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北里大学獣医学部 犬部!

以前から気になり、観に行かなきゃ!と思っていた映画「犬部」。


十和田キャンパスの、北里大学獣医学部の学生が創設したサークル「犬部」(現在は「北里しっぽの会」と名称を変更しています)の実話にもとづいた映画です。

動物たちの「いのち」の利用をテーマに、それぞれの方法で「いのち」に向き合う若き獣医師たちの物語。



動物の映画だという先入観から、いくら実話がもとになっていると言っても、きっと、キレイな青春感動ものの映画に脚色されているに違いない、
鑑賞前はそう思っていました。

ところが、そんな想像は見事に打ち砕かれたのです。

この映画は、人の都合で使い捨てにされる動物たちの「いのち」に関する社会課題を、真摯に描いたものでした。
そして、学生たちの動物を想う気持ちが真っ直ぐに行動につながる純粋さや無鉄砲さ、献身に、とても心を打たれるものでした。



映画「犬部」のもとになった実話は、書籍「北里大学獣医学部 犬部!」に、ライターの片野ゆかさんによって取材された3年間、そしてその後にも触れて記されています。

書籍には、「犬部」のサークル創設から休部を経て「北里しっぽの会」と名称変更して再活動に至る経緯や、
保護した犬や猫、社会との関わり、人手と資金不足の厳しさなど、
映画では描ききれない内容が綴られています。


彼らの足元にも及びませんが、私も目指すところは同じなんだと再確認して、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思い、記事に残すことにしました。

数年に渡り取材を重ねて伝えてくださった 片野ゆかさんに感謝します。



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主人公である犬部 創設者の 現・太田快作 獣医師(映画では林遣都さん演じる 花井颯太 役)が動物の命と向き合い続けるきっかけとなった
「愛犬・花子」と「実験犬・ルンルン(映画ではニコ)」について、そのエピソードを紹介させていただきます。


ネタバレを含みますが、内容はほんの一部です。
「犬部」に興味を持っていただく機会になればと思っています。


🐕 愛犬・花子(映画でも花子)

「花子」は、太田さんが2年生で十和田キャンパスに来て間もなく、保健所から生後2ヶ月で引き取った犬です。
犬部 唯一の犬部員として、正式にメンバー登録もされていました。
花子は母性豊かで、実際に犬部の深刻な人手不足や資金不足を救う働きをしていました。
保護されたばかりの犬猫の新入生には教育をし、
何よりも驚きのエピソードは、母犬の経験がないのに、母乳まで出して他犬の子犬を育ててしまったことでしょう。


ある日、保護した雌犬が妊娠していて、超難産のため帝王切開出産になったそうです。
母子ともに健康だったそうですが、母犬が子犬に全く興味を示さない。
(帝王切開だと出産した実感が持てず、育児放棄する犬が珍しくないそうです。)
そこで、「どうかよろしくお願いします」と花子に子犬を託してみると、子犬をペロペロと舐めて当たり前のように自分のそばに引き寄せ、なんと数日後には母乳まで出したのです。

「出産のショックなどで母犬が死んでしまうと、子犬たちの世話を姉妹犬が引き継ぐことがある」
と本では読んだことがあった獣医学部の学生たちも、生命の神秘を目にして驚いたそうです。

動物の持つ生命力と逞しさを尊ばずにはいれません。


太田さんと苦楽を共にした花子は、2年ほど前の2019年に、虹のたもとへと旅立ったそうです。

太田さんが現在院長をされている「ハナ動物病院」も、もちろん愛犬 花子の名前を冠したものです。



🐕実験犬・ルンルン(映画ではニコ)

「ルンルン」は、まだ犬部設立前のこと、太田さんが市街地に向かって自転車のペダルを漕いでいるときに出会った、トボトボと歩いていた首輪もついていない犬です。

アパートに保護した後に、友人から「その犬は、大学の犬らしいよ」と聞いて、太田さんは「最悪だ」と思った。
現在では廃止されていますが、保健所で処分される犬の一部が研究機関に払い下げされ、研究実習用に飼われていたそうです。
当時は、規定があるので、大学に戻さない訳にはいきません。

映画では、ルンルンが迎えの車に乗せられる場面がマイルドに描写されていますが、書籍には「キャイーン、キャイーン!と鋭い悲鳴が響き渡った」とあります。

太田さんは、何もできないことに涙を流し放心状態になってしまいますが、
なんとルンルンが再び脱走して、太田さんのアパートの前に座っていたのです!

車で追ってきた教授も、その姿を見て、もはや大学に連れ戻すことはできなかった。

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太田さんは犬部の設立以前から、「ただ目の前の動物のいのちを救いたい」という動機で、救いが必要な動物を保護していました。動物愛護をしているという意識もありませんでした。

また、動物を救うために勉強がしたくて入学した獣医学部では、勉強のために動物を殺さなくてはならないことを知り、強いショックを受けます。
そこで、動物の命を奪わずに獣医学について学ぶ方法(動物実験代替法)の調査や勉強会、シンポジウムの企画をする「獣医のたまごクラブ」というサークルの代表もされていました。


書籍では「犬好き」と「犬バカ」という言葉が定義されています。

「犬好き」・・・犬と一緒に生きる人
「犬バカ」・・・犬のために生きる人


太田さんは正真正銘の「犬バカ」です。

「バカが世界を変える」と聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。

”実家からの仕送りは、アパートに保護した動物のフードや医療費に消えて、公共料金が支払えずに真冬にガスを止められ、大学の体育館のシャワーを借りてアパートに帰るまでに濡れた髪がカチカチに凍った”

こんな姿に周囲が胸を打たれ、次第に協力してくれる人が増えていきます。


でも、世の中はそう単純じゃない。

太田さんの保護活動が知られるにつれて、捨て犬猫が持ち込まれるようになり、いつまで経っても新しい飼い主探しは終わらない。

そんな厳しい現実があります。


動物のいのちを奪いながら生きている、人間の存在に矛盾を感じながら、

それでも、

”犬バカにはなれなくても、自分にできることはある”
”微力でも無力じゃないから”

「犬部」は、私にそう強く思わせてくれた作品です。

ぜひ多くの方が手に取って まずは知って欲しい、そんな気持ちでいっぱいです。

ぜひ、観て!読んでほしい!! 

(※とはいえ、この時期に「犬部」を上映している映画館は少なくなり、緊急事態宣言も出されているので、観るのはビデオが出てからでもいいかもしれません。)


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