恐怖で、まったく手を出せなかった

彼は自分の負傷への恐怖心で取れなかった、自分の心に負けたのです。


その証拠に、次の反動蹴速迅砲はんどうしゅうそくじんほうは止めます。



↑ ↑ ↑ フィールダーが一人ずつ何を言っているかこの画面上は読めないかもしれませんが、とにかくみんなが翼君の援護に心を合わせ、それを背負った翼君が肖俊光しょうしゅんこうに立ち向かう。しかし、翼君はあえなく吹っ飛ばされてフィールダーもまったく手出しできず


↑ ↑ ↑ ………そのとんでもないシュートを、若林くんは一人で止めるんです……!一人で、ひとりで、たった一人の力で!!

(止める直接の場面は、痛々しいので控えさせていただきます。)


このとおり、若林くんが本気を出せば反動蹴速迅砲はんどうしゅうそくじんほうを止めることが可能なのです。

しかも、一発目よりものすごいやつが飛んできたのを、横っ飛びで防ぐのです。

その後、彼はこう言います。



チームメイトに気迫を知らしめたという面もあるでしょうけれど、自分自身に言い聞かせるように、二度と弱気な心でゴールを許さぬよう何があってもゴールを守るのだと自分を戒めるような魂の叫びにしか私には聞こえないのです。


もともと若林くんは、小学生時代ですらガチで気合が入れば「 このシュート 足が折れてもとる!! 」と日向君に言い張り(この時は左足を負傷していたので「足が折れても」なのです。)、ジュニアユース編では対戦相手のシュナイダーに対して「 おまえにだけは死んでもゴールをやらん 」とまで誓ったりしています。


本来は足が折れても、とか死んでも、とか思っているような凄まじい負けん気の彼に対し、怪我への恐怖心を煽ったほどの稀有なシュート、それが反動蹴速迅砲はんどうしゅうそくじんほう

もともとの負傷と凄まじい威力のシュートに、怪我への恐怖心という若林くんの人間らしい感情が露呈した僅かな瞬間とも言えるゴールなのです。



☆『 自然 』現象に負けたゴール

その後、大会本戦でPA外からどんなシュートでもゴールを許さない、と自身を鼓舞する若林くん。


一度PA外からゴールを割られているのに、なおもそう思える頑健なメンタル

しかし、一度破られたら何もかもおしまいというものではありません。
引き続き、PA外からシュートを許さない矜持は抱き続けてよいもの。


しかし、非常に大変に悲しいくらい残念ながら、ワールドユース大会決勝の対ブラジル戦で再びPA外からゴールを割られる場面がやってきてしまいます。

同じシリーズで何故二度もこんな屈辱的場面が描かれるのでしょうか、と言いたくなりますが、っていうか言っちゃってますが、とにかく2本目のPA外からのゴールはこれです。↓ ↓ ↓





ナトゥレーザのシュートに回転がついていたことが逆光で見抜けず、反応したボールが目の前でバウンドして方向を変えます。

なお、ボールに回転をつけることは自体は本来若林くんは見抜けます。
ジュニアユース編で早田君のカミソリシュート(激しい横回転で激しくカーブするシュート)の回転を初見で一発で見抜いてますから。

逆光をわざわざ描写することで、回転を見抜く可能性を完全にシャットダウンしているのです。


このゴールは、逆光まで計算したナトゥレーザの勝ちと言わざる得ない。

この腕が砕けても止める!と構えていたのに「 俺のS・G・G・K伝説を打ち破るペナルティエリアの外から 」ゴールを奪われてしまったと完敗を認め涙しています。

本来の彼らしく身体を犠牲にしても絶対に止めるつもりでいたのに、決められてしまったゴールなのです。


↑ ↑ ↑ 対中国戦の時は、伝説はまだ終わってなかったんですか?見上さん……



ところで、ナトゥレーザというのはポルトガル語で『 自然 』という意味だそうです。


翼君がボールと友達なら、ナトゥレーザは自然と友達、すべての自然を味方につける男です。

つまり、若林くんの二度目のPA外ゴールは『 自然 』という抗えない摂理に負けたものといえます。

誰だって自然現象には勝てません。
どんなに手足を折ろうが命をかけようが、自然の前ではちっぽけな人間の足掻きでしかない。
それが『 自然 』というものなのです



しかし、このナトゥレーザに対しても、やられたままで終わる若林くんではありません。


ナトゥレーザは、アマゾンの奥地の村でのびのびと過ごす少年でした。
そして、表舞台にはまったく出ることはなくても、神業を使うサッカー少年として噂になるほど。


日本ワールドユースチームのデータ収集分析を担当している井出保いでたもつが、謎のビデオに微かに残っているナトゥレーザ(この時はまだ正体不明)のプレイの姿を見て「 サッカーの王様が映っています 」と畏れでボロボロと涙を溢して泣くほどです。


