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第4回 ローン契約総論



1 はじめに


今回以降、ローン契約の解説に入ります。ローン契約とは、一般的に金銭消費貸借に関する契約のことを意味しますが、ひとくちに金銭消費貸借といっても、その内容は多岐にわたります。LBOローンの特徴を理解するためにも、まずはローン契約の基礎知識をご紹介いたします。

2 ローンの種類


金銭の貸し借りについても複数の取引形態があります。この取引の種類(ローンの種類)のことを意味してファシリティとよばれることもあります。
以下、ファシリティの内容をいくつかみてみましょう。

(1)タームローン


タームローンは代表的な取引形態のローンです。
ローン契約で定められた融資の実行日において、融資金額全額の貸付が実行されます。貸付実行後、借入人は定められたスケジュールに従い、元本弁済を行います。
物の購入資金目的や設備投資資金目的等で利用されることが典型的ですが、コーポレートローンにおいて運転資金として貸し出されることも広く行われています。

(2)コミットメントライン


コミットメントラインは、一定期間における融資取引枠を設定し、借入人において資金需要が生じたタイミングで当該枠内において借入を行うことができる形態のローンです。リボルビングラインとよばれることもあります。日本語では極度貸付契約とされます。
コミットメントラインは、運転資金目的で引かれることが一般的です。
なお、融資取引枠を設定するローンに当座貸越がありますが、コミットラインが貸付を”コミット”している(貸付義務を負担している)のに対して、当座貸越の場合は銀行側に貸出義務が課されていない点が異なります。

(3)その他


タームローン、コミットメントラインの他に限度貸付、コミ付タームローンといったバリエーションもありますが、オーソドックスなLBOにおいては使用されるファシリティではないため、本稿ではご紹介だけにとどめたいと思います。

3 リコースローン・ノンリコース(リミテッドリコース)ローン


ローンをリコース(遡及)の有無に着目し、リコースローンとノンリコースローンと分類する場合があります。責任財産(弁済の引き当てとなる借入人の財産)の範囲が異なり、リコース型の場合は借入人が保有する財産すべてを責任財産とするのに対し、ノンリコースローンの場合は責任財産の範囲が限定されます。ノンリコースローンは、資産の収益力に着目した不動産流動化等のアセットファイナンスで使用されることが多く、LBOローンも一般的にはノンリコースローンとして分類されます。

4 コーポレートローン


コーポレートローンは、借入人となる企業全体の信用力を与信して貸し出されるローンです。企業が行う銀行借入の多くはコーポレートローンに分類され、リコース型のローンです。買収ファイナンスにおいても、事業会社が他社を買収するにあたってデットによる資金調達をするようなケースであれば、コーポレートローンによることが考えられます。
コーポレートローンは、ベーシックなローンであることから比較的シンプルな約定のもと貸し出されるローンであり、A4用紙1枚程度の金銭消費貸借証書と銀行取引約定書による融資や、JSLA(日本ローン債権市場協会)が公開しているシンジケートローン契約の雛型に定められる基本的な表明保証・確約条項付のコベナンツ融資です。

5 シンジケートローン


複数の金融機関による協調融資の一種であり、同一条件のもとで各貸付人金融機関が自己に割り当てられた貸付金額を貸し出す形態のローンをシンジケートローンとよびます。アレンジャーとなる金融機関がローンの組成を取りまとめ、ローン実行後はエージェントである金融機関が案件管理や事務処理を行います。多くの案件で、メイン行がアレンジャーとなり、ローンの組成後にはエージェントに就任します。
ローンの組成時点で複数の金融機関が参加する場合のほか、組成時点では単独の金融機関が融資を実行し、事後的に一部のローンを他の金融機関にパートアウトすることによってシンジケーションを行うこともあります。
LBOローンにおいてもシンジケートローンが活用されます。借入人としては新規の金融機関との取引機会を得られるメリットもあります。

6 おわりに


本稿においては、LBOローンの特徴を理解するために有用と思われる、ローンの基本的な知識をご紹介しました。
LBOローンは、資金の受け皿として設立され、買収対象会社の株式を保有することを唯一の事業目的とするSPCが借入人となり、ノンリコースローンとして貸し出されることや、構造から生じる事象を理由として種々の条項が設けられることが一般的です。今回ご紹介した知識を活かし、次回以降ご説明するLBOローン理解を深めていきましょう。

【次回予告】第5回 レンダー選定

連載一覧

第1回 ”LBO”・”LBOローン”とは
第2回 LBOストラクチャー(総論)
第3回 LBOストラクチャー(SPC)

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