③母を思い出す【闘病生活】

 母の闘病生活が始まった。
がん告知されてから母は前向きになった気がした。
何か吹っ切れたような、とてつもない生きたいという生命力が感じられた。
 まずは乳癌の核となる左胸を全摘出した。
手術の予定はすぐ決まり、あっという間に手術の日程は終わった。
自分の母のおっぱいの事を言うのは気が引けるが、母は平均よりも胸が大きかった。しかし入院を終えた母の胸は片方だけぺったんこであった。当たり前の結果ではあるのだが息子の僕としてはかなりのショックだった。しかし、母は笑顔で「あー、軽くなった。」なんておどけていた。
 次に抗がん剤治療が始まった。副作用で頭髪は抜け落ちてしまった。しかし、またしても母は「なんか頭の毛がないと寒いね。」なんてふざけていた。体調を崩したり、嘔吐する方もいるというが母は全くそんな気配はなかった。と思っていたのは、僕と父に心配させたくなかっただけかもしれない。
 ある日入院生活をしていた母に着替えを届けようと思い病室に寄った時、母は泣いていた。

続く

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