翼君の師匠、ロベルト本郷はナトゥレーザを一目見て翼君と同じくらいの感覚を抱いてほれ込み、ブラジルユース代表へ勧誘します。しかし、ナトゥレーザ自身は自分が勝つとわかっている勝負に当初は興味を示しませんでした。

そんなナトゥレーザ、この試合で確立するはずだった『 神話 』があります。

彼はブラジルが1点ビハインドの場面から試合に登場しました。
1分で1本シュートを決め、120秒で逆転しブラジルを勝利に導くという奇跡・120秒の神話を残すつもりだったのです。↓ ↓ ↓




この神話を阻止するのが、若林くんです。

PA外からのシュートを防ぐ伝説を破られたから、逆にナトゥレーザの120秒の神話を身体をはって阻止することでやり返すのです。





シュートを決められたら次は必ず止める、やられたらやり返す、借りを作ったら必ず返す、そして、それを実行するのが若林源三という男なのです。



彼の弁護でまたも本題から若干外れましたが、こうして、一度目は『 自分 』に負け、二度目は『 自然 』現象に負けて、それぞれPA外からゴールを許してしまった
実はそんな過去がある若林くん。

負けた理由が違うのであれば、同じシリーズ中で二度というのもやむを得ないのでしょう。


なお、このワールドユース大会後、このシューター二人が『 あの若林のPA外からシュートを決めた男 』として大っぴらに称賛されることは今のところありません。
この二人は栄光をやたらとひけらかすことをしない極めて紳士的な選手であり、また作者の高橋先生の若林くんへの優しさでもあります。


肖俊光に至っては、この後直接ブンデスリーガで若林くんと対戦しても、一度破ったことのあるゴールの件を口にすることはありませんでした。
一度決めたことがあるから、次も、という意識がはたらいても良さそうなものですが。
過去を忘れて毎回毎回新たな勝負を挑む、肖はそんな男であるとも言えるでしょう。



☆Z=S・G・G・Kが真のSGGK

ワールドユース大会の翌年のシーズンのブンデスリーガ、ハンブルグ・ミュンヘン戦。

この大一番にかけている若林くんの絶好調パフォーマンスが描かれています。

スター選手揃いの王者B・ミュンヘンの嵐のようなシュートを防ぎまくり、チームメイトからもさらなる強い信頼を得ます。




あまりこのワードが流行っている様子はないのですが、絶好調だと『 Z=S・G・G・K 』という進化形になるのです。

『 ZEKKOUTYOU 』(絶好調)、のZというより『 ZEUS 』(ゼウス)のZだとあえて思いたい。


そして、この試合において、絶好調だと「 ペナルティエリア外からのシュートは何人なんぴとたりともゴールを許さない 」のがS・G・G・K若林源三なのだとあらためて謳われています

自然現象など利用せず真っ向から挑んだ場合、若林くんが絶好調であれば彼のPA外からゴールを決めるのは不可能ということなのです。



↑ ↑ ↑ 直近の試合 マドリッド五輪準々決勝・対ドイツ戦(まだ無傷の時


なお、本当の怪我がなく、きちんとトレーニングを重ね周囲との連携もしっかり築いたうえでの万全の大舞台・大一番は、小学5年時の第5回全国少年サッカー大会の優勝時(まともに描かれていませんが大怪我もなかったことでしょう。)、ブンデスリーガでのこの試合、そして現在『キャプテン翼マガジン』で連載中のマドリッド五輪における対ドイツ戦の途中まで。
この三つくらいじゃないでしょうか。



現在、準決勝の対スペイン戦が始まった……のでしょうか、『キャプテン翼マガジン』vol.10(2021年12月2日発売号)をまだ見ていない状態で書いているので始まったのかわかりませんが、このスペインを制すると次は決勝でブラジルと再び対決することになります。

若林くんは今後、対ドイツ戦で負った背中の裂傷を抱えて決勝に出ます。
出るに決まってます、出なかったら驚きしかありません。

オリンピック予選時に『 ゴールポストに顔をぶつけた影響で物がだぶって見える 』という怪しい症状も抱えていた時期がありました。
この症状をブラジル戦でぶり返されたりしないものかと心配です。


また怪我怪我怪我なんだろうなあ~………でも、PA外から誰か決めるのは三度目の正直(?)でマジやめてください、よろしくお願いします!



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最後までお付き合いくださり、
本当にありがとうございました。

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