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彼の新曲はもう聴けない。不可思議/wonderboy

僕は音楽が好きだ。

一人暮らししている時に掃除しながら歌い出して、気づけば掃除そっちのけで熱唱してヘドバン始めるくらいの人間だ。

そしてメロディと歌詞のどちらに重きを置くかといえば、断然歌詞派の人間である。

この歌のこういう言い回しが好き、とか熱い想いに心揺さぶられる、というのが結構ある。

そんな僕が今回語らせて欲しいのが、不可思議/wonderboyというアーティストだ。

彼のジャンルはポエトリーリーディング。
詩を音楽に乗せて朗読するのだが、ラップほど音楽との同調を重視しないスタイル。

つまり僕の重視する歌詞が全面に押し出されるスタイルだ。

ここでいかに彼が素晴らしいかを語ることもできるのだが、百聞は一見にしかず。
まずは最も有名な『Pellicule』を聴いてほしい。


この曲で僕の好きな歌詞は

“あの頃って何にでもなれるような気がしてたよなぁ
いや実際頑張ればなんにでもなれたか
でもこうやっていろんなことが終わっていくんだもんなって
いや、始まってすらいないか”

不可思議/wonderboy Pelicule

思い描いていた将来とかけ離れた現実、1人また1人と離れていって自分だけ取り残されるような感覚。
なんとも言えない寂しさが残る。


次いで僕の1番好きな歌『生きる』。
この曲は谷川俊太郎さんの同名の詩を多少手を加えラップ調にしたものだ。谷川俊太郎さん本人も公認である。


鮮やかで清冽な言葉が突き刺さる。
中でも僕が好きな歌詞は

“経度から経度へ 朝をリレーしていく
知らぬ国の誰かが 受け取ったバトンを
しっかりと受け取り また知らぬ国の誰かへ
毎日朝が来るという ありふれた奇跡”

不可思議/wonderboy 生きる

こんな歌詞思いつくだろうか?ちなみにこの部分は原作の詩にはない。

これらの曲以外にも、
遠距離恋愛を歌った『銀河鉄道の夜』、
不可思議な世界を歌った『偽物の町』『タマトギ』、
現実社会でもがきながら生きる『風よ吹け』『世界征服やめた』
などオススメしたい曲はたくさんある。


だが、彼の新曲を聴くことはできない。
なぜなら彼は不慮の事故により亡くなっているからだ。享年23歳。

彼の死後、多くの人が感銘を受けてじわじわと人気が出てきているようだ。どうやら映画化もされているらしい。

死後の名誉や人気を彼が喜んでいるのか、冷ややかな目で見ているのか。それを知る術はもうないが、1つだけ言えることがある。


『ポエトリーリーディングは鳴り止まないっ』


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